- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784835442488
作品紹介・あらすじ
「本書は、1917年の革命後、ロシアを支配した残忍で非人間的な政治体制にまつわる痛ましい物語である。」北極圏下の白海に浮かぶソロヴェツキー諸島は中世以来、ロシア正教の聖地であった。ロシア革命後の1923年から、ここに人知を超越した悪魔が住み着き、1929年までの16年間、絶滅収容所としてスターリンに利用されたのである。あらゆる拷問、虐殺の方法がソロヴェツキーで編み出され、やがてソビエト全土に癌瘍のように繁衍し、収容所群島の体を為していった。人類史上稀なる国家犯罪の詳密は、至妙な隠蔽により、今日現在に至るも、闇に葬り去られたままである。
感想・レビュー・書評
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ソ連で幾度となく行われた投獄の歴史と実態について、著者自身の経験を基にしたルポルタージュ。当時の民衆がどれほどふざけた理由で逮捕され、どういった拷問で事実無根の自白を迫られ、どれだけ不自由な監獄生活を送ったか、自身の経験や実際の記録を基にこれでもかと説明してくれる。
特徴として、妙に軽快な語り口とユーモアがあり、余りにも暗い事実とは裏腹に文体にはどことなく前向きさすら感じられる。文章が面白いのでどんどん読み進めることができるのだが、合間合間に差し込まれる生々しく凄惨な記録とのギャップに驚く。
まだ1巻しか読んでないのでこれは想像だが、強制収容所における最も凄惨な出来事に関しては本書ではまだ触れられていないと思う。それらに関して何が語られるのか、興味深いため2巻以降も読み進めようと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
太白
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三葛館一般 986||SO||1~6
元保健看護学研究科 松井和子先生 『図書館報 みかづら』12 (2009)より
『私は重い障害や進行性の疾病を持つ人々の辛さ、苦しさをなんとか理解したいと思い、当事者の語りや記録に関心を持ってきました。闘病記の著者は、大半がプロの書き手ではありません。内容が主観に偏ったり、表現に物足りなさを感じることも多々あります。その補完として小説やエッセイを意図的に読んできました。 “身体がこわい”、 “蛇の生殺しのよう”、“死刑の宣告を受けるような気持ち”などと表現する人たちの思いを理解したく、関連する本を探し求めてきました。中には重い障害を持つ人から薦められて読んだ本もありました。自宅に戻れず、施設で生活せざるを得なかった青年からぜひにと薦められた『収容所群島 : 1918-1956 : 文学的考察』もその一例でした。』
和医大OPAC → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=53239 -
まず一言目は読みにくい!(笑)
でもすごい本ですよ。ロシア革命時に行われた粛清に関することが書かれた本です。
作者自身もこの「群島」に送られそこで11年過ごすのですが、「ナチよりも酷い」と言わしめるほどの残忍な行いが生々しく描かれています。
これだけのことが行われたのにいまだにロシア内ではどうもあまり知られていないらしいと言うことにも驚かされます。社会主義の脅威というか、中国なんかを見てみても思いますけどこれが社会主義の本質といってもいいのではないでしょうか。
今のロシアとどう違うのかというと…残念ながらチェチェンに対してとか、自国で起こったテロへの対応を見る限りではこの教訓はあまり生かされていないように思えます。悲しい話だな。
いつも思うのはこういう時代になったときに自分はどうするのか。
この本にはいろんな卑怯な人が出てきます。卑怯で姑息で残酷な人が上層部から下位の人間に至るまでてんこ盛りです。そういう人のやってることを見るのイヤでイヤで仕方ないけど、こういう情勢で自分が理想の通りに動けるかというと全く自信がありません。
この本で一番胸に残った一文は
「最も強い愛国心は常に銃後にある」
です。
ちびっ子の時に読んだ仔馬物語の「一番重い罪は無知だ」と同じくらいの衝撃でしたよ。