卵の緒

著者 :
  • マガジンハウス
3.80
  • (284)
  • (343)
  • (444)
  • (18)
  • (8)
本棚登録 : 1900
感想 : 350
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838713882

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 瀬尾まいこさんの著作を読むのは「そして、バトンは渡された」以来の2冊目。中編が2編。2002年に瀬尾さんが中学校の教師をしながら書かれたものです。

    1つ目の表題作「卵の緒」は母子家庭の男の子、育生が主人公。自分は捨て子だと思っている。母に「へその緒」を見せてと言ったら「卵で産んだの」とはぐらかされる。
    ユーモアたっぷりでサバサバとした母の語り口調が気持ちよく、どんどん引きこまれていきます。母が実父との出会いなどを育生に話すときの『母さんは』に猛烈な母性を感じて泣きそうになりました。祖父母の愛情や新しい父親との良い関係も感じられる、すてきな家族のお話でした。

    2つ目の「7’s blood」。高校生七子は母と2人で暮らしていたが、父の愛人の子、小学5年生の七生を引き取った。七子は、笑顔で気が利く七生が可愛いとは思うが、好きになりきれずにいて…。
    血は水より濃いのか、そうではないのかがテーマで2作は対照的だけれども、どちらも心温まります。
    児相は?他の親戚は?死に過ぎ?突然とかないんじゃない?と気になるものの、現実の細かいことは省いて描かれているから、誰にでも読みやすく、主人公の感情に集中して感動できるのかな。こちらも母の深い深い愛を感じました。

  • 瀬尾さんの作品はあったかい。家族ってなんだろう、と考えてしまう。家族を続けるうちに心か離れることもあるし、空気のような存在になったり、気持ちが重い存在になったり。血が繋がっていても、感じ方は常に変わる。赤の他人でも不変であったり。
    家族大切にしたいな、と思う一冊。

  • 卵の緒
    7's blood

    どちらもよかった。


    「そんな年には見えない。すごく若く見えますねえ」
    この言葉さえ使えば、だいたいどこへ行っても大丈夫

  • 暖かい食卓・素敵なお母さん・登場人物の優しさに触れるとほっこりする。
    瀬尾まいこさんの本には、温かい気持ちにさせられるな~

  • 本屋で何か良い本に出会えないかとぶらぶらするのが好き。
    そんな中で、書店さんおすすめと見つけた。

    表題「卵の緒」と「7's blood」の2つ。

    受け入れる強さ、優しさ、愛おしさ。
    キラキラしている。
    ジーンときた。

    短編2つともに、こんな物語に出会ってよかったと、
    素直に、
    理屈なく素直に、思えます。

  • へその緒じゃなく卵の緒。そこにこめられた切ない意味。日々の暮らしから、ひょうひょうとしているようで母さんが育生にとても愛情を注いでいるのが伝わってくる。
    血が繋がっているかどうかより本当に愛されているかどうかの方が大事だって言うこと。本当にそうだと思う。
    育生と母さん以外の登場人物(母さんのボーイフレンドの朝ちゃんとか、育生の同級生で、頭がいいのに登校拒否の池内君とか)の存在感がいい。
    美味しいものは誰かに食べさせてあげたい・・。暖かくて素敵な言葉だなと思う。

    同時収録の『7's blood』は異母姉弟の物語。大人に気を使いすぎて子どもらしくない七生が何とも切ない。そして、七子と七生を一緒に生活させた七子の母の本当の思い。腐りかけたバースディケーキ・・泣き所が満載だ。

  • さらっと読めそうだったから借りてきたんだけど、良い話に出会えた。
    『卵の緒』も『7's blood』もお母さんがさばさばしていてかっこいい。
    あんな、ちょっとのことでは慌てない、かっこいい女性になりたいな。

  • 家族のつながりのいい話、という前知識ありで読みました。
    すごい面白かったわけではないのに、いつのまにかスルリスルリと読み終えてました。

    2つの話がはいっています。
    両方とも、母親が強くて優しくて愛が深くて魅力的です。わたしにはできないな、という視点で、他人事のような感じで読んでいました。
    結構シビアな現実の話なのに、なぜこんな優しい話に感じるのでしょう。

  • 「好きな人の見分け方、教えてあげようか。美味しいものを食べた時、それを誰に食べさせてあげたいか考える。そこで浮かぶ人があなたの好きな人。」こういう考え方、とても好きだ。ここに出てくる女の人は強くて明るくてかっこよくて、主役でないのに憧れた。私も誰かに言ってやろう。「あのね、好きな人の見分け方、教えてあげようか…」って。
    この本を読むと「家族」というものを考えさせられた。血が繋がっているだけが家族ではない。父親がいなくても不幸ではない。母親がいなくても不幸ではない。くさいことを言うようだが、強く想う気持ち、かけがえのないと想う気持ち(一言でいったら「愛」「絆」だか、その一言でまとめたくない。)があればそれはもう「家族」なのだろう。
    優しい気持ちになる作品だった。

  • ボク・育生は小学生でお母さんとと二人暮し。どうやらボクは「捨て子」に違いない。
    だってそうじゃないかって聞いたときの周りの反応が変だし、お母さんに「へその緒を見せて」って言ったら
    卵の殻なんて見せられるんだ。・・・『卵の緒』
    七子と七生はちょっとワケありの姉弟。七生は父親の愛人の子だからだ。母と二人暮しの七子。
    ある日突然母が七生を引き取ると言い出し、七生はやってきた。
    小学生の七生はとても人懐こくてしっかりした男の子。母もすっかり気に入ってしまったらしいが
    どうしても七子は七生が好きになれなかった。
    七生が来て5日目母は入院してしまい、二人きりの生活が始まる。・・・『7's blood』

    『卵の緒』は75pくらいの短編なんだけど登場人物がすごく印象的。
    特に母親の君子の育生に対する接し方はとてもイイ。ベタベタに愛情を押し付けたりせずサラリとしている。
    でもココ!という時にはちゃんとあふれんばかりの愛情をストレートに示す。
    登校拒否の男の子とお茶会をするから育生に学校を休めという母親。
    なんだか奇妙だったけどとても暖かい母子の姿がそこにあってほのぼのとした気持ちになった。
    一方の『7's blood』。小学生でありながら色んなしがらみの中で懸命に生きてきた七生の
    健気な明るさがとても巧みに表現されていて切なかった。
    七生が七子のために用意した誕生日プレゼントの場面にじーんときてしまった。

全350件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
江國 香織
瀬尾 まいこ
奥田 英朗
よしもと ばなな
角田 光代
伊坂 幸太郎
絲山 秋子
山本 文緒
荻原 浩
角田 光代
伊坂 幸太郎
瀬尾 まいこ
よしもと ばなな
伊坂 幸太郎
宮部 みゆき
石田 衣良
宮部 みゆき
伊坂 幸太郎
梨木 香歩
瀬尾 まいこ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×