pink (MAG COMICS)

著者 :
  • マガジンハウス (1989年9月28日発売)
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838701070

感想・レビュー・書評

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  • 昼はOL、夜はデリヘル嬢のユミちゃん。ペットはワニ。

    色々と無茶な設定だけど、あっけらかんとしたユミちゃんが可愛くて引き込まれます。作家の卵のハルヲもだめんずだけど、なんか可愛い。

    「ヘルタースケルター」よりも、こっちの方が好きだなぁ。

  • ワニを飼う女の子・ユミを通して描く愛と資本主義をめぐる冒険と日常。

    初めて読んだのは高校生の頃だった気がする。昼はOLで夜はデリヘル嬢、継母と険悪で、ワニ飼ってる…その他諸々の設定にしてもストーリーにしても当時大変純情だった私には刺激が強すぎて、とんでもない漫画を読んでしまったと思った。

    それから早幾年。久しぶりに手にとると、設定も内容も相変わらずパンク。挑戦的で、勢いと我のかたまりで、一本筋が通っていて、ブッ飛んでいる。その真ん中にいるユミちゃんも相変わらずブッ飛んでるけど、以前よりずっと愛せるようになっていた。
    好きなものに囲まれて、好きなものに囲まれるために仕事して、好きなひとは好きでいる。それだけ。時に周りに毒を吐きながらも、素直で揺るぎない価値観を持った彼女がかっこ良く見えた。
    スピード感のある内容は多くの別れとともに突然終わりを迎える。
    でもユミちゃんは今もきっと、カバンひとつ抱えて気の向くままにたくましく生きていそうだと思った。

  • 愛と資本主義のために堕落してしまったユミちゃんの物語。救いがないのにあっけらかんとしていて余計に辛い。

  • ホラふきだけど決して自分に嘘はついてないユミちゃん。ユミちゃんのようになれたら、もう本なんて読まなくていいのかもしれない

  • ワニ大好き

  • 岡崎京子さんの作品『pink(1989)』を読了。

  • 作者の絵が上手い下手で賛否両論分かれがちだが、このある意味で現代を風刺する、底抜けに明るく愚かで、痛ましくもおかしい話に、ゆるゆると脱力した線はよく合っている。
    欲しいものは欲しい、手に入れる為なら体を売ることも辞さない。昼はOLとして商社で働き夜はホテトル嬢としてカラダを売る主人公は、自宅で飼うワニに愛情を注ぐ。
    ワニは肥大する物欲のメタファーであると同時に、けっして満たされない渇望を象徴している。
    後半でワニのモノローグが挿入されるのだが、ワニもまたふるさとへの郷愁に駆られ、常にここではないどこかを求め続けている。

    ワニのように貪欲な主人公を取り囲む家庭環境は複雑だ。反りの合わない継母と天衣無縫な義妹、母は嫌いだが妹は好き。そこへ母親のヒモが現れ、妹も加わった奇妙な共同生活がはじまるのだが……
    特に印象的なのはラスト近く、OL仲間とカフェでお昼をしていた主人公の言葉。
    欲しいものはなんとしても手に入れなきゃ気が済まない彼女は、ある意味では足るを知り、自分の身の程をわきまえた友人へ凄まじい怒りと反感を抱く。
    彼女が本当に欲しかったものは何か。幸せといってしまえば短絡だ。居場所といってしまえば安っぽい。
    彼女が本当に欲しかったのは、言葉にできない何か、よるべない自分が依れるリアリティだ。
    ヒモと義妹が共同制作した寄せ集めの切り貼りが、「小説」として立派な賞をとってしまうように、彼女たちのアイデンティティはすかすかだ。
    世間の評価なんててんであてにならない、外側さえ辻褄が合ってれば一人の人間として認められてしまうもどかしさ。
    明るく笑えるシーンもたくさんあるのだが、そのくせ乾いた諦観が漂っている。
    誰も彼もが誰かを妬み何かを欲しがり決して満たされることがない、今の世の中では誰もが虚無を食べるワニだ。

    結局彼女は何も手に入れられなかった。
    やっと手に入れたと思ったしあわせは夢と消え、だが空港で薔薇色の未来を夢見る彼女はそれを知らない。
    ここで切るのは非常に憎い演出。
    未完成のまま放り出された小説のように、リアリティのないリアルを生きる彼女もまた、白昼夢のような現実のただ中に放り出された。
    実の母の言葉を忘れられないまま大人になった彼女は、心のどこかで「永遠」も「王子様」も信じていたのかもしれない。
    そんなモノどこにもないのにどこかにあるかもと期待して、それが報われず渇望に変化しなお探し続け欲しがり続けて、どこまでも転がり落ちていく。

    ワニは肉食だ。
    ピンクの薔薇では腹はふくれない。

  • “愛と資本主義”

  • わがまま娘なユミちゃんが可愛くて可愛くて惹かれる物語だった。ああいった仕事をしていてもあっけらかんとしているのは、きっと相手も愛だとか優しさを求めている人間たと言うことを知っているからだろうね。だから行為中クズみたいな相手であっても仕事として扱って穏やかでいられるんだと思う。寛容すぎる心を持っているのかなぁ。

    あと、幸せを目の前にして結末が辛い未来になりそうで読んでいて辛かったのだけど、でも見えていない未来は好きなように予想して良いと思うのよね私。事故によりユミちゃんの夢は遠のいてしまい、ハルヲくんは全身打撲と内臓の損傷で危ないながらも生命に別状は有りませんでした。しかし問題なのは週刊誌に振り回される日常なのでした。人の噂も七十五日とは言うものの週刊誌の興味が薄れても人はネチネチと無意識に他人を追い込む物なのです。それをも屈せず軽やかに生きるユミちゃんをみてハルヲくんは惚れ直すのでした。チャンチャン。で良いと思う(*´-`)

  •  ヘルタースケルターで岡崎京子さんに興味を持って、なんとなーく古本屋で買った『pink』。

     主人公は、昼はOL夜はホテトル嬢として働くユミちゃん。ユミちゃんの人間性の壊れ方がなんだか読んでいて心地よい。
     妹と一緒に煩く喚くトイプードルをワニのエサにしちゃったり、「部屋をジャングルみたくしちゃおう」という思いつきで熱帯植物を部屋に溢れるほど買ってきちゃったり、そういう直情的すぎる性格は、どこまでもピュアで、でもそれって大人としては欠陥でしかなくて…。
     しかしその欠陥が作中で指摘されるでもなく、そのまんま社会に適合してしまっている歪さもこの作品の魅力だと思う。

     本当は、適合出来ていないのかもしれないけど。
     だから渋谷の街中で、
    「だれかあたしをたすけて おねがいです」
    になっちゃうのかもしれないけど。

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著者プロフィール

著者経歴 80〜'90年代を代表する女性マンガ家。既存の「少女マンガ」ではない、リアルなセックス描写80〜'90年代を代表する女性マンガ家。既存の「少女マンガ」ではない、リアルなセックス描写と巧みなセリフ回しで、愛や暴力、トレンド&カルチャーが描かれたマンガを生み出してきた先駆的存在。『ヘルタースケルター』で2003年文化メディア庁マンガ部門優秀賞、'04年手塚治虫文化賞・マンガ大賞受賞。主な作品に『pink』『ジオラマボーイ☆パノラマガール』『リバーズ・エッジ』『エンド・オブ・ザ・ワールド』など。


「2015年 『恋とはどういうものかしら?新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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