運のつき 死からはじめる逆向き人生論

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  • マガジンハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838714605

感想・レビュー・書評

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  • いつ死ぬかは運である。
    心に個性があるのではなくあるのは身体にだけ。個性を心の成果にまで拡張したのが近代の間違いのはじまり、だから共同体が壊れた。
    「戦後を経験して"変わらないものを求める"感受性を持つ世代」が現役を引退して初めて、それが本当の戦後なのかもしれない。
    正規の純粋行為がよく理解されなくなってくると、テロが起こり紛争が起こる。

    単純で明快な回答があればいいなという希望があるから、それがある。でもそれはたいていウソ。考えたいなら努力、辛抱、根性。
    日本語で考えると、行き着くところは仏教?それでもその思想は個人的なものだと言えるのか?仮説はみながそうと考えてないものはすべて仮説となる。


    日本人は諸行無常の章は私には少し難しかった。何度か読まないと理解が足りない。

    養老孟司さんの本は読んでいる時は自身が言語化できてなかったこと、知り得なかった見方との出会いに興奮するんだけど、読み終えたあとにぐたっと疲れてしまう。読むまでの自分と読後の自分にどれだけの違いが出てくるだろうと考えてしまう。崇高な文章に出会っても、結局明日以降の自分は変わらないんじゃないかという恐怖。まぁ養老さん的にはそれを変わるというのだろうけど。

  • 気になるところだけ読んだ。
    養老孟司さんは虫が好き、というように自分にもそういう日常のなかで楽しめるものが欲しいと思った。植物なんかがいいかもしれない。

    内容が難しいところもたくさんあった。でも、心にグサッとくる言葉もたくさんあった。
    第9章の「努力・辛抱・根性」は面白くて、連続で2回読んだ。考えることの大切さを教えてくれて面白い。考えるテーマは、それが不変なものであれば、考えること自体にすごく価値がある。学問は変わらないものを追求すること。本質を探ること。

    印象に残った言葉
    ●両極を考えて、はじめて「中庸」が成り立つ。両極をちゃんと見きれば、中央はわかる。
    ●モンテーニュの言葉だが…
    習慣は帝王である。それによってなし得ないことは、なにもない。

  •  養老孟司さん、同年生まれに美空ひばり、江利チエミ、小林千登勢諸氏が。66歳、今までやってきたことを本書で自分なりに整理されたと。「運のつき」、2004.3発行。とても読み応えのある本でした。いくつか紹介しますと:①大日本帝国は天皇陛下を家長とする共同体、共同体の崩壊と個人主義の台頭 ②仕事を辞める前と後では人が変わる。なんであんなに一生懸命だったんだろうw ③学問は真理の探究、心理とは普遍かつ不変のもの ④フツーを重ねるとトクベツになる ⑤自分を客観的に外から観察することが科学 ⑥習慣になれば当たり前。習慣になるまでが、努力、辛抱、根性 ⑦世間とは浮世の義理。この国は自分流より世間流。

  • ☆☆☆2019年8月☆☆☆


    感想を書こうと思ったが、やめた。

  • 養老先生の本。自伝とでもいうような内容の本だ。いつもの
    通り、話は一見脈絡なく飛んでいるように感じるところが
    多いし、くどくどと説明しないので、わかりにくいところも
    あるかもしれないが、読んで損はないかと。養老先生の本を
    読むといつもアハ体験に似た読後感が残ります。

  • 昨日のあなたと今日のあなたは同じですか?今日のあなたと明日のあなたは同じですか?名前は変わっていないでしょう。所属(何々学校の何年何組など)も変わっていないでしょう。でも身体自体は確実に変化しています。爪の長さだって、髪の長さだって、確実に変化しています。今日、「お休み」と言ってふとんに入ったあなたは、明日の朝確実に目を覚ましますか。そんな保証はどこにもありません。でもそんなこと考えていたら、生きにくくなるので、あえてみんなそんなことは考えないようにしています。養老先生はついついそういうことを考えてしまうのだそうです。本書では人生の終わり「死」というところから話を始めて若いころのことまで話がさかのぼっていきます。昨年65歳でベストセラーを出した。人生何が起こるか分からないと書いていらっしゃいますが、20年くらい前から養老先生の本に慣れ親しんできた私としては「何言ってるの、ずいぶん前からベストセラー作家じゃないの」と言いたくなってしまいます。でも、その本の売れ方がまったく違うんでしょうね。何しろ「0」の数が2つ違うんだから(数万と数百万の違い)。この2年の間にたくさんの本を出版されていますが、その中では一番読みやすい方だと思います。初心者にはこの辺から始めるのがいいかも知れません。こういう考え方もできるのだな、と感じることでしょう。

  • 4-8387-1460-2 225p 2004・3・29 2刷

  •  この人の生きている次元の、足元にも及ばない生き方であろうわたしですが、共感をしてしまうような節があったところは、

    きっと、わたしも「普通」の型に当てはまった生き方をしているのだと、常日頃感じる孤独やらうまくやれない辛さを、同じではないけれど近しいものとして感じている人間が少なからずいるのだと、そしていつか、まだ見ぬその人たちに出会えるような鉱脈を、時間をかけて、私なりの方法で、掘り当てていきたいと、

    そう思いました。


     わたしは、自分がたまたま生きている、ありがたいことに曲がりなりにも自分を働き手として受け入れてくれている(なじめていないが)場所がある、という偶然を、ラッキーだと思って、そこにいる間は「こんな自分を受け入れてくれた」という気持ちひとつで、我慢しつつも働いている気がする。


     明日のことなんか、分からない。来年のことも、まして10年後、20年後なんて、生きている保証も無い。それでも、「恐らく明日も生きているであろう」という仮定の下、「生きていないことを想定して過ごした一日のもたらす結果」と、「生きていることを想定して過ごした一日の結果」がどうなるかを考えて秤にかけ、後者を選び、行動している。もちろん無意識に。

    自分の命の限りを知り、「どうせ明日は生きていない」というような過程をして行動していたら、「明日生きていないのなら、今日生きていなくたって同じことだろう」というように、自分の命を軽んじる行動に出てしまうであろうし、その行動は、とても危険なものになりうるであろうことは想像がつく。


     それでも。


     もしわたしが、命の危険に関わる病などを発症したとしたら、自分の命の限りが、ぐんと縮まってしまったと、思うんだろう。

     わたしはきっと、心のどこかで、「自分は死なない」とか、思ってるんじゃないだろうか。

    「明日も生きる想定」は、実は「結構長いこと生きるんだ」って、私は勝手に思っているんだと、気づく。

     残り生きる時間を、『病によって、「失われる」』なんて、私は心のどこかで思ってるんだろう。


     筋違いもいいとこで、失われるもんなんて、最初からありゃしないのに、この程度の年まで生きると、「今まで何とかやってきたんだから」という、わけの分からんふてぶてしさが、身についてしまうんだなぁ。

     まだ、「運よく」生きている。

     わたしの「運のつき」は、一体いつなんだろう。

  • 養老孟司氏の人生論。
    読んでいて面白かったです。
    著者は長年解剖学を生業としていたので、死に対する感覚が所謂一般人と異なり、目の前にあるということがあたりまえの生活をしてきたそうです。
    この本では、まずその死から入り、仕事、主義、日本人など様々なテーマについて考えを述べています。
    そのなかで、自分の生い立ちや境遇、考えてきたことなどが基盤となっていることを解説しています。
    「死を前提とし、生きているだけで幸運である」この考え方はある意味最強ではないでしょうか?
    同意し共感をおぼえます。
    一読の価値があると思います。

  • 筆者は、きちんと自分の頭を使って生きている人だということを強く感じた。
    「大学とは何か」「大学紛争とは何だったのか」というようなことを、何となくで終わらせずに、自分の感じたことをもとにつきつめて考えているところが、いいと思った。
    筆者の話の内容は、一つひとつの言葉にきちんとした定義があることが感じられ、とても論理的に展開されているので、じっくり読むと分かりやすい。
    自分の頭で考えているところは、村上春樹と似ていると思った。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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