まく子 (福音館の単行本)

著者 :
制作 : 西加奈子 
  • 福音館書店
3.40
  • (49)
  • (141)
  • (200)
  • (38)
  • (13)
本棚登録 : 1357
レビュー : 190
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834082388

作品紹介・あらすじ

小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいる。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしく、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきた。コズエはとても変で、とてもきれいで、なんだって「撒く」ことが大好きで、そして、彼女には秘密があった。信じること、与えること、受け入れること、そして変わっていくこと……。これは、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ぼくたちはみんな宇宙人。
    同じ粒からなる生命体。

    粒は変わり続けるもの。
    粒をまき、永遠に受け継がれていくもの、それが”魂”。

    永遠に残るものは、他のものに粒を与えられないもの。
    他のものと、交われないもの。

    永遠じゃないから、美しい…。
    永遠じゃないものは、優しい…。

    とても難しい、無限の世界…。
    いろんなメッセージが、込められているのは想像できても、
    そのすべてを受けとめることは、出来なかった気がします。
    でも、この物語は、それでいいのでは…と思いました。
    たぶん受け止め方は、まく子がまいた光の粒の数。

    なぜ、命あるものは、みな死んでしまうのだろう…。
    永遠ではないのだろう…。
    その答えの一粒だけは、拾えたような気がします。

    最後はぜひ、暗闇で…。
    あなたにも、『まく子』の光の粒が降りそそぐはず…。

  • 少女の秘密が、ぼくの世界を塗り替えた。

    なかなか不思議なお話でした。
    なんだってまきちらすコズエ。
    大人になりたくないという慧。
    集落のちょっと変わったお祭り。

    みんな宇宙人、違うことがおかしいのではなく、みんなおかしい。
    人はみんなコズエと同じで「死ぬ」ことを、「生きる」ことを学ぶためにここにいるのかもしれない。
    たくさんの粒で偶然できた生命体。私が誰かだったかもしれないし、誰かが私だったかもしれないということ。
    気づいた瞬間、慧の視る世界が変わった。類の、ドノの、ミライの本質に気づけた。

    人を信じ、尊重すること。
    与えること、受けいれること。
    変わっていくこと。
    西さんの願いが込められた小説だなと思いました。

  • 挿絵力強い。
    テルテル坊主がリアルに効果ありそう。
    死に向かってどんどん変化していくことはみんな平等な生き方なんだと純粋に伝わります。
    自分のことも知らない人…宇宙人でさえ愛しく思える、今を大切にしたいと優しい気持ちになります。
    砂を撒くのは迷惑なのでホースで水を撒いてみました。撒き散らすのは気持ちいいです。
    コズエも慧も温泉街の人みんな大好きです。

  • 「まく子」
    公開日:2019年3月15日
    小さな温泉街に住む小学五年生の慧は、不思議な転入生の美少女と出会う。思春期の少年は、さまざまな葛藤を抱えながら大人へと近づいていく。
    キャスト:山崎光、新音、須藤理彩、草なぎ剛、つみきみほ
    監督:鶴岡慧子

  • 温泉しか資源がない小さな集落に突如転校生がやってくる。主人公の旅館に住み込みで働くことになり、職員の住みこみ「いろは荘」へ入居する。そんな転校生はとにかくまくことが好きだった。
     主人公は思春期入りたてで、なぜか「大人になりたくない」と思っている。また、みんなが成長していく中でその成長の過程を忌み嫌っている。特に女子に「せいり」が始まってポーチを持ってトイレに行くことなどで顕著に嫌悪感を示す。こういった描写に子供の些細な心の動きを表しているように思う。
     転校生が実は宇宙人という少しファンタジーの要素が入ってきてしまうけれど、そのファンタジー要素の中に主人公が嫌う「大人になること」への重要なメッセージがある。転校生の住む星には永遠しかなくて、「死」を受け入れにきた。死に向かって人間は歩み続けるが、昨日の自分と今日の自分は違う。それは人間を構成する粒が入れ替わるから。その粒は違う誰かのところに移っていくかもしれない。この一連の流れを「まく」ことにより結びつけてる。
     昨日の自分と今日の自分が本当に同一人物か?といった哲学的な読み取り方もできるが、やっぱりなんだか最後はほわっと優しく終わってくれて、いい感じでした。

  • どんなに荒唐無稽な話でも、まずは信じること。信じて後から嘘だと分かったら傷つくけれど、それでも最初から嘘だと決めつけるのではなく、まずは受け入れること。
    西加奈子さんの作品はよく「見た目」が人物描写に出てくる。
    今回はとても美少女な小学生が転入してきて、最初は無機質な不思議ちゃんだったけど、集落に馴染むにつれてだんだん人間の女の子らしくなっていって、どんどん太っていって、美少女の面影が消えていく。
    それでも、コズエの魅力は変わらなくて、主人公の男の子は、奥歯まで見せて笑うぽっちゃりのコズエちゃんが好きになった。

    西加奈子さんの作品を読んでいると、人間の美しさを感じられる。生きてるって素晴らしいし、人は見た目じゃなくて生命の美しさがあるって思える。

  • 久々の西加奈子。
    独特な登場人物たちの普通のような普通じゃない日常は、最初の頃はワクワクして読んでたけれど、冊数を重ねていくごとに、あれ?これも?また?と食傷気味でしばらく離れてました。

    でも彼女の作品は読み始めてすぐに、目の奥に景色が広がるのがいいですね。

    ちょっと不思議なコズエとオカアサン。
    彼女たちの正体がわかったあとも、村のみんなの妙に納得した感じが面白かった。
    いやいやいや、もっと驚こうよー…。

    読書力が落ちたなー、なんか小難しい話に疲れたなーってときに、
    西さんの作品は何も考えずにサクサクっと読めて、心にすーっと受け入れられるのでいいかも。

    子どもがいたら読ませてあげたい一冊。

    みんなみんな小さな粒からできているんだよー。

  • 西さん3冊目、嫌いだ苦手だ言いながら手に取ってしまうのは何故だろう?
    物語はどこかレトロな温泉街で心より体が先に大人になりかける頃のボーイミーツガール物語、そんなありきたりな設定ながら全てにおいて巧さが光る。
    慧とコズエの会話の瑞々しさもそうだが「大人になりたくない心」を周回遅れの大人のドノやミライ(昔はいたよね)に投影させるセンスは絶妙。
    そしてその妙ちきりんなタイトルが種明かしされる頃にはアホか!と感動が入り混じる西ワールドにどっぶりとハマる。
    サラバをギュッと濃縮したようならしさ溢れる一冊は読みごたえあり

  • 主人公の男の子・慧(さとし)は、思春期の入り口に立ったばかりの5年生。父親をはじめ自分を取り巻く自分より年上の「大人たち」の行動や反応に、野蛮、不潔、ばかという印象を抱き「大人たち」に近づいていく自分の体の変化を拒絶し、心がついていけないでいる。転校生として慧の前に現れた美しい女の子・コズエは、撒くことが好きで、慧にとってコズエの行動には「子ども」を感じることができた。撒く、という共通の行動を通して、慧はやがてコズエ心を許し、慧の心の葛藤を時折素直にぶつけるようになる。コズエは慧の葛藤に正面から向き合う。コズエは宇宙人で、自分の星で起きていることと慧の身に起きていることを比べていくうちに、永遠ではない儚さの美を悟る。これは慧の葛藤を解く鍵にもなる。慧の「大人」へ、そして「老い」ゆくこと、変わりゆくことへの恐怖が、コズエの言葉を信じることで去り、新しい自分を受け入れる勇気となる。
    コズエが去るシーンでは、一瞬、慧の想いをコズエに裏切られたかのように感じ不安になるけれど、最終的に慧とコズエの想いは通じ合っていたし、コズエと築いた絆は、慧の魂に永遠の想いとして刻まれたのだと思う。そのシーンが、子供らしく純粋で優しく美しいシーンとして強く印象に残った。
    内容とは離れるけれど「まく子」の表紙には、蓄光インクで慧とコズエが撒いた小石と思われる絵が描かれている。暗闇で光るその様子は、宇宙を思わせる。こうした計らいが、この本を、この物語をより一層引き立て、楽しませてくれているように思う。

  • Webで最初の方だけ読んで惹き込まれ、図書館で借りて一気読みした。
     「ぼく」は、大人になるのが怖い。でも体や心の変化は止められない。家族みたいな集落に現れた不思議な少女コズエに惹かれ、ホラのような話を聞いたりするうちに、「ぼく」も否応なく変わっていく。ドノやミライや類という、社会の落伍者のような人間への見方も変わる。それが成長というものか。
     最後は、ほんとにかぐや姫のようになってびっくりした。
     不思議なもやもやする話だったが、なぜか心に響いて、何度も反芻してしまう。
     西加奈子さん自身による挿絵も、力強いクレヨンのタッチで、印象深い。好き。

全190件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。
プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

西加奈子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮下 奈都
平野 啓一郎
村田 沙耶香
西 加奈子
辻村 深月
又吉 直樹
朝井 リョウ
伊坂 幸太郎
川上 未映子
森見 登美彦
中村 文則
西 加奈子
西 加奈子
伊坂 幸太郎
辻村 深月
角田光代
西 加奈子
西加奈子
有効な右矢印 無効な右矢印

まく子 (福音館の単行本)を本棚に登録しているひと

ツイートする