- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834251128
感想・レビュー・書評
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フランス西部の男ゼランドニー族のジョンダラーとエイラは仲直りを果たす。そして、ジョンダラーの故郷を目指して、黒海の北からドナウ川に沿って遥かなる旅に出た。2人につきそうは、二頭の馬(ウィニーとレーサー)そして狼のウルフである。上巻では、旅の1/3、ジョンダラーがいっとき過ごしたシャラムドイ族に辿りつくまでだった。
これは、2人のクロマニヨン人の旅であると同時に、人類とは何かを探す旅でもある。
エイラは自分が言葉以上のものを理解していることを知ったが、そのせいで最初は少し混乱して憂鬱になった。というのも、人の口から出る言葉が必ずしも、その人の見ぶりが示すことと一致していなかったし、エイラは嘘というものを知らなかったからだ。エイラが真実を隠す方法として知っていたのは、黙っていることぐらいだった。
そんなエイラもそのうち、小さな嘘には礼儀とみなされるものが多いことを知った。しかしユーモアー通常、あることを言いながら、別のことを意味することで成立するーを理解した時に初めて、言葉で気持ちを伝え合う人々の言語の本質や、それを用いる人々のことがわかった。(21p)
ネアンデルタール人の立場からクロマニヨン人を見ることで可能になる人類の短所と長所がわかる。いや、これこそ人類の「原罪」とでも言うべきものなのかもしれない。嘘をつく動物。それは悪意もあるし、思いやりもあるのである。
エイラとジョンダラーは、もしかして性交が妊娠の原因ではないか、と疑っている。本来は大地の女神ドニが時と人物を選んで女性に「霊」を授けるのである。と、ジョンダラーたちクロマニヨン人たちはほとんどがそう信じている。しかし、私には大いに疑問がある。こんなにも自然を観察して合理的にそれを利用して来た人類が、何故妊娠の秘密を明らかにできなかったのか。できなかった、と考えられている。何故ならば、それこそが新石器時代まで残っている土偶やその他の宗教儀式の源だと考えられているからである。このことを巡って、このシリーズは暫くずっと右往左往していくだろう。見守りたい。
2014年6月29日読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
淡々と旅が続くのでエイラと同じように読んでいるこっちも人恋しい。
自然の描写が大切なのは重々承知なのですが、人と関わっている時の方が楽しく思える。 -
前巻で黒海の遙か北、現代で言えば、ロシアとウクライナの国境あたりのマムトイ族の野営地をジョンダラーと共に旅立ったエイラ。
目指すはジョンダラーのふるさと、ゼランドニー族の住む地で、ヨーロッパ横断にも近い、フランスの、スペインにほど近いあたりである。
二頭の馬と一頭の狼を連れた道行きは、身一つで歩くだけより遙かに易く安全にはなる。馬に乗って歩き、荷物を馬に積み、夜ともなれば、狼が番をしてくれる。とはいえ、調教技術どころか動物と共に暮らすことを世の中の誰もがしたことのない3万5千年前、意志を伝える方法を探りながら、ということになる。
そもそも、エイラにとっては動物たちは友であり、無理矢理従わせる気は毛頭無い。
「平原の旅」とはいえ、川沿いに歩いたり、渡河したり、森の中や沼地を歩いたり、ということは、進路や季節の変化によっても伴う。洪水やブヨの大群などに悩まされながら、一行は西へ西へと向かう。
ひとまずの目的地は、かつての旅でジョンダラーが弟と共に逗留し、一事は永住を決心をしかけたほどの出会いと別れの地であるシャラムドイ族の住む地。ギリシャの北、ルーマニアあたりだろうか。
そこへたどり着くまでの困難と不安は、当然現代の比ではない。氷河期も終わりのこの頃とはいえ、ポーランドやベルギーなどのヨーロッパの北の大地は、厚い氷河に被われている時期である。旅ができる期間は限られており、そもそも地図とて無い時代、方向の頼みの綱は伝聞と勘と記憶のみだ。
ジョンダラーにとって一度たどった道とはいえ、地形など変化する。しかも逆方向は、存外景色は変わるものである。
旅立ってこの方、なかなか人には会えなくなる。まばらな集落になって住む古代の人々のこと、砂粒の中の砂金を探すように難しいことはよく分かる。さらに人々と一行を隔てるのは動物たちだ。
もちろん馬上にある人間を見ることは初めてになるのだから、足は4本で頭が二つの奇妙な生き物に見えてしまい、向こうからはなかなか近寄ってこない。この旅の中でも、気づくやいなや逃げ出されてしまう、ということもあった。
さらに、受け入れて貰ったとしても、エイラにはかつての人々が「平頭」と蔑む人間であるネアンデルタール人の中で育てられたという過去がある。
多くの不安を抱える旅路であった。
しかしながら、雄大な自然は彼らを元気づけてもくれる。時に閉口させられることもあるが、現代よりも大型化した動物たちの楽園といっていいほどに、豊かに生命を育む。まあ、弱肉強食の楽園ではあるが。
その代表として君臨するのは、今の百獣の王すら逃げ出すであろう、マンモス。糞尿をまき散らしつつ行われる彼らの交尾に二人は釘付けになる。
また、途中で狩りをしたときの母なる女神への感謝、生えては枯れていく草木の様子や薬効など、著者の知識を余すことなく織り込み、見てきたかのような世界を描き出している。
道すがら、ジョンダラーは、一族に伝わる女神の伝説をエイラに話して聞かせる。そして、愛を確かめ合う。表紙を見るとやや幼く感じられもするが、エイラはすでに豊満な肉体をもった一人前の女性である。やがて、大地が謳う命への賛歌は、二人をも祝福することになるのだろうが、今はそのときではない。
男が女を身ごもらせるとは思われていない時代、生命の神秘は女神から授かるもの。そこに、新しい目を持ったエイラが、新しい風を呼び込んでいき、ヨーロッパを西に旅し終えるときには、多くのものが、エイラ風邪にかかっているのかも知れない。
某サイトより転載 -
子供が産まれる原理がわかっていなかった
「母なる大地の女神からの贈り物」「男の霊が女に入る」
太古のステップ;寒冷で乾燥した気候のおかげで草の成長が促進され木の生育は抑制された→多様な種類・多様な大きさの動物がたくさんいた
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冷たい大陸の南域;食習慣・移動方法・生息域・季節移動などで競合しないようになり生命を豊かに(=多種多様多数)した
飛蝗と呼ばれる特殊なバッタの群れ、五十億匹もの群れが百平方キロをおおい一晩で八千トンの草をたべつくす -
H23.8.10
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上巻はこれといった盛り上がりなし。のほほんとした旅の話。
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マムトイ族と別れて旅をはじめた二人の話で一冊ほとんど旅の描写の一冊です。本の終わりのあたりでやっとシャラムドイ族に出会って話が変化します。自然の描写などはかなり細かく表現されているので、旅の様子はわかりやすいのですが、ちょっとあきてくる部分もありました。
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試練の時を終えてゼランドニへと旅立つ二人、と二頭と一匹
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この第4部が、いちばんどうでもいいんだよね……。
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シリーズ第四作目。旧訳「大陸をかけるエイラ」に当たる作品。上中下巻。