ドレスを着た男子 (世界傑作童話シリーズ)

  • 福音館書店
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834026825

作品紹介・あらすじ

学校で一番サッカーの上手なデニスは、『ヴォーグ』のなかに、家を出ていった母さんの着ていたワンピースとよく似たドレスを発見し、きらびやかな服の世界に夢中になる。そんな折、ファッション通のリサと仲よくなり、彼女のすすめでドレスを着てみることに……! 親友ダルヴィッシュとの友情、親子の絆、ほのかな恋、そして〝いつもの自分〟を着がえることを軽やかに描く、英児童文学界の新星(実はコメディアン)のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 原著は “The Boy in the Dress” 主人公はサッカーチームのエース。でも実はドレスに夢中。こっそり買った『VOGUE』は、そんな彼のナルニア国。なりたい自分になれる!元気を貰った

  • タイトルから異性装を扱った物語と期待して読んだが、異性装に対する作者の立場がいまひとつ理解できず、もやもやとした嫌悪感を感じた。物語前半の主人公デニスと同じように、悩める少年少女にとってはこの物語は救いにはならないのではないだろうか。

    表面的には、女性のドレスを着る男の子がいたっていい、多様性を認めようというメッセージなのだが、むしろその逆ともいえる描写も目立つ。例えば、四十代後半の女性教師に対しわざわざ「結婚指輪をしていないし、子供もいないようだ。」と形容したり、作者が「読者のみなさん、ハイヒールは、慣れるのに少し時間がかかるんだ。おっと、わたしの経験ではないよ。人づてに聞いたんだ。」(p.109)と語りかけたり。これでは結局、女装は恥ずべき行為で私が女装していると思われては困ると言っているようなものだ。
    また、敵役である校長先生のある秘密が最後に明らかになるのだが、それに対するデニスの態度はまったくいただけない。作者はデニスにあんな態度を取らせるべきではないと思う。

    クライマックスともいえる、ドレスでサッカーをする場面も、単にその画が滑稽に見えるということで提示しているようにしか感じられなかった。ドレスを着ることもサッカーをすることもデニスにとっては大切なことなのにドレスを着てサッカーをしてそれで逆転勝利までできてしまうというのは、どちらをも冒涜する描き方ではないだろうか。

    デニスの女装は、母への思慕がきっかけとして描かれており、恋愛対象は女性であることも明示している。あえてセクシュアリティの部分は持ち込まなかったのだろうが、そのあからさまな排除の仕方も好きになれなかった。異性装の中にある多様性ももう少しグレーなかたちで描きこんでほしいと思うのは欲張りすぎだろうか。

    ドレスを着た理由を問われ「ごっこ遊び」とデニスに答えさせるところにももやもやしてしまった。作者としては、異性装を重く捉えるのではなくもっと軽やかに楽しめばよいと言いたいのだろうけれど。

    デニスが初めてドレスを着る場面のキラキラわくわくした感じはとてもよかった。

    • kskoさん
      う~ん、この本は、セクシュアリティについて正面から書いたものではないのだから(校長の描写には、多少複雑なセクシュアリティの問題がほのめかされ...
      う~ん、この本は、セクシュアリティについて正面から書いたものではないのだから(校長の描写には、多少複雑なセクシュアリティの問題がほのめかされていますが)、ご自分が期待されていたそれが描かれていないからといって、作品自体が不十分だという批判は当たらないのでは?

      四十代後半の女性教師を、「結婚指輪をしていないし、子供もいないようだ。」と書いているのは、ありのままを描写しただけでしょうし、そういうシングル生活をしている女教師が、物語のなかで、主人公のよき理解者になっている点に、作者の多様な生き方を認めようとする意志を感じます。

      作者が、「おっと、わたしの経験ではないよ。人づてに聞いたんだ。」と言っているのは、自分が女装していると思われては困るからでは断じてなく、イギリスのテレビでは女装することで有名な作者が、あえて作中話者として自分をごまかしているだけでしょう。でも、イギリスの子どもたちは、ここを読んで、「デヴィッド・ウォリアムズだから、女装しなれてるし、ハイヒールの感覚はわかるんだよな~」と腑に落ちるという寸法になっているのだと考えられます。ここは、ギャグとして読むべきところなのでは?
      それに、ここがたとえば「おっと、わたしがエッチな雑誌を見たのではないよ。人づてに聞いたんだ。」という叙述であったとしても、それがエッチな雑誌をみることを恥ずべき行為と見なしていることにはならないと思います。人には、自分だけで抱えている秘密の世界があるべきで(とくにセクシュアリティの領域については)、それを大っぴらにするのがすべて正しいわけではないように思われます。

      主人公が、校長先生に対してある取引をするのは、校長自身が、自分を追放した、まったく同じ理由で、原状回復をしただけじゃないのかなあ。復讐にすら、なっていません。

      また、ドレス姿でサッカーをしたのは、チームメイトが主人公を助けるためにしたパフォーマンス(一人に対してなら横暴をふるえた校長も、チーム全員には、勝手な判断はできない)の流れによるものでしょう。

      ことセクシュアリティとなると、個々人にとっての切実な感情や思考がまつわるものでしょうが、その思い入れを、そのまま、そのためではない本にぶつけてしまうと、ないものねだりになってしまうように思います。
      たしかに、その点で、誤解をまねきやすい本ではあるかもしれませんね!

      この本は、「自分が自分らしくあることを貫き通す」ということがテーマをなんだろうと、私は思いました。
      主人公も、その親友も、女教師も、校長ですら、その点では、自分らしくいようと思っているのではないでしょうか。
      2012/07/25
  • さすがダール好き。
    怒涛の展開、クェンティン・ブレイクの挿絵の力もあって、現代版ダールみたい。
    ジェンダーレス。

  • タイトルからするとトランスジェンダーものだと思ったんだけれど、そうではなかった。ちょっとご都合主義かなぁとも思ったり。

  • 二年前に家を出た母親恋しさもあって、母親のワンピースに似た服が表紙を飾っていたファション誌を衝動買いした男の子が、服飾にハマり、学校へドレスを着て行って……という話。
    アイディアは面白いんだけど、リンが何を考えてるか今ひとつわからないのと、最後の展開があまりにも都合良すぎ、かな。じゃあ何の取り柄もない子だったらあのまま泣き寝入りで家族にも見放されたままだったの?とふと思ったり。

  • LGBTがテーマの話かと思っていたら、そういうわけでもないようだった。

  • ジェンダーなのかよく分からないけど主人公はヴォーグを見たりするのが好きで、リサの力を借りて完璧な女装で学校に行ったらバレて退学になる。しかし、サッカーの試合で全員がドレスを着てでたら復学した。
    挿絵がロアルドダールの人で良かった。

  • ドレスを男子が着たっていいじゃない!
    他人と違うことを恐れないで!
    そういったメッセージを受け取りました。

    デニスのような家庭は多いのではないか?
    母親がいなくて、父親が元気なくて……。
    お話はすべてめでたしめでたしで終わってよかった。

  • あまり深刻な部分のない、愉快な話だった。
    お父さんが息子たちへの愛情を示すところには、ほろりときた。

  • 母さんがいない、父さんが変わってしまった、そして、僕はドレスを着る。普通って何?

    ダルヴィッシュとそのママがなかなかいい味を出している。リサは美人で人気かもしれないけど、なんでそんなむちゃくちゃな計画を思いついたのか、というところ。
    成長したのはデニスだけでなく、父さんやジョン兄さんも。しかし、オチがそれでいいのか。

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著者プロフィール

イギリスのコメディアン・俳優・作家。ブリストル大学で演劇を専攻。卒業後、BBCのコメディ番組「リトル・ブリテン」で人気者になる。2008年から児童文学を執筆しはじめ、発表する作品がつぎつぎにベストセラー入りしている。ほかの作品に『ドレスを着た男子』(福音館書店)、『おばあちゃんは大どろぼう?!』(小学館)がある。

「2015年 『大好き!クサイさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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