太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)

  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834081626

作品紹介・あらすじ

16世紀スペイン。キリスト教徒の伯爵令嬢マリアと、伯爵家に長年仕え友情を育んできたイスラム教徒の家に生まれた少年エルナンド。ふたりの間には恋が芽生えるが、やがて両家の人々は異なる宗教・民族間の対立に巻き込まれていく。悲惨な戦争の果てに、エルナンドは故郷を追われていく……。宗教や民族の違いによって引き裂かれ、運命に翻弄される人々を描いた歴史小説。

感想・レビュー・書評

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  • 16世紀前半。キリスト教徒が支配するスペインのグラナダでは、同教に改宗し、洗礼・改名を強いられたイスラム教徒はモスリコと呼ばれながらも、自らの言語や習慣は守って生活してきた。肥沃な土地に娘夫婦と二人の孫息子と暮らすモスリコのディエゴ・ディアスは、先の領主ドン・ゴンサロと親友であり、今も家同士の友好関係は続いていた。ある日、ディエゴの長孫ミゲルが、モスリコの娘を助けるためにキリスト教徒の若者を殺してしまい、逃亡、山賊に加わってしまう。一方、ゴンサロの孫娘マリアとディアゴの末孫のエルナンドはお互いに惹かれあっていく。そして、1567年にモーロ(イスラム教)の習慣を禁じる勅令が出された。両宗教間の対立が深まり、モスリコの中には武器を手にした蜂起を呼びかけるものも現れた。

    お互いの宗教や習慣に無理解なために苦しみ傷つけあう人々の姿を、実話をもとに昔話風に描く。銅版画の挿絵も、昔話感を盛り上げている。



    訳者のあとがきには「エルナンドとマリアの悲恋の物語」とありましたが、私には宗教対立の悲劇を描いた話に思えました。
    世界史の授業でここまで細かいことを学んでこなかったので、この時代にもキリスト教徒イスラム教の対立があったことに驚いています。

    そういう事実と争いの不毛さを学ぶにはよいのですが、物語としては、展開が早すぎるのと、不必要に登場人物が多すぎるのとで、楽しみにくいです。
    特に、(仕方がないのですが)同じような長い名前がたーっくさん出てくると、それが物語の本筋に影響ない部分であれば、もう少し簡略化して欲しかったと思ってしまいます。

    また、せっかく実話をもとにしているので、昔話風ではなく、ノンフィクション風に読みたかったなと感じています。

  • 15世紀のスペインではイスラム教を排斥する運動が始まっていた。グラナダを舞台とするイスラムの一族とキリスト教の一族は宗教こそ違え、仲睦まじく暮らしていた。登場人物は元イスラム教でキリスト教に改修したモリスコと呼ばれるディアス一族とキリスト教のペドロ一族の物語。キリスト教徒の暴行をディアスの若者が咎め、そのことで街をおわれ山賊になる。今度は山賊につかまったディアス一族の若者を山賊の一味となっていた若者が助けと、二つの家族が反目する状況下で密かに助け合う。
     しかし、時代は明らかに反対イスラム、惹かれ合う、キリスト教の娘とモリスコの若者との恋は成就しないのであった。
     時代はトルコでスレイマン皇帝がいたころの時代。スペインは約800年続いたイスラムが終焉する時代である。700年もイスラムがいたのによく押し返したなという感じだ。
     松本里美さんの銅版画のイラストもよい。

  • 史実をベースにした歴史物語。
    主要登場人物は実在した人たちではないけど、事件など歴史の流れは現実にあったことを軸にしています。
    スペインでこんなことがあったとは。現代でもあることだけど、宗教で人々が争うのは本当に悲しいです。
    ただ、物語としては、歴史に重心が寄っていて話も急に飛んだりするから登場人物に感情移入しづらかったです。
    戦争に巻き込まれる人々の悲しみや怒りは伝わってくるんだけど。
    違う宗教を信仰する男女の悲恋と言われると、中途半端だったような。もう少し登場人物たちの感情の流れも読んでみたかったです。

  • 今、この本が中学生の課題図書になって良かった。

    キリスト教に改宗したイスラム教徒の農夫の息子と、キリスト教徒の伯爵の娘の悲恋。

    知らず知らずのうちに、自分がキリスト教文明のほうが善!という刷り込みを受けていたことに気づかされて、はっとする。
    イスラム教徒がそのような行動に至らざるを得なかった背景を考えてみようとさえしてこなかったことに怖さをおぼえる。

    もっと世界史を学ぼう。
    日本とアメリカと隣国で、自分の世界ができてやしないか。
    それだけの視点でしか考えてないんじゃないか。

    こんなふうに、誰もの心に届く形の恋の物語で、こんなに大切なメッセージを伝えてくれるなんて、この本はすごい。

    ニュースを見て、頭でっかちに、色々知ったような気持ちになって、語っちゃったりしてる人に届けたい本。

  • 歴史と悲恋を扱った児童文学は珍しいし、装丁が美しい。(しかし、ターゲットの子どもには地味かも)

    読んだ感想としては、悲恋はそう詳しくは書かれておらず、小学校高学年から中学生に読ませるなら、もう少し恋愛要素があって良かったかのではないかという印象。
    物語自体は難しいところはないが、名前を覚えるのは大変そうだ。世界文学を読みなれた大人でも、ロシアと南米の文学の登場人物の名前を覚えるのに苦労した人は多いと思うが(ロシアの名前のバリエーションの多さとスペイン語圏の同じ名前の人の多さ)、これもなかなか登場人物が多く、子どもにはハードルが高いだろう。「フェルナンド」「エルナンド」が複数登場する上(「フェルナンデス」もいる)、キリスト教徒に改宗した後の名前とイスラム教徒としての名前がある。
     
    スペインでイスラム教徒が権力を握っていた時代があったということ自体を子どもは知らない上(大人も世界史として知っていても実際どのようだったかは知らない人が多いだろうから)歴史小説としての価値は高い。その上、異教徒を迫害したために、蜂起され、戦争になってしまうというのは、現在も続いている。イスラム教徒をキリスト教徒が迫害する歴史が古いことにも驚かされる。

    「たがいに認め尊敬し合っているキリスト教徒とモリスコ(改宗させられたイスラム教徒)も現にいるのです。善意と寛大さがなければ、それを理解できないでしょうが。たがいに調和し平和に暮らしていったなら、その方がどれほどみなの利益につながるか」(P102)と考える貴族もいたが、結局王と他の貴族たちの意見が多数を占め戦争となっていくあたり、現代と変わらない。また、エルナンド父子が奴隷の身分となるも、マリアの父の伯爵が自由を与えてもらい、「そなたたちは真の友だ」と言われたとき、「そのことはわたくしたちも、しかと承知しております。しかし、人が自尊心を持てるかどうかは、ほかの者が自分をどう見るかではなく、自分が自分をどう思うかで決まるのです。」(P156)という言葉は重い。

    今に通じるテーマが、子どもにも理解できるように書いてある。どんな子でも楽しめるわけではないけれど、よく読める子どもには薦めたい。

  • 日本ではちょっと遠いところにある宗教に関連した物語。現在でも続く対立の根深さの根源を気づかされる。

  • 2018年度、中学生向けの課題図書
    スペインではずっと読まれている本だそうです
    初めての邦訳で装丁の版画もいい味を出しています
    史実に基づいたお話
    宗教の確執はきちんと理解できないまでも
    むごさに胸が痛みます
    でもこの名前!覚えられないのです
    脳内がグルグル

    ≪ グラナダの 山川祈り 険しくて ≫

  • 中学生用課題図書とは思えない、大人が読んでも胸が痛くなる物語でした。グラナダに行ったこともあり、また2009から2年アメリカ留学で酷い人種差別を受けた自分にとって、遠い昔話ではありませんでした。キング牧師の”I have a dream”で始まる有名なスピーチを思わせる部分もあります。ぜひ、スペイン語で読んでみたいです。

  • 仕事で読んだ課題図書。海外文学、更に恋愛ものと聞いていたので難しそうだし苦手だなあと思ってたけど、思ったより読みやすかった!
    スペインにこんな歴史があったなんて初めて知ったし、宗教の違いがこうも大きな戦争を引き起こすなんて驚きました。恋愛もだけど個人的には主人公のお祖父さんたちの友情がぐっときました。目の前にいる人をキリスト教徒・イスラム教徒ではなく1人の人として接していくことが大事なんだと思いました。

  • 1500年に起きたスペインでのイスラム教徒の反乱を背景にした、幼なじみのマリア(キリスト教徒)とエルナンド(モリスコ キリスト教に改宗した元イスラム教徒)との悲恋の物語。
    現代にも通ずる歴史物語。

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