はりねずみともぐらのふうせんりょこう アリソン・アトリーのおはなし集 (世界傑作童話シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834085662

作品紹介・あらすじ

はりねずみともぐらがなかよく散歩していると、木かげで女の人が昼寝をしているのを見つけました。その人の頭の上には、色とりどりの風船が浮かんでいます。もぐらは、女の人の手からそっと風船を2つ取り、かわりに金貨をおきました。風船を手に入れて大喜びの2ひき。するとそこへ、強い風が吹いてきて、2ひきは風船とともに空高くまいあがっていきました。スリル満点で楽しい空の旅のはじまりはじまり。表題作のほか全3話。

感想・レビュー・書評

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  •  私の中では、『グレー・ラビット』シリーズでお馴染みの、イギリスの児童作家、アリソン(アリスン)・アトリー(1884年~1976年)のおはなし集。

     本書は、2020年発売だけあって、文字は大きくてすっきりと読みやすい上に、全ての見開きに、東郷なりささんの、まるでアトリーの幼少時代の雰囲気を素朴に色濃く再現した、花と動物とで満ち溢れた絵が付いているのが、子どもたちにとって、いちぱん嬉しいのではないかと感じ、何故ならば、読み聞かせに於いて、飽きずに楽しめる工夫とも感じられる上に、絵本のような児童書といった意味合いには、読み聞かせも自分で読む子どもも、それぞれに喜びを感じられる親しみやすさが、きっとあるのだからと思う。

     私的には、表紙や見返しの落ち着いた緑色に癒されて、特に、キンポウゲとヒナギクがいくつも描かれた見返しは、その目にも鮮やかな、生きているものたちで構成された優しいデザインに、ハッとさせられながらも、アトリーの望む形にしているようにも感じられたのが、また嬉しい。

     本書には3つのおはなしがあり、その全てに共通するのは、動物が主役であることと、そこに必ず人間が関わっていることで、そこには、アトリーの動物と人間とが共に生きる、一つの形を表していると共に、動物たちだって、人間がしていることをやりたくなることもあるのではないかと、アトリー自身が想像して楽しんでいるようにも思われて、そこにグレー・ラビットシリーズと共通するものを感じられたことが、私には最も嬉しかった。


    「小さな人形の家」(1970年)
     野ネズミのジェマイマと、兄のジェレミーは、草原の中で偶然見つけた、小さなおうちを見て、最初は警戒するものの、「きっと、ようせいの家よ」と言う、ジェマイマに促されて、おそるおそる入っていったら、その妖精のサイズのような家具は、見事に野ネズミにぴったりで、おもちゃに乗ったり、ベッドに寝てみたりと楽しんでいると・・・といった、ちょっと不思議な導入部からの、「ああ、なるほどね」といった、偶然が引き起こす面白さは、とても微笑ましく、「入っても大丈夫よ」と言ってくれる蝶々の優しさには、まるで動物同士の絆を、人間のそれに擬えているようであるのが身に染みて、お互いに妖精だと思い込むような物語の終わり方には、お洒落な感じも抱かせて、一つの物語に様々な要素を盛り込んだ、アトリーの素晴らしさだと思う。

    「はりねずみともぐらのふうせんりょこう」(1945年)
     表題作。はりねずみともぐらというと、私には、ヘッジとモールディを想像してしまうが、強ち、雰囲気は遠からずで、寝ている女性を見て、「あの人は疲れてるに違いないよ。起こしたら気の毒だ」と、気遣うもぐらと、彼を守る勇敢なはりねずみのコンビが、風船を手にしたことから始まる、ちょっとした冒険は、子どもたちもきっと風船が欲しくなるんじゃないかなと思えるワクワク感に満ちている中、ギニー金貨にタイトルの原文が入った遊び心も楽しいし、ここでも動物たちの種族の垣根を越えた優しさが印象的。

    「のねずみとうさぎと小さな白いめんどり」(1966年)
     私のいちばん好きなおはなしで、それぞれにワケありの彼らが、最初ひとりぼっちでいたのが、偶然の出会いにより、共に暮らす流れも良いし、白いめんどりの『自由ってね、風や雨や太陽や星のことよ』や、鳥の羽に例えた雪の表現等、改めて、自然の素晴らしさを教えてくれることに加えて、三匹と関わることになる、女の子スーの見返りを要求しない優しさには、胸に迫るものがあった上に、何故、大人ではなく子どもに心を開くのかということに対して、説得力があるのが、何よりも印象深かったが、そこにはまるで、スーにアトリー自身を投影したかのような終わり方である点に、とても納得させられるものがあった。

     アトリーは、イギリスのダービシャー州の古い農場に生まれ、その少女時代を広い野原や森で動物たちとともに過ごしており、まさにその時のリアルな心境をそのまま、このおはなしに吹き込んだかのような臨場感もあって、思わず、アトリーの本音に少し触れられたのかもと感じられたことが、私にはとても嬉しくて、彼女にとって、如何に動物たちの存在が、かけがえのないものであったのか、よく分かる、そんな素敵なおはなしだった。


    ブクログスタッフの皆さんへ
     この度は、ブクログアワードに私を選んで下さり、ありがとうございます。

     えーっと・・・何かの間違いではないんですよね?

     私よりも素晴らしいレビューを書かれている方はたくさんいらっしゃると思いますし、私が憧れているブクロガーさんも、たくさんいらっしゃるのですが・・・それにしても、猫丸さんと、さてさてさんという蒼々たる方々と、並ばせていただいたかのようなこのポジション、私だけ浮いている気もしますし、そもそも荷が重すぎるのですが(^_^;)

     それでも本音を書かせていただくと、夢のようで、とても嬉しいですし、改めて、私の本棚を覗いて下さった方々、レビューを読んで下さる方々、「いいね」を下さる方々、そして、ブク友さんがいらっしゃらなければ、ここまで夢中になることは決して無かったと思います。
    いつもありがとうございます。

     そして、ちょっとだけ個人的なことを書かせていただきますと、昨年夏あたりから仕事の面で色々ありまして、現在、ダブルワークをやりながら、なんとか生活をやり繰りしている状況だったため、今回の受賞は、そんな私の存在を肯定してくれたようで、大きな勇気をいただいた思いとなることが出来ました。ありがとうございます。

     ですから、おそらく今年は、昨年みたいに一日に一投稿するくらいの多くのレビューは書けないかもしれませんが、それでも私の、絵本を中心とした、好きな本をひとつひとつ丁寧に読んでいき、私なりの言葉で、ゆっくりとでも自分自身が納得出来るものを書いていければと思っておりますので、よろしければ、今後ともお付き合い下さればと思います。

     改めまして、素敵な賞をありがとうございます。

    • たださん
      ありがとうございます(^_^)
      ありがとうございます(^_^)
      2024/01/30
    • かなさん
      たださん、こんばんは!
      ブクログユーザーアワード2023、ゴールドの受賞
      おめでとうございます(^O^)/
      プライベートで大変な中、
      ...
      たださん、こんばんは!
      ブクログユーザーアワード2023、ゴールドの受賞
      おめでとうございます(^O^)/
      プライベートで大変な中、
      そういえばお正月もお休みできませんでしたもんね…。
      今回の受賞は、たださんの本に向き合う姿勢が
      認められたんじゃないでしょうか…
      (私のシルバーは、まだ何かの間違え??とか…
      思っちゃってますが(汗))
      これからも、たださんのペースで
      素敵なレビューをあげてくださいね!
      2024/01/30
    • たださん
      かなさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます(^^)

      そう言って下さると、とても嬉しいです。
      ありがとうございます。
      決して、ブク...
      かなさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます(^^)

      そう言って下さると、とても嬉しいです。
      ありがとうございます。
      決して、ブクログ自体は無理してやっていたわけではないので、要らぬ心配をかけさせてしまい、申し訳ありませんでした。

      改めまして、シルバー受賞おめでとうございます(*'▽'*)
      かなさんは、本が好きなんだというのがよく分かる、その圧倒的読書量と、親しみやすさを感じるレビューに、とても惹かれるものがあります。
      これからも、そんなかなさんのレビューを楽しみにしてますね♪
      2024/01/30
  • 2年。動物と人のある優しい暮らしを描く3話。
    素朴なようでわくわくするこのお話の良さは、動物達と共にちょっとした冒険を楽しめることや、もしかしたらすぐ側でも動物達の物語が起きているのではと思わせてくれる自然さにある。

  • 小学校低学年の子が読めそうなお話でした。
    3話あり、2話目は映画化されたら、面白いだろうな、と思いました。その光景が目に浮かぶようでした。
    作者はイギリス生まれ、のどかな野原や森で過ごしこのようなお話が生まれたのだな〜と思いました。
    読んでよかったです!

  • 「はりねずみともぐらがなかよく散歩していると、木かげで女の人が昼寝をしているのを見つけました。その人の頭の上には、色とりどりの風船が浮かんでいます。もぐらは、女の人の手からそっと風船を2つ取り、かわりに金貨をおきました。風船を手に入れて大喜びの2ひき。するとそこへ、強い風が吹いてきて、2ひきは風船とともに空高くまいあがっていきました。スリル満点で楽しい空の旅のはじまりはじまり。表題作のほか全3話。」

  • アトリーのかわいい幼年童話。挿絵もかわいい。日本の若い挿絵画家の方が描いているようだけど、世界観にぴったりでかわいい。

  • アトリーのおはなし集

    「小さな人形の家」
    二匹の野ネズミの兄妹は、野原にすてきな妖精の家を見つけました。うれしくなった二匹はおうちの中にはいって、小さな上等のベッドで眠りこんでしまいます。二匹が妖精の家と思ったのは、実は?

    「はりねずみともぐらのふうせんりょこう」
    はりねずみともぐらが風船を持って散歩していると、突然の強い風!二匹のからだが、持ち上がって空の旅をはじめます。もぐらくんが律儀に金貨を置いていくのが、キチンとしていた。

    「のねずみとうさぎとちいさな白いめんどり」
    のねずみとうさぎとちいさな白いめんどりが、麦畑の外れの藁葺き屋根の家に住んでいます。
    金色のサワギクの枝が飾ってあり、魔法の力でだれにも見えないのです。
    さんびきの出会いのお話。
    小さな女の子のモデルはアトリーかな?

    こんなお話がたくさん本棚にあるといいな!

  • タイトルのお話の他

    「小さな人形の家」
    のねずみ兄弟が草の中で見つけた家に入って…
    思わぬ危険と隣り合わせの冒険に。

    「のねずみとうさぎと小さな白いめんどり」
    麦ばたけのはずれのわらぶきやねの家に色の違う三びきがいっしょにくらしていました。かしこいめんどりは、家の戸の上に人の目から家をかくしてくれる金色のサワギクの枝をかけておきました。この三びきがいっしょにくらすようになったそのわけは…。

    表紙も挿絵もお話もかわいい。

    絵本から読み物への移行期におすすめ。

  • ちいさな動物たちの楽しいお話が三つ入っています。
    ある日のねずみのジマイマとジェレミーは、野原で素敵な家を見つけました。かわいい窓や豪華な部屋があって、寝心地のいいベッドまで!二人はそのベッドにもぐりこむとぐっすり眠ってしまいました。一方、人形の家を野原に置き忘れた女の子がもどってきて…。ちょっぴりドキドキする面白いお話です。

  • 読みやすくてかわいらしいお話だった。
    はりねずみともぐらのふうせんりょこう楽しそう。のねずみとうさぎとめんどり、そしてスーちゃんのやりとりもほっこりした。

  • 小さな動物たちのお話。

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著者プロフィール

アリソン・アトリー 1884年、イギリスのダービシャー州の古い農場に生まれる。広い野原や森で小動物とともにすごした少女時代の体験をもとに、多くの物語やエッセーを書いた。日本語に翻訳された作品に『グレイ・ラビットのおはなし』『時の旅人』(以上岩波書店)、『チム・ラビットのおはなし』(童心社)、「おめでたこぶた」シリーズ、『むぎばたけ』『クリスマスのちいさなおくりもの』『ちゃいろいつつみがみのはなし』(以上福音館書店)など多数。1976年没。

「2020年 『はりねずみともぐらのふうせんりょこう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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