世界から猫が消えたなら

著者 :
  • マガジンハウス
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レビュー : 1043
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838725021

作品紹介・あらすじ

僕の葬式。僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。そのなかで僕の死を心から悲しんでくれる人は、何人いるのだろうか。僕と猫と陽気な悪魔の7日間の物語。

感想・レビュー・書評

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  • この世界からひとつだけ、何かを消すかわりに
    今にも消えそうな自分の命を、1日永らえさせられるとしたら。

    自分で消すものを選べるのなら、オレオレ詐欺とか、学校の裏掲示板とか、戦争とか
    喜び勇んでいろいろ考えついてしまいそうだけれど
    消す対象は、悪魔が気まぐれ且つ意地悪に選ぶとなると、話はずいぶん違ってきて。。。

    脳腫瘍で近いうちに死ぬとわかっても、「死ぬまでにしたい10のこと」の中に
    「ガンダムに乗る」とか「ナウシカとデート」とか、能天気なことを書く、30歳の僕。

    世界から、最後にどうしても通話したい相手もいない電話を消し、
    親友や別れた彼女との大切な思い出だった映画を消し、
    町の小さな時計屋という父の生業も顧みず、時計まで消しながらも
    そばに来てみゃあと鳴き、抱きしめるとフーカフーカとあったかくて柔らかい、
    猫のキャベツを消すことは、どうしてもできない。

    電話のときも、映画のときも、時計のときも、人間の関係性とか物の存在意義とか
    時間という概念が生み出した不自由さと引き換えの安心感とか
    どこか他人事のように、消したものについて冷静に考えを巡らせていた僕が
    母の形見でもあり、心のよりどころでもあったキャベツを消すとなると
    うろたえ、迷い、仕舞い込んでいた記憶を甦らせ
    「何かを奪って生きていくのは辛い」と気づく、その身勝手さが
    人間らしくて、ほろりとします。

    極彩色のアロハを着て、やたらとノリがよく、
    きのこの山のあまりの美味しさにチョコレートを消す予定を取り下げる悪魔と
    死を目前にしたとは思えないほど緊張感のない僕が繰り広げる会話は
    こんなんでいいの?!と思うくらいあっけらかんと明るいけれど
    「世界にあるほとんどのものは、あってもなくてもよいもの」なのか、
    いつのまにか考えさせられてしまう物語。

    拾ってくれたおかあさんの膝で、いっしょになって時代劇を見ていたせいで
    悪魔からのサービス☆で、人間の言葉をしゃべれるようになっても
    僕のことを「お代官様」と呼び、ござる言葉でおしゃべりする
    猫のキャベツがとてつもなく可愛くて、思わず本に頬ずりしたくなります。

  • あなたは死にます。
    でも、なにかを1つ消せば、寿命を1日延ばすことができます。
    そんなことを死神に言われた限りなく不幸せで、限りなく幸せな数日間のお話。

    好きな物語でした。

    便利なものが消える時。便利なものと引き換えに失ったことに気づく。
    好きなものが消える時。好きなものの周りにあった大切なことに気づく。
    当たり前が消える時。当たり前が消してしまっていた本質に気づく。

    なにかが消える時。なにかを生かしていたことに気づく。
    そして、自分が消える時…自分に気づく。

    「世界から猫が消えたなら」
    甘かったなぁ。ぜんぜん違う物語を予想していた。
    お母さんの死ぬまでにしたいこと10のリスト。
    とてもステキな10のリストでした。

    子どもたちに伝え、贈りたくなる本でした。

  •  参った。泣けた。泣けました。家族とか動物とか、死とか、そんなテーマの作品読んで泣かずにいられますかい。涙腺決壊ハンパなかったです。

     もし自分の余命があとわずかだと知らされて、目の前に悪魔が現れて、「あなたは明日死にます。けれど、あなたの大切なものと引き換えに、寿命を一日延ばしてあげましょう」といわれたら・・・?

     彼が悪魔から消されたものは、電話と映画と時計。
     確かに、電話も映画も時計も、人間がこの世を生きていくには、そこまで必要のないものなのかもしれない。 
     けれど、「「僕」は気づく。これらの必要のないものたちに、自分はいかに支えられ、形作られていたのかということを。

     そして、泣けたのは「死ぬまでにしたい10のこと」
     死ぬまでに何がしたいのかを書き出すリスト。
     このリストには、自分が死ぬまでにしたいことを、誰しも書くはず。
     あそこへ行きたい、あれが見たい、あの子に会いたい・・・

     けれど、「僕」のお母さんは違った。

     「私が死ぬまでにしたいことは、全部あなたにためにしたいことだったのです」
     
     ああ、人は気づかない。大切なものに、最後まで気づかない。何よりもしなくてはいけないことを、どうしても後回しにしてしまう。
    大切なものは、こんなにそばにあるのに。そばにあるからこそ、先延ばしにしてしまう。いつ会いに行っても会える親よりも、不在着信が入っていた久し振りの友人や彼女を優先してしまう。ああ、ああ。気づいてからでは遅いのだ。いなくなってからでは、遅いのだ。

     この作品を読んで、手紙を書かなくては、と思いました。大切な人たちに。普通のあのハトの切手ではなくて、色とりどりの記念切手で、大切な人たちに手紙を書かなくては。と。

     大切なものは、得ている間に、大切にしていきたいと、そう、強く思いました。

  • ああ、そうなのか。
    最後のほうになって、ふと腑に落ちました。
    人は誰でもいつかは死ぬもの。
    その日が、急に来ることもありえる。
    それは、特別なことではない‥

    自分の寿命を一日延ばすために、引き換えに何かを消せるか?
    素直なトーンで軽めに描かれ、じわじわと心に入ってくるストーリー。

    世界から猫がいなくなる話なのかと(一瞬でも)、考えるのも嫌で~最初は敬遠していました。
    逆に、猫を消すことだけは出来ないという話だったんですね。
    それならわかるわ!(笑)

    30歳の郵便配達員がある日、脳腫瘍で余命数ヶ月と宣告されてしまった。
    1週間後に死ぬこともありえると。
    戸惑う主人公の前に、悪魔が現れ、寿命を一日延ばす代わりに、何かを消せばいいという取引を持ちかける。
    何を消すかを選ぶのは悪魔で、些細なものというわけにはいかないのですが。

    主人公とそっくりの外見で、ずっと軽いのりの悪魔という設定。
    チョコレートを消そうとしたが、食べてみたらおいしすぎて消せないというのが可笑しい。
    電話、映画、時計‥
    大事なものが消されてしまう前に、好きだったものを思い出したり。
    消した後で、世界があまり変わらないのはやや物足りないですね。
    そこが書きたい部分じゃないんだってことでしょうね。

    この主人公、かなり孤独なんだわ。
    恋人とは別れ、親友もいない。
    母親をなくした後、父親とは口も聞いていないという状態。
    もともと無口で仕事一途な父親とは、あまり気が合わなかったのですが。
    というより、お母さんがよすぎたんだな、これは。
    父親になにを言う気もしなかったのが、しだいに気持ちは変わってくるのでした。

    電話が消える前にかけた最後の電話は、別れた彼女へでした。
    喧嘩別れしたわけではないけれど、別れただけあって、いささか辛らつな彼女。
    でもその彼女に、亡き母が手紙を託していたのです。
    母も「死ぬまでにしたい10のこと」を書き始めたけれど、それはすべて「あなたのためにしたい10のこと」だったという。
    そのことに気づいた母は「あなたの素敵なところ10」を書き残してくれていたのです。

    5歳のときに、母が飼い始めた猫の名前は、レタス。
    その後に来た今の猫キャベツと、二人暮らしで4年になるのです。
    キャベツはすごく可愛い。
    いうまでもなく普通に可愛い。
    (猫が出てくることを売りにしているような本でも、いやわかってないんじゃないというケースもごく稀にあるけどそういうことはなく)
    それだけでなく、突然しゃべることが出来るようになった時期にも‥

    最初のうちは何が消えても本気で惜しいと思えなかった様子。
    自分が死ぬと考えると、そういう気分にもなるでしょう。
    けれど、本当は‥ 消していいものなど何もない。
    今の自分にでも出来ることは?
    父もキャベツを可愛がっていたことを思い出す主人公。

    あちこちの書評を見てみると、否定的な意見も案外多いのですね。
    死をテーマにしている割には書き込みが薄く、ぐいぐい引き込まれるような描写ではないから?感情移入できなかった人もいらっしゃるようです。
    ‥そういわれれば、そうか‥?
    いや、この内容で描写が重過ぎるのもねえ‥

    わかりやすく、やや淡々としていて、時々ふざけるけど、そこはかとなく哀しいトーンで統一されていて。
    身近なものの大事さを実感する、それはささやかだけれど、大切なこと。
    当たり前のようにたくさんあるものに埋もれて、一番大切なものを見失いそうになることも。
    これはこれでいいと思います♪

  • どんなに理路整然と述べられてみても
    実際、
    この眼で見たり、体感したわけでもなければ
    俄かには信じがたい事柄がこの世にはたくさんある。

    神はいるよ、
    死後の世界は本当にあるよ、
    宇宙人もいるよ、

    と、言われても
    まだ死んだことも無ければ、神にも会った事が無いので、
    私の
    「そうそう、私もいると思います。」と、いう言葉には若干の(嘘)が含まれている、ということになる。

    ・・・が。

    「この世に存在する全てのものには意味がある。」
    と、いう言葉には、
    私のなかに「嘘」がある事を認めたくなかった。

    たとえ、いしころいっこにしても、小さな蟻一匹にしても、
    (何かあるはず、意味があるはず。)
    だが、
    それが何か?ってのは
    地に足をつけて歩いている間は、わからないような仕組みになってんだろうな~
    と、自分のなかのマル秘ファイルに納めてしまっていたのだが、

    この物語の主人公である青年が自らの身を犠牲にしたことによって、
    その(何か)がわかったような気がしたのだ。

    自らの余命を知り、
    残された時間をもしも、伸ばしたいのなら
    この世から何かをひとつ消せばいいよ、
    と、悪魔にそそのかされ、

    ひとつ、
    またひとつ、
    と、およそ自分が生きる為なら
    失っても惜しくないであろう、と思われるものを次々と消して行く。

    それは、
    たかがなんてことはない「モノ」ではあったり、
    しゃべらない?「ねこ」であったりしたのだが、
    実は青年の人生にびっしりと絡み付いており、
    人生に存在していた無数のヒトやモノのなかから
    何を選択してきたかによって、
    蔓が伸びる方向がいろいろ変わっていたんだ…

    そんな世界をちらっ、と垣間見せて頂いた。

    (それもファンタジー…)と、一括りにしてしまえばそれまでだが、
    この本を選択し、
    読んだ私の蔓もまた、
    方向転換したような気がしたのだが。

  • 2013年本屋大賞にノミネートされた本です。

    面白かったけれど・・・
    不思議な本でした。

    30歳の郵便配達員の主人公は突然、余命あとわずかと宣告される。
    その彼の前に現れた悪魔。
    悪魔の提案は寿命を1日延ばすためにこの世界からひとつ存在を消すこと。
    消すことと引き換えの寿命。
    彼の選択は・・・

    何でもあって、便利な世の中。
    そこからひとつずつ「物」を消していくとどうなるのか・・・
    最初に消された電話。 
    「携帯に自分の絆と記憶を完全に任せている」と言う彼。
    私もまさにその通りだ。
    私の記憶にはなく、携帯だけが記憶している番号。
    今、突然、私の携帯が消えてしまったら、それは私の絆が消えることに等しいかも・・・
    恐ろしい・・・。

  • 余命を伸ばすためにひとつずつなにかを消す。
    ひとつ消せば一日のびる。

    余命云々は別にして、消すものを考えてみた。
    携帯とチョコならどっちでもいいなと思う。
    携帯はなくなったらもちろん不便だろうけれど
    それなりにやっていくだろうし
    なんとなくいまよりみんな穏やかになるような気がしないでもない。
    チョコは大好きだけど
    ないならないで過ごしていける(と思う)。

    食べ物でなくなったら困るものってなんだろう。
    お米とかパンとか・・・
    パンがなくなるってことは粉の類もなくなるってこと?
    そりゃそうか。
    そうしたら自分で作ることも無理。

    お菓子が一気に消えるんじゃなくて
    チョコに限定できるってことは
    お米じゃなくて、ピラフとかそういうふうに調理方法で決まるのかな。
    パンだってたとえばメロンパンとかそういうふうかな。

    でも問題はそれを自分で決められないってこと。
    「それはだめ」とも言えない。

    生死に関わってくるようなもの以外は
    なくなってもそれなりに過ごしていくのだろうなと思いながら
    本当に大切なものについて考えた。
    そうしたら生活はもっとシンプルにできるはずなのに
    ものも心もそうならない。(苦笑)

  • 108円で購入。まず表紙の猫がめんこい♪めんこいめんこい♪

    内容はガネーシャさんの再来といった感じ。少し狙いすぎているなぁ…。微妙に…くさい。なのでじーんとくるけど入り切れなかった。のでさくさく一気に読んで読了となった。この手の本は読み過ぎてもう満腹なのだ。こういう系で感動できる温かいハートがほしい。

    だけどレタスとキャベツが可愛くって、可愛って…猫が、キャベツが消えなくって良かった。マジホッとした。この世から猫が消えたら私の世界も終わるかも。映画化…やっぱりそう来たか。

  • ある日突然、余命があとわずかだと知った郵便配達員の僕。
    彼の目の前にアロハを着た悪魔が現われて、明日亡くなる運命にあることを告げた。何かをこの世から消すことと交換に、寿命を1日伸ばすことを提案するのだが・・・。

    彼の前から火曜日には電話が消え、水曜日には映画が消え、木曜日には時計が消えた。

    電話で恋人と他愛のない会話をして、時間を過ごしていたことを思い出す。実際会って話すには取るに足らないもののように思われ、一緒にいても言葉を交わす時間は少なかった。相手の顔色を窺ったり、心の中を推し量ることをおろそかにしていた彼は、恋人とは数年前に別れていた。
    電話がなくなってもさほど大きな影響があるわけでもなく、むしろ電話に頼り切り、そこに当たり前のようにあると錯覚していたことに気付く。

    映画は大好きだったが、この世から消される前、最後に観たいと思う究極の1本がなかなか決まらない。ようやく借りた1本も結局見られず、白いスクリーンを観ながら来し方を想い、今までの人生を振り返る。

    自然の中に存在するあいまいな朝・昼・夜、季節といったものを目に見える形で時間として表す時計。
    時間の他にも色、孤独、愛など人間だけが独自に持つことができたと思っているものは、生存に関わるようなものではない。けれど、それらのものによって人間特有の豊かな感情や生活がもたらされ、人は形作られるている。そのことに主人公は失ってようやく思い至るのだった。

    彼は次に消されるのは、猫なのではないかと思い、それを実行すべきか深く悩む。家族とともに暮らしてきた猫のキャベツ。家族がばらばらになる前からずっと一緒だった。
    『何かを失って初めて、それがかけがえのないものだったと気づく』ということを思い知った彼は、『何かを得るためには、何かを手放さなくてはならない』ものだとしても、決して手放すことのできないものが存在することを知る。
    そうやって、彼は自らの死を受け入れていくのだった。

    人はいずれ死ぬ。それは『いずれ』であって、決して近い未来ではないと思って生きている。命に期限があるということが現実になったとき、ひとは何を想い、何をなすのか?
    自分の中にある根源的な、ただひたすら削って削ってそれでも残る芯のような気持ちに気付くのであろうか?

    チャップリンは晩年に言った。
    「私には傑作は残せなかった。だが人を笑わせた。悪くないだろ」(P111)

    キャベツ。君にもう会えないのか。
    君のあのフーカフーカした温もりも、ゆれるシッポも、肉厚の肉球も、トクトクという鼓動も。もう触れることはできないのだろうか。(P179)

    最期に自分の信じた、生きてきた道はまんざらでもなかったと、ふっと笑えるか?
    別れを惜しみつつも、いかに大切なものであったかといとおしい気持ちでいっぱいになれるのか?
    ちょっと考えてみては、先送りする。
    また、時間を置いて読んでみたら、感じることは変わるかも・・・。
    それぞれの立場で、いろいろと考えられるストーリーだと思います。

  • すっごく読みやすい本。そして、すっごく深い本だと思った。
    生きる事を考え、死についても考えさせられ、
    この世の中に本当に必要なものは何かを考えさせられ、
    引用したい言葉が私には満載だった。

    図書館から借りた本だけど、
    この本はいつでも読めるように手元にずっと置いておきたい本だと思う。

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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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