- Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
- / ISBN・EAN: 9784835591520
作品紹介・あらすじ
スコットランドの自然を舞台に死者の魂を色白の美しい人として見ることのできる少女が語る。神秘的で幻想的な物語。本当の意味での人間になれますようにとのバーネットの願いが随所に溢れる、心温まる作品。
感想・レビュー・書評
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『小公女』や『小公子』を書いたバーネットの作品。
児童文学のようで大人向けの物語でした。
見えない人々が見えてしまうヒースの中の城に住む少女と彼女を見守る二人の大人、後にロンドンで出会い少女と深く結び付く母と息子の五人が主な登場人物。
『恐怖』と文中にはある根源的な畏れや人間の在り方をヒースの美しい世界や庭園で語る人々の姿は重いテーマでも読みやすく、夢を見ているような心地で読めました。 -
翻訳者の砂川さんが20年以上も前から縮小された抄訳を愛読していて、ずっと完全版を読みたいと思っていたけど、原書はもう出版されていず手にはいるのをあきらめていたそう。なので、この本が翻訳されたいきさつは、とても奇跡的。その奇跡の、おかげで、たくさんの人が、こんな素敵な物語があること知り、読むことができているんだと思うと、すごいことだなと思った。
物語は荒野の中のお城の相続人である若い女性が、人々が退屈するような土地や自然を愛して日々を楽しく暮らしているのだけど、彼女には他の人とは違う能力が備わっている。普通だと少し怖いと思うかもしれないけど、主人公の純真さや主人公を取り巻く人々の思いやりの心が素敵で、とても美しくて、不思議なやすらぎを感じられる物語だと思った。 -
静かな感慨…。
バーネット夫人がこうした作品を書いてくれていたとは、ねぇ。
フランシス・H・バーネット、『小公女』『小公子』『秘密の花園』でおなじみのバーネット夫人の幻の名作が完訳されていたと、最近知りました。
人里離れたスコットランドの自然の中で、死者の魂を色白の人として視ることができる少女が穏やかに語る幻想的な物語。
人生について深みのある内容を、あくまで平明な文章で、客観的に語ってくれます。
主人公のイゾベルは幼くして両親が他界した後、幸いにも賢明な人物であったジーンとアンガスに囲まれ、その希有で繊細な魂が守られ育ったという感じ。
ところで、つまり、イゾベルはクレアボヤント(透視能力者)ですね。
実は、この作品自体が大変“スピリチュアル”(この言葉、昨今、巷で溢れていてあまり好きでないけど)で、読んだ時は新鮮な驚きがありました。
私の愛読書であった一連のバーネット作品と繋がっていく嬉しさも。大人になって完訳でそれぞれ読み返してみた時、バーネットの児童文学は物語の面白さだけでなく、人生についての深い洞察が垣間見られたことを感じていました。
そしてこの『白い人たち』には、偶然はなく、すべての物事は自分自身が引き寄せているという哲学、また、いわゆる“ワンネス”(全てのものは一体である)だったり、体外離脱に近い、そうした言葉に表わしにくい感覚が美しく描かれているのです。
また、一般的に、人が未知のものとして“肉体を離れる死”を怖れと捉えがちなのに、イゾベルは怖れる必要のないことを“知っている”のです。
でも、実際のわたしは、好奇心からあれこれ知りたがるような子どもではありませんでした。わたしは、すべてのものを、ただあるがままに受け入れたのです。 第一章 最後の部分
まさに、すべてのものをただあるがままに受け入れられたら…
人生も世界も大きく変わることでしょう。としみじみ思うのでした。
※追記:
後で、原書を試し読みして気がついたのですが、作品の冒頭の部分にある献辞が、翻訳本には載っていません。(載せてほしかったな)To Lionel (ライオネルに献げる)と始まる四行詩ですが、このライオネルというのは、バーネットの15歳で病死した愛息のことのようです。つまり、この作品には、登場人物を通じて、作者の思いも色濃く反映しているのですね。
これも蛇足ながら、バーネット自身は児童文学作家であるつもりはなく(子ども向けにも書いたが)、小説家として書いていたようです。2004年に出たという彼女の伝記(The Unexpected Life)も読んでみたいな。 -
訳がよみにくい・・・