- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784838706136
感想・レビュー・書評
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図書館で探した高野さんの作品
1995年第1刷 2007年第14刷分
出てくる人たちは丁寧に生活していて多くは主張せず、笑顔の中に寂しさ、郷愁を帯びた普遍的なものが併存。独特な構図、カット割り。男性の特徴的な眉毛をじっとみてしまう。穂村弘さんが体調を万全にしてから高野文子さんの作品を読むというのはわかるような気がしないでもない。
『美しき町』1987年作で、想定している30年後の自分たちへのメッセージがさりげなくずっしりくる。
お稲荷さんのお社の裏の風景。
『東京コロボックル』の肩の力抜けた共同生活憧れる
『奥村さんのお茄子』何度か読み返して混乱しながらも引き込まれる。お腹がすいてくる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一生読める一冊。
『美しき町』を読書灯のあかり一つ、寝床で読んでいたら静かに胸をつかまれた。
妻が風呂に入っている。
その湯桶がカランとぶつかる音を聞きながら、奥歯を噛みしめる。
特になにが起こるわけでもないのに、熱いものがこみ上げてきた。
八月一日。
地元の大規模な花火大会がある日。
同じアパートに住むご近所の奥さんがこの漫画を貸してくれた。
出産予定日を間近に控えた大きなおなかを抱えながら、それでも昨日まで働いていたそうだ。
パワフルでアクティブな奥さんは、産休に入るも嬉々として古本屋巡りをして、この『棒がいっぽん』を購入。
以前、僕が高野文子に興味があるといったのを覚えていてくれて、ビニールコーティングされた未開封のそれを手渡してくれた。
ひとくちに漫画と言っても、高野文子はそのメソッドが違う。
どちらが優れているというわけではないが、例えば『ジャンプ』漫画をハリウッド超大作映画とするならば、『美しき町』は日本映画のマスターピースだ。
一組の男女がお見合いで出会って結婚する。その平凡な日常。
ふたりで赤い鳥居のお稲荷さんにいって、お社の裏に回る。
そこから広がる景色に、読者も「うわぁ」と声が出るはず。
『病気になったトモコさん』のオブラートが風に舞うシーンにも、『バスで四時』のバスのなかでぼうっとして意識が宙に浮いている描写にも「うわぁ」となる。
現実と意識の狭間のあいまいな部分を、ふわっと飛んで一瞬だけ止まったトンボを「今だ!」とつかまえるみたいに、紙の上に定着させる感性が素晴らしい。
『私の知ってるあの子のこと』では自分の子供時代を思い出すと共に、隣で大胆な寝相で眠っている我が娘を見ながら、愛おしさで胸が苦しくなった。
かと思えば『東京コロボックル』の奇想。
東京で暮らす小人たちの都会的な佇まいと優雅な生活におもわず吹き出してしまう。
そして白眉は『奥村さんのお茄子』
お茶の間でサイバーパンクSF!!
なにがなんだかわからないうちに引きこまれ、時間と空間と人生の不思議の一端に触れるような感動のラスト。
この作者は天才だと思った。
八月一日の夜は、漫画を貸してくれたF田さんの御宅にご近所六世帯が集まり、みんなで花火を観た。
古くからの高級住宅街の狭間にある格安物件の我がアパート。
高台にある絶好のロケーションで、この一日だけで充分家賃の元は取っている。
カメラマンやミュージシャンやDJ、メイクアップアーティストにサーファー。さまざまな人達が集うなかで僕ら平凡な一家族も一緒になって楽しむ。
高野文子の漫画を貸し借りできるご近所付き合いなんて本当にありがたい。
借りたお皿を返すついでに、この漫画も返しにいこう。
親戚から箱で送ってきた新鮮な桃をそえて。
そして自分用に一冊『棒がいっぽん』を買おうと思う。-
jyunko6822さん!
コメントありがとうございます。
『棒がいっぽん』の衝動買いは大正解ですね。
jyunko6822さんの本棚に...jyunko6822さん!
コメントありがとうございます。
『棒がいっぽん』の衝動買いは大正解ですね。
jyunko6822さんの本棚にもおじゃまします。2013/09/13 -
こんにちは!
お気に入りをしてくださったところから辿って、
kwosaさんの本棚を拝見し、「わっ!」となってすぐフォローさせていただきま...こんにちは!
お気に入りをしてくださったところから辿って、
kwosaさんの本棚を拝見し、「わっ!」となってすぐフォローさせていただきました。
レビューを拝見し、まだまだ読んだことない、面白そうな本がたくさんある!と、嬉しくなり、またソワソワもしています。
高野さんは『黄色い本』が大好きで50回以上読んでいます。ちょっとした仕草の描写が良いですよね。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。2014/02/02 -
日曜日さん!
コメントありがとうございます。
ブクログでこうやってお仲間に出会えることはなによりの幸せです。
人生でどれだけの量の...日曜日さん!
コメントありがとうございます。
ブクログでこうやってお仲間に出会えることはなによりの幸せです。
人生でどれだけの量の本が読めるのだろう、と呆然としながらも面白そうな未知の本に出会うことは、本当に嬉しいですよね。
高野さんの『黄色い本』は「チボー家の人々」(でしたっけ?)をちょっと読んだような気がします。
二階へあがる階段が、ぐあーんと捻れるような描写に衝撃を受けた記憶があります。
ああ『黄色い本』も欲しくなってきました。
高野さんの漫画は、永久保存で家宝にしていいですよね。2014/02/02
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凄い作品でした。
なんでもない日常のひとこまが切り取られているようで、じつはSF設定だったりするところが、絶妙な表現力。
ン十年ぶりに読みましたが、学生時代に難解か、無意味に思えたシーンが、しみじみ身に染みて。
日常をホンワカとして過ごしながら、今後なにか予想できないようなことが起こりそうな怖さも感じられて、それは登場人物達の表情や、間からなのか、不穏な不安定な、さみしいようなたのしいような微妙なっ空気が感じられる。
それは自分の人生経験からにじみ出てくるような感覚なのかも知れません。
なんど読んでも、新たな発見ができそうな、おいしいお食事を食べているような作品だと思います。
短編集だけど、それぞれの作品の力が強いです。
特に印象に残ったのは以下
・美しい町
戦後の団地に住む夫婦のつつましくも若い力が感じられる、現在からの視点で考えると、その後の2人の老後まで、どうなったのかなと行間へのイメージが広がる作品。
・東京コロボックル
ちいさなコロボックル達が、排気口やテレビに住んでいる。
主人公の若い恋人たちが、人間とパラレルに生活をしている。
自分たちの家に、こんなコロボックルが住んでいると思うと、とても豊かな気分になれる。
・奥村さんのお茄子
宇宙からきた女性が、奥村さんの一九六八年六月六日のお昼に何を食べたかを調べに来る。
ミステリアスで、突飛な設定でいて、超日常的で、郷愁を帯びている。コマ割り、絵も活き活きしていて。
こんな世界を描ける高野さんは、やはり天才です。 -
奥村さんのお茄子読んで、鳥肌立ったのは私だけ??
高野文子の本は『るきさん』や『黄色い本』も含めて三冊目なんですが、何度も噛み締めて、独特の視点描写のイラストから物語に入り込むこの感じ、高野ワールドは本当に好き嫌いが分かれると思います。一回読んだだけではなかなか理解出来ない所も多いし、共感出来ない所も(時代背景もあるけど)あるけど、不思議と何度も読み返してしまうのが、高野文子の漫画の良さなのかなとも思います。 -
一度読んだだけではわからないという面白さを得られる。大切に何度も読んでいきたい作品。
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イラストが特徴的
今まで見た漫画のイラストとは違う良さが有る
一読だけじゃわからない、筋書きとか物語もあったから、また読んでみたい
コロボックルが可愛くてお気に入り -
高野さんの作品は何度も何度も読むうちに、少しずつ、しみこんでゆくように思う。登場人物たちのちょっとした仕草や動作、受け答えのときに使う言葉などが、全部借りものじゃなく、その人からにじみ出ているかんじ。この人たちの住む場所はやさしいだろうな、となりで暮らしたいな、と思う。
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あなたの好きな漫画家は誰?
と問われたら、多分一番最初に頭に浮かぶ人。
高野文子先生は日本漫画界、いや全世界的漫画界の宝です。
この人の漫画は宇宙みたいです。
大きくて解明なんかできっこなくて得体が知れない、だから惹かれる、ぞくぞくする、興奮する、果てがないから見上げるたびに新しい星を見つける。
そんな宇宙感が、歴代の高野作品の中でも最もわかりやすく出ている作品がこれではないかと思います。
この空間掌握というか、スペース感はなんなんだろうか、異常だと思います。
本作に収録されている作品は、どれも時代背景はバラバラですが(奥村さんの茄子などは未来か現代か過去かわからない笑)、
昭和の匂いがするところは、やはりその時代に、高野先生の思い、があるのかなあと勝手に思っています。
冒頭に収録されている、美しき町、は特に好きな作品ですが、小津安二郎監督の映画を思い出させるような、その名の通り、穏やかで美しい作品です。
徹夜で迎えた、夜明けの町の風景をベランダから見つめる二人の情景は、静かで、美しく、たっといものに感じられます。
夜明けの、空気が変わってゆく感じと、静寂さの遠くにかすかに聞こえる工場の音を、あなたも二人と一緒にきっと感じることでしょう。
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分かりやすい作品もあれば分かりにくい作品もある。分かりにくい作品も分かろうとしながら読む体験がとても心地よい。
カメラで撮影していることを意識しているような構図がよいのかな。読んでいると何となくふわふわと宙に浮いているような気分になる。 -
短編集。工場近くのアパートに住む新婚夫婦の日常を描いた「美しき町」、何不自由ない家庭で育った女の子が、クラスメイトの怒りっぽい女の子に憧れて真似しようとする「私の知ってるあの子のこと」が特に好き。前者は、なんてことない日々の場面が鮮やかに描写されていて、大きな工場のある大きくない町の美しい景色が印象的だった。後者は、俯瞰した構図で子どもの心にぽっかり浮かんだ疑問を追っていて、彼女達を覗いているような気持ちになった。「病気になったトモコさん」、「奥村さんのお茄子」は上手く意味のとれないところがあったので、また読んで考えてみたい。