pink

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  • マガジンハウス
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838721412

感想・レビュー・書評

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  • 血まみれ白雪姫 in 20th century。

    pink はお姫さまの好きな色。
    お姫さまのしあわせの色。
    やさしかったお母さんの爪の色。
    経血と精液が混じりあう色。

    働き者のお姫さまは売春します。
    「お金でこんなキレイなもんが買えるんなら
     あたしはいくらでも働くんだ。
     よし! 明日もがんばるぞ!」

    どんなにつらいことがあっても
    お姫さまはくじけません。
    「それは頭が悪いせいと
     目の前の事しか考えないから」

    考えないのは
    考えたくないから。
    考えたくないのは
    考えたら壊れるから。

    昔のひとも言っています。
    『自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、
     その犠牲としてみんなこの淋しみを
     味はわなくてはならないでせう』

    どうかお姫さまを責めないでください。
    意地悪な継母も無力な王子さまも
    みんなゆるしてあげてください。
    彼らはすでに罰を受けているのです。

    「すべての仕事は売春である。」
    愛と資本主義のおとぎばなしでした。

  • 私は濃いピンク色のルイヴィトンのヴェルニの二つ折りのお財布を使っている。
    お母さんが韓国旅行のお土産で買ってきてくれたお財布で、最初は気に入らずに仕方なく使っていたけれど、友人にはなかなか好評で、色をほめられているうちにそれなりに気に入った。
    でも、かれこれ三年もそのお財布を使っていて、飽きちゃったのだ。次に欲しいのはクロエのリリィの長財布。うすいピンク色で、リボンモチーフにはたっぷりのビジューがついている。とびきりかわいくて、それを持っている自分を思い浮かべただけでうっとりする。値段はだいたい7万くらい。びっくりするくらい少ないお給料しかもらっていない新社会人の私には、ちょっと手が出ない。
    ユミちゃんだったら、きっと手にいれている。知らないおじさんと寝たお金で。私だってその気になれば、ホテトル嬢になってクロエの財布を買うことはできるんだろう。そうしないのは、なぜ?たぶん、シアワセを恐れているからだ。ユミちゃんは言う。「シアワセなんて当然じゃない?」。
    夜はホテトルやって、昼間は変わり映えのしないB定食みたいなOL。それらを繋ぐのは、なんでも食べる強いワニ。シアワセを恐れる私は、手に入れられないものを我慢して、そうして自分を積み上げていくけど、ユミちゃんは違う。我慢もしないし、積み上げるべきものを食べるワニがいるからだ。「欲しいものを手にいれる」という至極シンプルなシアワセを突き進むユミちゃんが、なくしてきたいくつものものも、ワニが食べてくれる。

  • こういう風に住みたいっていう感情がすごくよく分かる。日々を構成する音楽とか映画とか部屋のにおいとか夜の帰り道とかそういうもの全部が自分の思い通りだったら幸せなのにって考える。

  • 長年愛読してきたオリジナル版
    http://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4838701071
    のページが経年劣化で剥落したので
    https://twitter.com/fukagawanatsumi/status/785903790700367873
    新装版を購入(2015年第3刷)。
    旧版のカバーイラストは口絵に採用されていた。
    あとがきは旧版のままで追加・変更なし。
    個人的にずっと気になっていた「セリフが絵と逆」と思われる
    フキダシの中身(p.98「めざましかけてぇ」←→「お洋服選んでぇー」)
    も修正されていなかったけど、まあいいか(笑)。
    今の若者の感覚からは結構ズレていると思うけど、
    稼ぎまくって使いまくれ、みたいな時代があったわけで、
    当時の東京の若いOLの欲望と消費の物語。
    しかし、ヒロインは、ある出来事がきっかけで
    お金で買える幸福に飽きてしまうのだけど、
    その暮らしから脱却するにも取りあえず先立つものが必要だ、
    って話になってくるところがシビア。
    ともかくも、あれこれいろいろ欲しかったら
    それらが充分買えるだけバキバキ働かねばならず、
    バキバキ働くのが嫌だったら
    少ししかお金がなくても成り立つ生活を模索しなければならないのです。

  • 読んでてずーっと恐ろしさを感じてた。

    多分ぜんぜん心情が理解できないからだと思う。どんな難解な物語より難しかった。ワニがどう、とかじゃなくて。

    後書きがヒントすぎる、「全ての仕事は売春である」「私は幸福を恐れない」、うろ覚えだけど書かれてたような、結局「受け入れる」物語?「受け入れるしかない」物語?、女性の敵は社会?、価値観、良いこととされるもの、孤独感、これはメモ

    そもそもこういう分析しようとすること自体がもう外れてるんだろうなーと思う

    読んでいて罪悪感を感じるのはなんでなんだろう、多分何かしらに対して驕りがあるんだろうけど、、わからない、とにかくわからない、ずっとモヤモヤしている

  • 欲のまま素直に生きて我慢したくない
    明るさ暗さが共存してる

  • 1/12 再読
    あとがきより「すべての仕事は売春である」ってゴダールが言ってたんだって…… “「普通に」こわれてしまった女のこ“が主人公。目先の欲求に正直で明日のことなんて深く考えていない、OLをする傍ら体を売ってペットのワニに餌を買い与えている。義母の”男メカケ“をやっている小説家志望の大学生の青年と関係を深めるが、幸せを掴みかけた主人公は突然……。主人公は何も考えていないみたいだけど、乾いた諦観が終始漂っている。デザイン的なタッチの絵で、明るいのだけれど独特の雰囲気がある。何にもない日々に耐えられないから、ワニが家にいるという事実に一種の安心を覚えるのは分からないでもないと思ったり。

    “あ 始まりそう あの発作
    どうしてあたしはここにいるの? とか
    どうしてここに立っているの? とか
    考えだしたら止まらない”

    何となく、樋口一葉の「にごりえ」のお力を思い出した。彼女も性を売っていて明るく振る舞っているが、こっちはもっと悲愴感がある。
    “行かれる物なら此まゝに唐天竺の果までも行つて仕舞たい、あゝ嫌だ嫌だ嫌だ、何うしたなら人の聲も聞えない物の音もしない、靜かな、靜かな、自分の心も何もぼうつとして物思ひのない處へ行かれるであらう、つまらぬ、くだらぬ、面白くない、情ない悲しい心細い中に、何時まで私は止められて居るのかしら”

  • 「あのピンクのバラ下さい 20本」
    「えーとプレゼントですか」
    「ううん 違うの」

    すてき

  • ペットのワニと暮らす昼はOLで夜はホテトルのバイトしてる女子のお話。バブル時代のあっけらかんとした乾いた空気感…自由、ある意味では我儘。どんどん手に入れたモノがすり抜けてゆく様は哀しくて残酷。今はもっと窮屈で生きにくい時代だと思ったりして。

  • この消費社会では愛は、別の消費によって代替できるのではないだろうか、と、これがこのマンガが描く余韻から伺える「”愛”と”資本主義”」なのではないかと私は感じる。

    ただしそこには、「代替できるということは、ただの軽薄な愛だった」という諦観はない。愛は愛であり美しく、ただ、資本主義における愛の一つの形が示されただけにとどまる。

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著者プロフィール

著者経歴 80〜'90年代を代表する女性マンガ家。既存の「少女マンガ」ではない、リアルなセックス描写80〜'90年代を代表する女性マンガ家。既存の「少女マンガ」ではない、リアルなセックス描写と巧みなセリフ回しで、愛や暴力、トレンド&カルチャーが描かれたマンガを生み出してきた先駆的存在。『ヘルタースケルター』で2003年文化メディア庁マンガ部門優秀賞、'04年手塚治虫文化賞・マンガ大賞受賞。主な作品に『pink』『ジオラマボーイ☆パノラマガール』『リバーズ・エッジ』『エンド・オブ・ザ・ワールド』など。


「2015年 『恋とはどういうものかしら?新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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