4ミリ同盟 (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834083958

作品紹介・あらすじ

この物語の主人公、ポイット氏には、ある悩みがあった。まわりの人びとがみな習慣的に口にしている〈フラココノ実〉を、まだ食べたことがないのだ。小さなリンゴほどの、ヘリオトロープ色の果実……果汁豊かなその実は、やさしく切ない、遠い夢のような味がするという。なぜ自分は食べることができないのか。いつになったら……。同じ憧れをもつ仲間と、同盟を組んで目的を達しようとするポイット氏。果たして結果は?

感想・レビュー・書評

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  • 高楼方子さんの作品は、「ゆゆのつづき」以来、久しぶりに読みましたが、今作はユニークな中にも、ひっそりと大切なものが潜んでいる、おとぎ話のような面白さを感じました。

    「フラココノ実」を食べられない現実に、不安を抱えて生きる、四十代の主人公「ポイット氏」が、同じ仲間三人と協力して、なんとか実を食べようとお互いに協力し手を結んだのが、「4ミリ同盟」。

    同じ仲間と書いたが、細かい点での嗜好というか、考え方の違いを強調しているところが、重要なのかなと思いました。フラココノ実や、周りの考え方に惑わされずに、あくまで現実に起こったことを冷静に見つめる、と。児童書だけど、なんだか大人も読めて奥が深いというか、人生を楽しく生きるための方法を教えてくれているようで、興味深かったです。

    ただ、ストーリーが簡潔で短かったのが、やや消化不良な感もありましたが、児童書だから、仕方ない部分もあるとは思いました。それでも、個性的な挿し絵の構成や、時折、崩れる文字フォントの自由さ等、何かワクワクさせる要素が多かったのが、また印象に残りました。

    これを読んだ子供たちが、どういった感想を持つのかが、すごく気になります。

  • 『緑の葉がしげる枝えだに、たくさんのブランコのようにぶら下がっているという、ヘリオトロープ色の、小さなリンゴのように愛らしい、やさしく切ない、遠い夢のような味のする』フラココノ実。
    なんて美味しそう。素敵な描写にうっとり。
    このフラココノ実は、大人になると食べたくなるという。けれど食べると自分の中の「何か」が消えてしまうらしい。
    それでも食べたいのは、誰もが食べているのに食べていない自分は「何か」が足りない気がするからと。
    その気持ち何となく分かります。

    「「何か」を得れば「何か」を失う。見方を変えれば、どっちかの「何か」は持っているのだ。そこいらじゅうの人がなくしてしまった「何か」を大事に持っているほうが貴重、かつ愉快じゃありませんか」というバンボーロさんの言葉にハッとした。

    登場人物が、冴えない中年おじさん、(本人曰く)ただの主婦、「何か」が足りないと評価されている画家、本に鼻を突っこんでいるおばあさん。
    これは、大人のために書かれた物語だ。
    楽しい~。

  • 児童書の体裁で、子どもが読んでももちろん楽しいけど、大人にこそ読んでほしい。
     まず感心するのは高楼さんの言葉のセンスの良さ。登場人物の名前も、フラココの実という名前も、(5ミリでも9ミリでも1センチでもなく)4ミリというのも絶妙。ヘリオトロープ色というのも。ヘリオトロープって聞いたことはあってもよほど花が好きな人や色に詳しい人でないと、どういう色か思い浮かばない。(実はちゃんと表紙に描いてあるんだけど)一体どんな素敵な色なのかとすごく気になる。あー気になる気になると思いながら読むので余計に想像してしまう。上手い。
    こういう不思議な物語は、読者をその世界にスッと連れて行けるかが重要なのだけど、意識すらしないで同じ場所に行ける。
     高楼さんの作品での友情は年の近い同性なんて狭いものではないのが、素敵。老若男女問わず、魂のありようが似ていれば友達になれる。わかりあえる。『紳士とオバケ氏』で人間とオバケに友情が成り立ったように。それから、登場人物が孤独を恐れず人生を楽しんでいるのもいい。
     私も4ミリ浮いていられたらなぁとも思ったり、いやいや時々素晴らしいフラココの実を食べに行くのも悪くないよ、と思ったり。
     読んで幸せな気持ちになれる本は多くないけれど、これは数少ない幸せが感じられる本。プレゼントにもいいかも。挿し絵も魅力的。

  • 何かを得れば何かを失う。
    皆が失うはずの何かを持ち続けていると、時に疎外感を感じるかもしれないけれど、それを、楽しいと感じる方が楽しく生きられる。
    違ってオッケー!逆に楽しもう!のメッセージに愛を感じます。
    不思議な設定だけど、しっくりくる、すてきなお話でした。

  • 「この物語の主人公、ポイット氏には、ある悩みがあった。まわりの人びとがみな習慣的に口にしている〈フラココノ実〉を、まだ食べたことがないのだ。小さなリンゴほどの、ヘリオトロープ色の果実……果汁豊かなその実は、やさしく切ない、遠い夢のような味がするという。なぜ自分は食べることができないのか。いつになったら……。同じ憧れをもつ仲間と、同盟を組んで目的を達しようとするポイット氏。果たして結果は?」

  • 何かを得れば何かを失う。それが大人になるということなのか。いつだって何か欠けているのが人間ならば、うふふふ、うふふふと楽しい気分で、話したり、いかだを作ったり、踊ったりしているのがああかな。
    高楼さんのテンポのある文章に、大野さんの絵がぴったり。

  • 高楼方子さんの作品にはまりつつあり、せっかくなので童話も読んでみました。
    児童文学だけど、大人になってから読むとまた違う楽しみがあると思います。
    フラココノ実を食べずに大人になった登場人物たちがとても愉快で魅力的。

  • かわいい!
    内容も表紙もかわいすぎる。
    うふふな空気。
    いわゆる子供心を持ち続けていられるかってことかしら。

  • アレをまだ食べたことのない風変わりな中年と老年の男女4人のお話。 高殿さんの発想がいい。絶妙なとこをついてくる。フラココの実、4ミリ、ヘリオトロープ色だって!すてき。そして、時期が来たら食べずにはいられなくなる、何かが足りない、他に足がついていない、忘れてしまうもの…。ユニークなお話の中に底知れぬ深いものが漂う。人生それでいいんだって肯定したくなる。がんばっているみんなが愛おしい。

  • こどもより大人に響きそうな

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著者プロフィール

高楼方子 函館市生まれ。絵本に『まあちゃんのながいかみ』(福音館書店)「つんつくせんせい」シリーズ(フレーベル館)など。幼年童話に『みどりいろのたね』(福音館書店)、低・中学年向きの作品に、『ねこが見た話』『おーばあちゃんはきらきら』(以上福音館書店)『紳士とオバケ氏』(フレーベル館)『ルゥルゥおはなしして』(岩波書店)「へんてこもり」シリーズ(偕成社)など。高学年向きの作品に『時計坂の家』『十一月の扉』『ココの詩』『緑の模様画』(以上福音館書店)『リリコは眠れない』(あかね書房)『街角には物語が.....』(偕成社)など。翻訳に『小公女』(福音館書店)、エッセイに『記憶の小瓶』(クレヨンハウス)『老嬢物語』(偕成社)がある。『いたずらおばあさん』(フレーベル館)で路傍の石幼少年文学賞、『キロコちゃんとみどりのくつ』(あかね書房)で児童福祉文化賞、『十一月の扉』『おともださにナリマ小』(フレーベル館)で産経児童出版文化賞、『わたしたちの帽子』(フレーベル館)で赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞を受賞。札幌市在住。

「2021年 『黄色い夏の日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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