「今の中国」がわかる本 (知的生きかた文庫 し 36-1)

著者 :
  • 三笠書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784837976165

感想・レビュー・書評

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  • 中国人の著者が、中国という国や人々の文化・考え方を中立な視点で説明した本。日本で出版されている中国説明の本は、どうにも反中・嫌中がベースになっていて、中国を侮辱するか中国に対する驚異を過剰に煽り立てている本が多いが、本書は著者が中国人であるため非常に冷静に中国と中国人を分析している。それでいて、中国びいきになっていないところが好感が持てる。マスコミで語られているような中国に対する偏見を自分の頭から払拭するにはとても良い1冊。

  • 日本と中国の関係を客観的に見るためには
    まず、アメリカと中国の関係を 見る必要がある。
    アメリカと中国は 対立しているのか 提携しているのか。
    中国は 外貨準備高が 日本よりこえ、
    その上、アメリカ国債も 3000億ドルほど保持している。
    少なくとも 経済共同体に 近い関係になっている。

    ソロスが香港ドルを売ろうとしたとき
    朱鎔基は アメリカ国債を売るぞと脅して、
    アメリカよりソロスの行為をやめさせた。

    1900年 義和団事件 の清朝の賠償金について
    アメリカは 4870万円の賠償金をもらった。
    アメリカは 軍隊派遣費用とそれぞれの賠償を差し引いた
    1670万円を 返還した。そのお金を 中国にアメリカ留学予備校
    清華学堂を設立。この学校が 精華大学となった。
    ⇒アメリカの長期的な戦略には恐れ入る。

    三和主義
    和諧社会、国際社会への平和的台頭、台湾との平和的統合

    鄧小平のすぐれたことは
    社会主義市場経済 一国二制度 経済特区を発明したこと

    『中国人には、ルールは人間が作ったものであり、場合によってはそのルールを変えることも容易にできる。』事実求是という考え方。
    『規定されていないということは禁止されていないわけだから、実施しても問題ない。』
    『中国人は、日本人から着た手紙は最後の部分だけ読み、アメリカ人から着た手紙は冒頭だけを読む。』
    『日本人は会社に対して忠誠心が強いが、中国人は会社に対して忠誠心が弱い。』
    優秀な中国人の不満は『働きにふさわしい報酬や重要なポストがあたえられない』
    意思決定システムが 中国はトップダウン、日本はボトムアップ。
    『中国は過去を忘れる姿勢が必要。日本は過去を忘れない姿勢が必要。中国側が未来志向。日本側が歴史認識をもつ。』
    『中国は 農民革命の歴史があり、群衆が集まり、何らかの抗議をする際には、つねに暴力が伴うという伝統がある。』
    『北京人は愛国、上海人は出国、広東人は売国』

    中国の歴史について 素描されているが
    池上彰の本のはうが、背景までまとまっている。
    沈才彬の基本的なスタンスはあまり悪くいわないということだ。

    1996年 知的所有権をめぐる第1回米中交渉が北京で開かれた
    アメリカ代表のバーシェフスキ通商代表は
    『本日我々は泥棒と交渉します』といった。
    中国代表の呉儀は、『いや。我々は本日強盗と交渉します。製紙、印刷、羅針盤、火薬など、世界史上の4大発明はいずれも中国によるものであり、アメリカをはじめ西側諸国は今も我々の発明を使い続けている。にもかかわらずライセンス料金を一銭も支払ってくれなかった。つまり強盗行為じゃないか。』

    ビルゲイツは 胡錦濤に親書を送った
    『中国ではコピー商品が横行しているが、最大の被害者はアメリカではなく、中国自身である。』

    日本車の人気の秘密はブランド力、品質、省エネルギーにある。

    中国には4つの格差パワーがある。格差はパワーを生み出す。
    1 先進国との格差
    2 国内の富裕層と貧困層の所得格差
    3 農村部と都市部の経済格差
    4 内陸部と沿岸部の地域格差

    中国の三つの不安
    投資の過熱(不動産投資の過熱、インフラ投資、設備投資)鉄鋼、自動車、セメント
    融資の過熱(不良債権の増大、さらに融資することで不良債権の額が小さくなる)
    マネーサプライの過熱

    中央政府と地方政府の対立
    地方政府「自分たちは豊かになっていないのにどうして経済成長を抑制するのか」
    『地方で実績をあげて、中央に進出する』
    一番手っ取り早く儲ける方法が 土地開発。
    バブルはいつはじけるのか。

    共産党幹部の腐敗。政府の「府」と 贈り物の『肉』が 腐敗である。
    共産党をチェックする機能がない。
    マスコミのチカラ、司法のチカラ、など。
    公務員の給料が低すぎることも大きな問題となる。
    役得を考えざるを得ない。

    経済の自由化の次に 政治の民主化がすすむ。
    年間 一人のGDP 3000ドルをこえると 民主化要求が高まる。
    吉田茂はいう
    『デモクラシーは富める国の産物、デモクラシー実現のためには、まず国民を食べさせ、国民に職を与え、その生活の安定向上を図ることが肝要なり』

    今後の展望
    エネルギーと資源を爆食する 中国型成長方式の転換
    日本の出番は
    省エネルギー技術、環境保全技術、農業における高い生産技術

    中国政府のジレンマ
    土地所有権の問題 農民は使用権だけでは満足できない
    工業化都市化と農村弱体化のジレンマ
    2030年には レスターブラウンが 食料危機をいっている。
    人口増加、食肉、タンパク質の需要の増加、農地の減少。
    バーチャルウォーター から 水不足
    フードマイルからの 視点

    農業問題に関しての提言
    1 日本の最新農業技術の導入、生産性の向上
    2 中国の若手農業経営者を育成する。
    3 砂漠化の拡大防止のための日本の技術の導入
    4 水不足解消技術、汚水処理技術、海水淡水浄化技術
    5 種苗から 生産、加工、流通、販売までの 一貫したシステム。

    全体として よくまとまった 中国ビジネスの展望となっている。

  • 本書は前回の指導者交代時期に書かれたものである。
    尖閣諸島国有化に端を発した中国での官製暴動や、薄熙来にまつわるゴタゴタを見てしまった今となっては、著者の中国弁護の主張には空々しく感じる部分も多い。
    ともかく中国人を日本人が心底から理解するのは不可能だと感じた一冊である。お互いあまりにも違いすぎる。

  • 【感想】
    筆者が、日本のことも中国のこともよく分かっている人なので、中立的で、とても納得しやすい内容でした。

    ○ダメな日本人、いい日本人
    日系企業では努力が評価に結びつかないことが多いため、有能な人材は欧米企業に流れてしまうそうです。中国に住む日本人の偉い人は、中国人に好かれていない、というのはよく聞きます。日中の部長クラスを比べたとき、多くの中国人は、中国人の部長の方が有能だと答えるそうです。(ちなみに役員クラスになると、日本人の役員の方が有能だと答える人が多いそうです。)

    ○中国の政治家は、頭がよい
    中国の政治家は長いスパンでものごとを考えています。もちろん賄賂はいけないし、隠蔽気質なところもよくないけれど、民主化はまだ難しいというのも何となく分かります。民主化の過程で経済成長に悪い影響が出たら、元も子もないからです。

    ○お互い、仲良くした方が絶対に得
    皆がそうだという訳ではないけれど、マナーが悪くて、偽物を売っていて、嘘をつく中国人を見かけると、本当に嫌な気分になります。でも、この本を読んで、中国という国や、中国人を尊重しよう、という気持ちを持つことが出来ました。「お互い、仲良くした方が絶対に得」ということもよく分かりました。

  • ・8/11 読了.並行して中国のデータ本も読んでるが、こちらは外国との繋がりに焦点を当てて書かれているのが興味深い.リスクを指摘して危機感を煽るのも気持ちは分かるが、具体的にどのような策が有効かや、どのように中国政府に働きかけたらいいのかなどの具体的指摘に欠けるような気がする.まあそんなに簡単に解決するような軽い問題でも勿論ないし、簡単に方向転換ができるような小さな国ではないのも理屈では分かるが.

  • あとがきに中国の「日本製品不買は誰のためにもならない。多くの製品はメード・イン・チャイナであり・・不買し・・日系企業が破綻すれば、数百万人の失業者が出て・・中国は大きな被害を受ける・・」経済がグローバル化している現在は自国だけ安泰というわけにはいかない、隣の中国が風邪をこじらせると日本も当然風邪ひきさんになるわけだ。

  • もっと詳しく書いてほしいと思った。というか各章の小見出しについてだけで一冊本が書けるのでは?という感じのものが多かった。
    つまり内容薄いと。。。
    けど、今の中国の状況を概観するのには役立った。

  • 中国の歴史をわかりやすく学ぶことができた。

  •  ウォーリー所有。6月1日購入。最近、アジア圏に興味があり、インド本とあわせて買ってみた。

  • 今の○○がわかるシリーズ第一弾

    二桁成長を続ける中国について知ることはどんな分野でも無視できないだろう。

    本書は、中国の現状、日本と中国の違い、この100年で中国に起きたこと、今後10年の中国、中国の問題点などについて概略をまとめている。

    成長のひとつの分岐点ともいわれる2010年、都市部、農村部での格差、三農問題、汚職問題などについてひとつでも微妙な点があるなら読むことをオススメします。

    著者も述べているように中国の成長はすさまじい勢いなので常に情報を更新し続ける必要があると感じた。

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著者プロフィール

(しん さいひん) 多摩大学大学院フェロー。株式会社中国ビジネス研究所代表、中国ビジネスフォーラム代表。1944年、中国江蘇省海門市生まれ。81年、中国社会科学院大学院修士課程修了。三井物産戦略研究所中国経済センター長を経て、08年4月より多摩大学・同大学院教授。15年4月より現職。主な著書に『中国の越えがたい「9つの壁」』『大研究! 中国共産党』『今の中国がわかる本』『検証 中国爆食経済』『中国経済の真実』など。

「2018年 『中国新興企業の正体 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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