図書館の神様

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  • Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838714469

作品紹介・あらすじ

思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに"私"は文芸部の顧問になった。…「垣内君って、どうして文芸部なの?」「文学が好きだからです」「まさか」!…清く正しくまっすぐな青春を送ってきた"私"には、思いがけないことばかり。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃から清く正しく生きてきた主人公の清。
    バレーボールに打ち込み、キャプテンとしてチームを引っ張ってきた中、厳しく叱責したメンバーが自殺してしまう。
    そこからバレーをやめ、無気力に流されるまま国語講師になり、バレー部の顧問と思いきや文芸部の顧問を任される。
    そこで出会った生徒との関わりの中で少しずつ自分というものを見つめ直し、再生していく物語。
    清の弟くんと文芸部の垣内くんが良い!
    弟くんの「きっぱりさっぱりするのは楽じゃん。そうしてれば、正しいって思えるし、実際間違いを起こさない。だけどさ、正しいことが全てじゃないし、姉ちゃんが正しいって思うことが、いつも世の中の正しさと一致するわけでもないからね」っていうセリフと垣内くんの卒業前の最後のスピーチでの「文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする。」の二つのセリフが私の心に刺さりました。思わず写メったもん。
    そして最後の手紙の部分でもう完璧泣きました。
    読みやすくて優しい物語でした。オススメ!

  • 主人公・早川清の清い精神は至って健康。いつも正しくあることに一番重きをおいた。何にでも全力で品行方正、陰口、噂話も言ったことがない。その代わり、身体は厄介で、四つ足動物の肉を食べると吐き気に襲われ、甲殻類を食べると下痢を催す。辛い物を食べると頭痛、刺激物で鼻血を出すという完璧なアレルギー体質であった。
    そんな清が全身全霊を注いで打ち込んだのがバレーボール。
    完璧な精神とある意味完璧な身体だからこそ、補欠の山本さんのミスが許せなかったのであろう。
    試合後に山本さんに厳しくあたり、翌日山本さんが自殺する。

    そこから清は、未来を諦める。

    未来を諦めたからって、いきなり不倫とは…
    そこまで落ちていったという意味なんだろうけど、少々そのギャップに引いてしまうほどだった。しかも…優しい弟と比較してしまい、ますます不倫相手の浅見が偏屈で自分勝手に見えてしまう。

    さて、清の再生に大きく貢献しているのが、文芸部の唯一の部員でかつ部長の垣内君だ。垣内君とのテンポの良いが少々噛み合っていない会話に清だけでなく、私も癒され、垣内君のシリアスな会話は誠実に感じる、説得力もあり、信頼できる。
    また、不安定な清を気遣い理由をつけて家に遊びに来る弟の拓実。彼の発言は素直すぎて、微笑ましく、姉へのエールが聴こえてくるようだ。こんなに姉を思う弟もいるんだと尊敬してしまう。

    事件後、淡々と時が過ぎていく中で、清の近くにいる垣内君や拓実の行動、言動が本当に暖かく感じ、清の平凡な日常だけでなく私の日常の癒しのようにも感じた。

    いろんな人に支えられながらも清自身も山本さんへの気持ちを忘れることがない誠実さ持っていることが、最後に山本さんのは家族の気持ちも動かすことになる。
    ちょっと変わった主人公ではあったが、素直で人間味のある主人公であったと振り返ることができる。

    • ひまわりめろんさん
      そうそうkurumicookiesさんのこの感想を読んで今さらながらに瀬尾まいこさんを手に取ったのにいいね!するの忘れてました(T_T)
      新...
      そうそうkurumicookiesさんのこの感想を読んで今さらながらに瀬尾まいこさんを手に取ったのにいいね!するの忘れてました(T_T)
      新しい扉を開いてくれてありがとうございます!
      2021/08/23
    • kurumicookiesさん
      ひまわりめろんさん、
      こんにちは!コメントありがとうございます。
      ひまわりめろんさんが瀬尾まいこさんを手に取られるきっかけになるなんて、それ...
      ひまわりめろんさん、
      こんにちは!コメントありがとうございます。
      ひまわりめろんさんが瀬尾まいこさんを手に取られるきっかけになるなんて、それをお伺して、とっても嬉しいです。
      この著者の作品は、共通したありそうでない独特の設定と感覚を感じます。実は私には遠い感覚なんです 笑(なので星3つした 笑)
      2021/08/23
  • 読みやすく 短いページ数だけど、色々学ばされました。清く正しい真面目な主人公…だった 清。
    真面目さ上の何事にも全力投球打ち込む一生懸命な姿。時には言い過ぎ人を傷つける事も。職場にもいます。本人に悪気はないのは解る。
    耐えることのできる人もいれば繊細な人もいる。
    人に発する言葉って難しいです。

    垣内君の詩 P73
    雑草は、強いと言いますが、どうしてでしょう。
    彼らだって弱い部分があるはずです。
    「ふんでもすぐたちなおる」
    「愛情をかけなくても強く生き抜く」
    かわいそうです。
    見ていられません。
    僕は彼らの弱い心を見つけられるそんな大人になりたいです。

    私もこんな人間になりたい!

  • 自分の思う清く正しい価値観がすべてと思っている清。
    それが原因かは分からないが厳しく叱責したチームメイトが自殺してまう過去を背負っている。

    前半は清の自分の価値観の押し付け具合に辟易し、瀬尾まいこさんなのに、イライラしてしまった。
    自分の清く正しくの考え方が原因で身体症状も出ているのに、本人は気づかない。

    終始、清の言動は幼い感じがしてしまうが、垣内くんが素晴らしかった。
    最後の主張大会での垣内君の言葉はとてもいい。
    なんで、文学をするのか。
    なんで、本を読むのか。 それを見事に言葉にしてくれた。
    最後まで読んだ後は瀬尾まいこさんらしい、じんわり感はある。

  • 自分に厳しく生きてきた「清」
    人にも厳しくする事を当然だと思っていた。

    その結果の同級生の自殺…高校生の清にとってその事件は人生を変えてしまった。

    人生再生の物語が瀬尾さんらしく穏やかな文体で
    重くなく暖かい。

    唯一人の文芸部員「垣内」君がとても素敵(^^)
    弟君も優しく見守っててよかった♪

    前向きになりたい方におすすめですよ♪

    • ちゃたさん
      みんみんさん、こんばんは。

      垣内くんの最後らへんのスピーチ、すごくよかったですよね。
      読書の魅力が詰まった一冊だと思います。

      ただ、浅見...
      みんみんさん、こんばんは。

      垣内くんの最後らへんのスピーチ、すごくよかったですよね。
      読書の魅力が詰まった一冊だと思います。

      ただ、浅見さん、ズルいなー。
      これがなければ中高生にもオススメなのですが……(笑)
      2022/09/06
    • みんみんさん
      ちゃたさんこんばんは〜♪
      垣内くん良かったよね〜(^^)

      浅見さんね笑
      上手に浮気する人がリアルに書かれてました笑

      「さぶ」の場面ちょっ...
      ちゃたさんこんばんは〜♪
      垣内くん良かったよね〜(^^)

      浅見さんね笑
      上手に浮気する人がリアルに書かれてました笑

      「さぶ」の場面ちょっと嬉しかったわ(〃ω〃)
      2022/09/06
  • 乙一さんの「箱庭図書館」から図書館繋がりで
    こちらの「図書館の神様」。
    優しい題名と思って読んでみたら なんとも優しい本だった。

    幼い頃から高校までバレーボールに全てを捧げてきた清は、バレー部の後輩の自殺をきっかけに バレーボールから離れてしまう。大学生になり またバレーボールをしたくなった清は 恋人の勧めで「コーチ」という立場からバレーボールに携わることを提案され、高校の講師となる。しかし、清が受け持つことになったのは、部員がたった1人しかいない文芸部の顧問だった。

    後輩の自殺のきっかけを作ったのは自分の指導のせいではないかと悩んだり、恋人は婚約者と結婚して不倫関係になったりと、清の人生はなかなかに暗くハードなものに思うんだけど なぜかそれを重く感じることは出来なかった。清の性格のせい?周りの人が優しい人ばかりのせい?どんな悲しいことも 生きていけば日々の生活の中でいつかは薄れていくよってメッセージだったのかな?

    高校の講師にも部活の顧問にも退屈さを感じていたり 不毛な恋をしていたりの清の毎日に、唯一の文芸部員の垣内くんの存在はよかったなぁ。垣内くんとのやりとりも、部活最後の日に意味もなくグランドを走り回ったあとに 図書室でソーダを飲むのも。あ、青春ってなんかこんな感じだったよなぁって。

    子供の頃は 何か困ったことがあると「神様どうか助けて下さい」と何かと神頼みをしたもんだけど、大人になり大抵のことじゃ神頼みもしなくなったし おみくじとかも信じてないし。
    ただ 朝日に照らされて輝いている海や、日が落ちて赤や紫にグラデーションを作る山のシルエットや、自然や景色に心を奪われることが年々増えてきて

    『目になれし山にはあれど
    秋来れば
    神やすまむとかしこみて見る』
    という石川啄木の短歌に 生徒たちが「わかるなぁ」と感慨深げに言う場面にはっとした。「秋の山を目の当たりにすればわかる。山には神が住んでいる。単に美しいのではなく、神々しい。」なるほど。わたしも神様をちゃんと感じていたんだ。

    神様が図書館にもいるならば、神様、感動で心が震えるような、怖すぎて次のページもめくれなくなるような、笑いすぎて腹が捩れて涙がでるような、そんな本との出会いがありますように。

    『文芸部は何一つ同じことをしていない。僕は毎日違う言葉をはぐくんでいる。』

    こんなに書いといて星は2
    疲れているときにはホッとできるような本でした。

    • ゆーき本さん
      わかります!わたしも「さぶ」気になりましたもん!読み終えたら夜中に電話してもいいですか?笑
      わかります!わたしも「さぶ」気になりましたもん!読み終えたら夜中に電話してもいいですか?笑
      2023/02/18
    • 土瓶さん
      え~よ~( ˘ω˘)スヤァ
      え~よ~( ˘ω˘)スヤァ
      2023/02/18
    • ゆーき本さん
      いや、寝てるやんっ!笑
      (´-﹃-`)Zz…
      いや、寝てるやんっ!笑
      (´-﹃-`)Zz…
      2023/02/19
  • 愚直に生きる。そんな地味で真面目で目立ないことが、一番人の心に訴えかけるのかもしれない。

  • 高校の講師である清が主人公。彼女は高校3年のとき、バレー部の厳しいキャプテンだったが、負けた試合のあと、試合でミスを連発した部員が自殺してしまう。遺書もなく、彼女のせいという事もはっきりしないが、深く傷ついてしまう。
    スポーツ少女だった清が、スポーツから離れ、自分の街から離れ、不倫に身を投じ、病んでいた状況から、次第に再生していく物語。
    文芸部の垣内君、弟の拓実、不倫相手の浅見さん、みんなが優しい。
    垣内君は生徒ではあるが、ある意味では、彼が先生でもあった。図書館神様なんだろうか。文学を通して、他の世界に触れる喜びを教えられ、清は先生として、新しい世界に前向きに踏み出していく決意を固める。
    瀬尾さんらしい、優しい物語。

  • 挫折した「私」は講師(教師)とし高校に赴任するも生徒にも授業にも文芸部の顧問としても意欲的でない彼女が、生徒とのやりとりや授業での気づきなどによって再生して行く内容なのだが、不倫相手との日常生活も話の中心に流れている。講師(教師)であれ人間、不倫はないでしょ!なんて野暮なことを言うつもりはないけれど、厳しく律してきた者のタガが外れるとここまでになるという人間臭さをどこかで感じながらも、私的にはステージが高校・教師なので多少の違和感を感じました。
    文芸部唯一の垣内くんの活動テーマは面白かった。殆ど手にした作品だが、どれももう一度読んでみようかなぁと思った。

  • 図書館で、たまたま「本日返却された書籍」のコーナーを見ていたら、そういえば誰かの本棚かレビューでこの作家「瀬尾まいこ」という名前があったなあと思い、軽く手に取り、借りてみた一冊。
    まさに「図書館の神様」が教えてくれたような一冊だった。

    清。私の名前だ。
    で始まるこの物語。
    さすが「坊ちゃん文学賞」大賞受賞者。
    吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
    と書き出しの雰囲気が似ている。

    すらすらと入っていける、センテンスの短い軽い文章。二時間半で読み終えた。
    かと言って、表現に手を抜いているわけではない。
    随所にキラリと光る表現や文章が見え隠れする。
    重い小説を読み終えた後だったので、軽くて楽しそうでいいなあ、と読み始めたら、7P目でいきなり人が死んでしまったのにはびっくり。
    こういうサプライズがさりげなく出てくるのが「いい小説」なのだ。

    主人公の清先生(キヨという名前の女性です)。
    高校三年までは何事にも手を抜かず、清く正しく一所懸命。
    バレーボール一直線の体育会系だったが、ある出来事がきっかけで投げやりな人生観を持つようになる。
    国語の講師だというのに、文学なんてまったく興味がなく、本など読みたくもない先生。
    そんな清先生が、国語を教えているからという理由で文芸部の顧問をやらされる羽目に。
    しかも部員は一人だけ。
    全くやる気のない顧問と、部員が他にいないので部長である垣内君とのやり取りが実に愉快。
    「部の予算はどうしましょう。先生何かほしい物ありますか?」
    と垣内君に訊かれた顧問先生は、
    「ほしい物? 車かなあ。今のは2ドアで不便だから、せめて4ドアの車がほしい」
    などと答える、本当にやる気のない先生。
    川端康成を読み耽る垣内君に対して、図書館に唯一あるマンガ「はだしのゲン」を読む先生。
    でも、ふとしたことがきっかけで「文学」も捨てたもんじゃない、と気づく。
    それと垣内君が文芸部に入った理由にも。
    そうか、彼にもそんな過去があったのか、と。

    少しずつ文学の面白さ、文芸部の存在意義に気づいた清先生は、部員一人の部など切り捨ててしまおうとする他の先生に一人敢然と立ち向かう。
    P134:「文芸部はひまつぶしでもないし、垣内君はくすぶってもいません。一日だって同じことをしている日はありません。(中略)ただ単に勝つことだけを目標に、毎日同じような練習を繰り返しているような体育会系のクラブこそ存続を考えたらいかがでしょう」
    と自分の中で何かが切れるのを感じ、思わず反論する場面。
    読んでいて、笑いながら拍手喝采したが、
    あれほど体育会系で、ひたすら根性や努力というような言葉が身に染み付いていたはずの清が目覚めた瞬間だ。
    運動部だけが汗を流しているわけではない。文芸部だって心の汗を流しているのだ。

    竹中直人のデビュー当時のギャグで「笑いながら怒るおじさん」というのがあるが、
    泣きながら笑わせる、もしくは笑いを誘いながらも泣かせる小説を書くというのは結構むずかしい。
    軽くさらりとした文章で、ある時は笑わせ、ある時はほろりとさせ、でもテーマはしっかりとぶれない。

    最後に届いた三通の手紙。なかでも、思いがけない三番目の手紙が心を打つ。
    読後感も爽やかで、ほのぼの感のある、こんな小説もいいものだ。
    瀬尾まいこ。他の作品も読んでみよう。

    • air1さん
      この本よく薦められます(*´∀`)
      レビュー読んで、さらに気になってきました。こんど借りてきます。

      ・よしもとばななさん
      最近読みはじめた...
      この本よく薦められます(*´∀`)
      レビュー読んで、さらに気になってきました。こんど借りてきます。

      ・よしもとばななさん
      最近読みはじめたばかりで^^;
      「ジュージュー」は比較的さっぱり。そんなに重くもないですし、読みやすいと思います。

      ・「月に代わってお仕置きよ!!」
      "(Pretty Guardian of Love and Justice in a sailor suit, Sailor Moon,)  will punish you in the name of the moon!"
      Vol.3からの引用です。なんだか不思議な感じですね。
      2012/04/03
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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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