- Amazon.co.jp ・マンガ (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784835453408
感想・レビュー・書評
-
「母さん、なぜ私を生んだの?」
虐待を受けながら育った娘は、ずっと自問していた――。
一度は自分を捨てた母に、父の死後引き取られ、ともに暮らすようになった照恵。
しかし、それは実の母親から壮絶な虐待を受ける、地獄のような日々の始まりだった。
やがて自らも母となり、やっと穏やかな生活を手に入れた照恵だったが、1本の電話が、彼女の封印してきた過去の記憶を呼び覚まし…。
虐待により踏みにじられた魂の再生を、曽根富美子が描ききった感動作。原作のその後を描いたオリジナル番外編『闇がひらかれるとき』、原作者・下田治美氏の解説文も収録した完全版。
常に金と男や宝石や服を貪欲に求め、娘の昭恵を小間使いのようにこき使い気に入らないことがあれば殴り蹴飛ばし罵倒した母親のトヨ子。
昭恵は、そんな母親から命懸けで逃げて、のちに夫になる裕司の胸に飛び込んで母とは絶縁した。
娘の深幸を愛し、深幸が健やかに育つ中で、胸の中でくすぶっていた怒りや疑問が形になる。
「母親なら娘が可愛いはず、なぜ娘を施設から引き取り育てながら、殴り蹴飛ばし罵倒したのか?」
生き別れていた弟が入院して再会したことをきっかけに、父と母の過去を昭恵は調べ始める。
母からもらえなかった愛や温もりを、隣人や父の親戚などから受け取り、母と自分の生き方や求めているものの違いを知り、精神的に親離れするまでの昭恵の魂の旅が丹念に描かれていて、心を揺さぶられた。
「私が選んで歩んできた道は母さんとは違う。あの日、母さんと決別して間違いなかった。自分のすべてを諦めないで良かった」
原作のその後の昭恵の母を描くオリジナル作品「闇が開かれる時」では、落ちぶれたトヨ子とトヨ子のヘルパーだった清田の「虐待する母」同士の交流と葛藤の中で、「どうして我が子なのに愛せないのか」「なぜ母なのに子供を殴ってしまうのか」という闇が掘り下げられる。
それは、「自分が幸せじゃないのに、子供の幸せまで考えられるもんか」「自分を不幸にした夫の面影を娘に見た時にこいつを叩きのめさないと自分が不幸になると思った」「価値観が違う夫の面影を次男に重ねて殴ってしまう」というトヨ子と清田の発言にあるように、自分の不幸や怒りを子供にぶつけてしまう闇、貧乏百姓の子沢山の末っ子で虐待され娘が生まれたら可愛がろうと誓っていたのに娘の昭恵をトヨ子は虐待してしまった負の連鎖、かすかな希望を感じるラストが心揺さぶられた番外編。詳細をみるコメント0件をすべて表示