まく子 (福音館文庫)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834084436

作品紹介・あらすじ

小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいる。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちがおそろしく、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきた。コズエはとても変で、とてもきれいで、なんだって「撒く」ことが大好きで、そして、彼女には秘密があった。信じること、与えること、受け入れること、そして変わっていくこと……。これは、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 鄙びた温泉街で生まれ育った彗(さとし)は小学5年生の11才。両親が切り盛りする旅館・あかつき館の従業員寮いろは荘に、ある日、彗と同い年のコズエという超絶美少女とその母がやってくる。コズエは集落じゅうのアイドル的存在となるが、彗から見たコズエは石粒や水など何でも「まく」ことが好きで、実は自分は宇宙人だと彗に打ち明ける不思議ちゃん。だけど彗はそんなコズエに惹かれずにはいられない。

    思春期未満の11才の男の子の、「男子は幼稚で、ばか」「女子は大人びていて、残酷」と感じる感受性、自分のことも両親のことも男子全般のことも何でも恥ずかしく、自分の体が成長することも恥ずかしいし気持ち悪いし大人になんかなりたくない。なんのために体は変化し成長するのか、それを「ぼくたちは、死ぬために成長している」と彗は考える。確かに、すでに人生折り返し地点をすぎたおばちゃんである私にとっての成長とはつまり老化であり、いきつく先は「死」だ。彗、11才にして悟ってる。

    読みながら、そうそう、小学生ってこんな感じ、自分もこんなこと考えていた、と思い出し、これらを丹念に辿れる西加奈子すごい!と単純に感心。しかも男の子の気持ちなのに。

    基本的には児童文学として書かれているので、小中学生が読んだほうが響くのではないかと思う。終盤の展開はちょっと突拍子もなさすぎて驚いたけれど、この、一般的なジュブナイルなら子供たちだけの体験にする場面に、大人も参加させているところに西加奈子の懐の深さを感じた。ご近所で奇人変人扱いされている人たちにも優しさや魅力があり、彗も集落の人々もすべてを許容し、寛容に受け入れられるように変化する。カリカリしすぎて他人を排斥・攻撃しがちな現代人の理想の在り方を作者は提示したかったのかなと思った。

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著者プロフィール

1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。
プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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