働き方―「なぜ働くのか」「いかに働くのか」

著者 :
  • 三笠書房
3.80
  • (194)
  • (268)
  • (226)
  • (45)
  • (9)
本棚登録 : 2695
感想 : 271
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784837923107

作品紹介・あらすじ

「平凡な人」を「非凡な人」に変える。人生において価値あるものを手に入れる法。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「心を高める」ために働く。
    前書のテーマ"なぜ生きるのか?"に次ぐ命題。
    人生の大部分を占める仕事、働かずに幸福はないだろう。確信できる。
    そして、すべての根源にあるのは、「思い」であり「考え方」。
    非凡な男を生んだ、究極に平凡な成功哲学。

    ⚫︎安楽が心地よいのは、その前提として、労働があるからに他なりません。

    ⚫︎三毒「欲望」「怒り」「愚痴」
    肉体を持った人間が生きて行くために必要な心、しかし、それが過剰になってはいけない。
    毒素を薄めるように努めていかなければならない。
    その唯一無二の方法が働くこと。

    ●仕事に「恋をする」
    恋をしている人は、他人が唖然とするようなことを平然とやってのける。
    「惚れて通えば千里も一里」

    ●「潜在意識」に浸透させる
    思わなければ何も実現しない。でも「できればいいなあ」ではなく、真剣に強い持続した思いを持つこと。
    必ず実現する。

    ⚫︎「こうありたい」と夢を描いたら、四六時中考え尽くし、成功のイメージが克明に「見える」ところまで持っていくこと。(まず終わりを思い描くことからはじめる・すべてのものは二度つくられる)

    ⚫︎成果=能力×熱意×考え方
    0≦能力≦100 知能、運動神経、健康など
    0≦熱意≦100 努力
    -100≦考え方≦100 最も大切な項

  • 稲盛さんの京セラフィロソフィの中で、働き方のエッセンスを取りだしたもの、と言えばよいだろうか。この本自体はそれほど長いものではなく、また稲盛さんの本や教えを知っているものにとっては、その内容も新しいものではなく、一度は聞いたことがあるものも多いだろう。おそらくは、この本だけを読んだ場合、まさに昭和の働き方だと批判的に読む人も少なからずいるだろう。社員のやる気を搾取し、長時間労働を強いるものであり、終身雇用を前提とした古い考え方だ、と。いや、そうではないというのであれば、それはとりもなおさず、この考え方を社員に納得させるために、経営者の考え方と行動が問われる、ということになろうかと思う。

    しかし別の見方をすると、改めてこの本を読み、社会学の古典『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』でマックス・ヴェーバーによって主張された、資本主義の発展を可能にせしめた天職に奉じるプロテスタントの倫理精神と、京セラフィロソフィとの間の論理的な親和性を感じるのである。
    以前『心。』を読んだときも、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』との強い類似性を見たとそのレビューで書いた(https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4763132431)。働き方を論じる本書は、さらによりストレートに『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』と京セラフィロソフィとの相似関係についてその正当性を確認することができるはずである。

    本書で稲盛さんはまずこう宣言する。
    「人間は、自らの心を高めるために働く ― 私はそう考えています」
    決して、仕事の最終目的は、生活のためではなく、世の中のためだけでもない。仕事を通して自らが神に選ばれたことを証明するかのごとく仕事に取り組めということと同じではないか。それを支えるのがプロテスタントの教えなのか、フィロソフィの教えなのかという違いでしかない。

    決して、好きなことを仕事にしなさい、や若いころは色々な仕事を経験しなさい、などとは言わない。
    「自分の好きな仕事を求めるよりも、与えられた仕事を好きになることから始めよ」
    と言い、そうすることで、
    「なかば無理に自分に強いて始めたものが、やがて自分から積極的に取り組むほど好きになり、さらには好きとか嫌いとかという次元をはるかに越えて、意義さえ感じるようになっていったのです」

    「仕事は仕事、自分は自分」ではなく「自分は仕事、仕事は自分」というくらいの不可分の状態を経験してみることが必要です。言ってみればブラック企業の心意気ですが、そういう状態に自ら進んでなるようになりなさいというのである。そして自ら燃える自然性の人間になれと説くのである。

    さらに何とヴェーバーが資本主義の精神の鍵だと言った「天職」という言葉を、稲盛さんもまさに仕事がそうなるべきものとしてその言葉を使うのである。
    「「天職」とは出会うものではなく、自らつくり出すものなのです」

    稲盛さんは、この本の中でヴェーバーの出身国でもあるドイツの領事から次のような言葉を聞いたことを紹介している。おそらくこの領事はプロテスタントではなかっただろうか。
    「労働の意義は、業績の追求のみにあるのではなく、個人の内的完成にこそある」

    稲盛さんは次のように続ける。
    「一方、人類に近代文明をもたらした西洋の社会には、キリスト教の思想に端を発した、「労働は苦役である」という考え方が基本にあります。聖書の冒頭にあるアダムとイブのエピソードを見ても、それは明らかです」
    たしかにカソリックの国ではそうなのかもしれないし、カソリックで資本主義が発展できなかった理由がそこにあるのかもしれない。一方でプロテスタントの国では、ルターの聖書解釈によって導入された「天職」の概念によって、労働への献身こそが神の恩寵に預かることを確信させることとなったから資本主義が発展したのだというのが『プロ倫』の論理である。

    それでは、なぜ自らの仕事を「天職」と思い込んで、深いレベルでのコミットメントを行う社員をメンバーとして持つことが、企業として成功することにつながるのだろうか。この本の中ではいくつかその理由が挙げられている。

    「寝食を忘れるほどに強く思い続け、一日中、そのことばかりをひたすら繰り返し考え続けていくと、その思いは次第に「潜在意識」にまで浸透していきます」
    常にそのことを考えることで、今風に言うとセレンディピティが起きることがある。それは偶然ではない。意識にのぼらないところでも感覚器官は多くのものを拾い、脳は意識よりも多くのタスクをこなしている。潜在意識に仕事を埋め込むことで、よいアイデアが浮かぶのは当然の理だ。それが、他社との違いになることも当然あるだろう。

    また、その仕事を天職として、「誰にも負けない努力をする」ことを自らに課すべきだという。
    このことは、たとえばいい服を買いたい、おいしいものを食べたい、老後の心配をなくしたい、といったものは動機ですらなくなることを意味する。なぜなら際限のない努力をするべきであり、それ自体が目標となることで、他社以上の成果を生み出すことができる。その論理はまさにヴェーバーが、二重予定説および天職概念によって信者が自ら進んで際限のない資本形成の努力を果たしたということと結果側からみると相似のものだと言ってもいい。

    仕事に完璧を求める「完璧主義」もその論理に沿って考えるとしっくりとくる。無理だと思えるような高い目標を置いて努力すること、徹底して誰にも分らないような細部にこだわることが、京セラフィロソフィにおいては個人の内的完成につながり、18世紀のプロテスタントにとっては神に選ばれたという確信につながったのである。そして、その完璧主義は、その組織の成功にもつながっていくのである。

    同じく「継続主義」についても、手を抜かない、諦めないというエートスを形成し、そのメンバーが所属する組織の発展を約束したことだろう。

    最後に、「正しい考え方」として稲盛さんが挙げたものを並べてみる。教会に飾ってあっても違和感はない。
    - つねに前向きで、建設的であること
    - みんなと一緒に仕事をしようと考える協調性を持っていること
    - 明るい思いを抱いていること
    - 肯定的であること
    - 善意に満ちていること
    - 思いやりがあって、優しいこと
    - 真面目で、正直で、謙虚で、努力家であること
    - 利己的ではなく、強欲ではないこと
    - 「足るを知る」心を持っていること
    - 感謝の心を持っていること

    世界において「正しい」考え方というものがあるのかはわからない。しかし、上記の考え方を軸に据えた経営をした結果として、小さなベンチャをグローバルな大企業とし、圧倒的不利な条件での規制産業への新規参入を成功させ、一度は破綻した航空会社を短期間で立て直したのである。

    それを宗教という必要はない。フィロソフィの背後にある、半ば意図し、半ば意図しない『プロ倫』で示された論理の一致についてはとても興味があるのである。

    ----
    『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(マックス・ヴェーバー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4003420934
    『心。』(稲盛和夫)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4763132431

  • 友人から借りて読みました。

    稲盛和夫さん、本当にすごい人です。
    『生き方』や『京セラフィロソフィ』など名著がたくさんあり読みたいと思いつつも、本書を最初に手に取ることとなりました。

    「働き方」について、特に若者のそれについて書かれています。
    稲盛さんの持論を聞くと
    もしかしたら、ある意味「奴隷的思考をしろ!」というような一種の洗脳と捉える人もいるかもしれませんね。
    稲盛さんが言いたいのはきっとそういうことではなくて、それが自分自身を救うことになるということだと思います。
    うーん、意図せずして宗教っぽい言い回しになってしまうのは、僕の文章力不足です。

    この人の生き方は「人事を尽くして天命を待つ」そのもの。
    見習いたい部分が多くあります。

    是非、他の著書も読みたいです。

  • 松下幸之助氏の日々是新、ルータイスのコーチング・コンセプト、エリックリースのリーンスタートアップと同じことを言っている、究めた人が思う真理は同じということなんだろう。

  • 『生き方』の内容に近い
    冒頭で稲盛さんの入社直後の働き方や考え方、経験は体育会のような精神論的な要素を強く感じた。しかし、その心意気は自分としては大切にしたいし、そういった気概を稲盛さんが持っていてさらに成果を上げたことについては自信になるし安心できる。経営者なのに泥臭い仕事の仕方するなと感じた。

  • 前半半分は正直つまらなかった…
    真剣に働くことの大切さは自分としてはわかっていると思うからである。


    しかし、後半からこの本を読んで良かったと思わせてくれた

    理系のスーパービジネスマンの働き方に関する本は読んだことがなかったので、開発における働き方・心構えといったものがよく伝わってきた。
    今研究している中で感じる点と比較しながら後半を読んだが、自分はまだまだまだまだ未熟であることを感じ、それをどう改善していくべきかも見えたので大変感謝している



    それにしても、全体を通してこの人のワークスタイルが大好きだほっとした顔
    こうありたいと思わせてくれた初の理系ビジネスマンである

  • 誕生日にもらった。そんなに働くの楽しそうに見えなかったかしら笑
    とか思ったけど、中身読むと結構面白い。稲盛さんて研究畑の人だったんだねー。研究家肌なのをしっかり見てくれていたからこの本をくれたんだろうきっとそうだ。
    そういう意味では『日々の成果に喜ぶ』みたいな話はバランス感覚があるなぁ。と。完璧主義って悲観的に足りないところに目が行きがちな考え方な気がするし。こういうところはイイネ!
    全体見ると支離滅裂な感は否めない(足るを知る完璧主義ってなんだ)けど、それらを『一つの思想である』って捻じりまとめあげるパワーが経営者っぽい考え方のんだろうなぁ。よく言えば清濁併せ呑む…かな。
    冒頭の働く意味みたいな話は申し訳ないけどあんまぐっと来なかったです。良い意味で思考停止というか…

  • 彼の会社の設立者、稲盛さんの本。素晴らしい方だと話を聞いていたので、セレクトしてもらい読んでみました。

    この本は、社会人一ヶ月目で日々の忙しさを言い訳に、仕事をこなすことだけに精一杯になっていた私に、仕事に対する意識の持ち様を考えさせてくれました。

    数ある名言の中でも一番心に残ったのは、「願望を潜在意識に浸透させる」という言葉。こんなことがしたいな、あんなことができたらおもしろいな、あの人に会いたいなという一時の思いでも、思い続ければそれは自分の心の奥深くに宿る潜在意識となって、その実現を後押ししてくれるということ。

    高校時代に「願わない夢は叶わない」と聞いたけど、似ているかも。強く実現を願い続けることが大事だね。

    もう一つ。結果が出なかったときは、「神様にお祈りできるくらいまで頑張った?」と自分に尋ねてみようと思います。「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるように、天命を待てるくらいまで頑張ったのかと。そうじゃなければ改善策が考えられるはずだから。

    …と書くのは簡単だけど、すっごくきついと思います。今の私に出来ることは、大きな目標や夢を探しながら、小さな目標や夢の達成を積み重ねていくこと。心折れそうになったときは、本に付箋を貼った部分を読み返してみようかなと思います。

  • 内定者?の頃に会社からプレゼントされた本。13年ぶりに読み返した。

    仕事への熱量がとても伝わってくる本だった。

    地味な努力を厭わずに積み重ねる「継続する力」の重要性を再認識した。
    自分が置かれた環境をネガティブに捉えて、卑屈になり、恨みつらみを募らせるのではなく、困難な要求を自分を伸ばしてくれる機会として、ポジティブに受け取るようにしたいと感じた。

  • 面白い

全271件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長に就任。84年、第二電電(現KDDI)を設立し、会長に就任。2001年より最高顧問、2010年には日本航空会長に就任する。代表取締役会長、名誉会長を経て、15年より名誉顧問となる。84年、稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰している。2022年8月逝去。その他著書に、『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』『稲盛和夫のガキの自叙伝』『高収益企業のつくり方』『人を生かす』『従業員をやる気にさせる7つのカギ』『成功への情熱』『生き方』等がある。

稲盛和夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ロバート キヨサ...
J・モーティマー...
稲盛和夫
ロンダ・バーン
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×