子育てをうたう (福音館の単行本)

著者 :
制作 : 井上 文香 
  • 福音館書店
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本棚登録 : 22
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834081152

作品紹介・あらすじ

短歌を通して子どもと出会う。

感想・レビュー・書評

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  • こそだてにまつわる和歌を選び、読み解くエッセイ。
    著者も子どもの誕生を機に歌を詠み始めたという。
    こどものともの付録に連載していたものをまとめた。

  • 子は抱かれみな子は抱かれ子は抱かれ人の子は抱かれて生くるもの
     河野愛子

     子どもの顔写真のみの年賀状は好ましくない、という声もあるが、子育て経験のない私は、毎年目を細めながら眺めている。子どもの成長の速さ、ベストショットを撮ろうと張り切る親心も伝わってきて、ついつい見入ってしまうのだ。

     松村由利子のエッセー集「子育てをうたう」は、育児に関する短歌アンソロジーでもある。生命の宿りから、見守り、家族との関わり、そして死までも視野に収めた内容で、平易な文章ながら奥が深い。

     たとえば掲出歌。「抱かれ」がくり返されるほど、逆に、温かく抱かれずに育児放棄された乳幼児のニュースが想起されてしまう。

     母親だけではなく、父親のまなざしも興味深い。

     子を乗せて木馬しづかに沈むときこの子さへ死ぬのかと思ひき
     大辻隆弘

     おそらく、遊園地のメリーゴーラウンドの「木馬」。浮き沈みを子どもが楽しんでいるさなかに、人間は誰しもが「死ぬ」という事実を思い起こしてしまうとは。

     そんな認識を揺さぶる歌のほか、働く女性の子育ての現状も歌われている。

     子をあずけ職にもどる日風を切る翼のように木蓮ひらく
     広坂早苗

     育児休暇からの復職だろうか。春の花であるモクレンの花言葉は、「自然への愛」や「持続性」。職も子育ても、愛をもって継続を、という声援を「木蓮」が発しているようで、若い世代に伝えたい一首である。

    (2015年1月25日掲載)

  • 98%まで「そうだよねえ」「うんうん」と思って読んだけれど、
    「似るな似るなといひて育ててきた息子冷蔵庫にてあたまを冷やす  米川千嘉子」
    という歌が問題でした。著者は、作者が自分に似ず面白いことをする息子を微笑ましく見ているという解釈をしていました。
    でも私は違う。「こんなくだらない癖までだんなに似ちゃって。あ~あ」という歌だと思います。

    直前に
    「押入にひそむこの子よ父われのわるきところのみ伝はりけらし  斎藤茂吉」
    の歌があり、作者本人に似て困ってる人と、配偶者の困ったところに似ていてがっかりしている人と対比してるのかと思いましたが、違ったのね。

    茂吉に詠われた「この子」が斎藤宗吉、のちの北杜夫であることには触れられていませんでした。悪いところばかり似るなんてことはないと証明しちゃったらこの歌の面白さが減ずるからかなと思います。

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著者プロフィール

1960年福岡県生まれ。朝日新聞、毎日新聞で記者として20年余働いた後、2006年からフリーランスに。著書に『31文字のなかの科学』(NTT出版、科学ジャーナリスト賞)、『与謝野晶子』(中央公論新社、平塚らいてう賞)、『少年少女のための文学全集があったころ』(人文書院)など。歌集に『大女伝説』(短歌研究社、葛原妙子賞)、『耳ふたひら』(書肆侃侃房)など。

「2016年 『短歌を詠む科学者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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