ハケンアニメ!

著者 :
制作 : CLAMP 
  • マガジンハウス
4.15
  • (497)
  • (563)
  • (214)
  • (26)
  • (10)
本棚登録 : 3269
レビュー : 567
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838726905

作品紹介・あらすじ

監督が消えた! ?
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。
プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。
同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。
ハケンをとるのは、はたしてどっち?
そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈、聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平……。
ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす!
熱血お仕事小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • いやー、面白かった。純粋に楽しんだ。
    のっけから王子千春に恋してしまいました。
    一章の「王子と猛獣使い」が最高に良かったので、次章から主人公が変わってしまいやや凹む。
    それくらいのめり込んで一気に読ませる作品だった。

    これがいわゆる白辻村か。
    今まで読んできたのは黒辻村だったみたい。
    やっぱり作家の相性を数冊で判断してはいけませんな。
    他も読んでみないと。

    たくさんのレビューがあるので細かいことは省略。
    私も小さい頃からテレビっ子でありとあらゆるアニメを見てきたはずなのに、いつの間にか遠のいていた。
    子供の影響で最近また見るようになったけれど、深夜枠などで放映される1クールで終わってしまうアニメの存在は全く知らなかった。
    そう言えば、聖地巡礼って時々話題になってるよね。
    これって深夜枠のアニメから来てるのか―!
    勉強になるな。

    これって昔と違って純粋な子供向けアニメと違ったジャンルに、新しいジャンルが確立したってことなのかな??
    いつの間に!!
    全然ついて行けてない。

    こんなすっかり時代に取り残されている私でも十分楽しめながらアニメ業界が分かるのが良かった。
    おまけにベタな恋愛もテンコ盛りで、ご都合主義的な感もあるけれどまあ良しとしよう。

  • 冒頭───

     どうしてアニメ業界に入ったんですか。
     という質問をされる時がある。
     さあ、どうしてでしょうね、と首を傾げる。アニメが好きだからですよ、と答えることもある。
     もう少し熱く、答える時もある。
     大好きだったからです。昔から。アニメが、キャラが、あの声優が、あの作画が、設定が、監督が、音楽が、主題歌が、世界観の、それこそ、すべてが。

    この作品にはいろいろな愛があふれている。
    アニメそのものに対する愛。
    アニメ作画家に対する愛。
    アニメ監督に対する愛。
    アニメ声優に対する愛。
    アニメのキャラクタに対する愛。
    そして、アニメを愛する人間すべてに対する愛。

    アニメ業界の中では、『覇権』と称するそのクールのアニメでトップを取るために業界内での争いが繰り広げられる。
    そこでは、アニメに対する愛と情熱が試される。
    オタクと呼ばれ、リア充でなくとも、彼、彼女らの情熱が冷めることはない。
    そのなかでの人間模様。
    アニメへの愛を媒介にして、人間同士の愛も生まれる。

    前半は、アニメ制作の構造や、業界の内幕の説明など、初めて知る世界が多すぎて、物語に入りにくくやや読みづらい。
    “スロウハイツの神様”のような展開------。
    だが第三章『軍隊アリと公務員』から一気に人間くさくなる。
    そして、ところどころの著者独特の仕掛けで、ほろりとする場面が。
    “白辻村”の本領発揮だ。
    最後、作中で話題になる『ハッピーエンドで終わるべきか、否か』の論争と異なり、この作品自体は、ハッピーエンドで終わったと言っても問題ないだろう。

    この『ハッピーエンド論争』は、辻村氏自身の“白辻村“と黒辻村””という二面性の自らへの問いかけではないのか?
    私個人の見解で言えば、「ベタでもハッピーエンドで終わらせたい」と数年前に言った彼女の言葉を支持する。
    たとえそれによって、文学的な作品の完成度が劣るとしてもだ。
    彼女の爽快な終わり方は、本当に心が温まり、胸を打つ。
    大の男が、憚ることなく涙を流すような終わり方だ。
    そんな作品を書ける作家は数少ない。

    ブクログのレビューを見ても、“黒”の直木賞受賞作「鍵のない夢を見る」と“白”の「スロウハイツの神様」や「名前探しの放課後」では、1点近い評価の差がある。
    それだけ、“白辻村作品”が読者に評価されているということなのだから。
    そんな彼女の最大限の長所を活かした作品を、これからもより多く発表してほしいと願うのみだ。

  • 「ここで働けて幸せだ、と心の底から思う。」

    愛がぎゅーーーーーーーーーーーーーーーっと詰まったお仕事小説。
    もうめっっっっっっさカッコイイ。
    アニメへの愛。
    仕事に対する誇り。
    仲間への信頼。
    これでもか!という格好よさ。
    くらくらしました。

    「覇権アニメ」という言葉を初めて知った。
    深夜に放送されるアニメが多いというのにも驚いた。最近アニメが減ったと思っていたら…。
    そして、視聴率よりもDVDなどの売り上げが勝負ということにも。
    最近のアニメ事情にただただ驚く。私が知らなかっただけで昔からそうだったのかもしれないけど。
    プロデューサーと監督の関係性とか本当にすごい。
    ここまで近いと合わなかった時最悪だよなぁ…とか考えてしまうのは、職場の人間関係にネガティブになり過ぎている証拠かもしれない。
    危ない危ない。

    アニメ制作の現場だけに限定せずにアニメ周りのこと全部(じゃないかもしれないけど)が登場している。
    フィギュアとか、聖地巡礼とか。
    この物語で描かれる大人達のほとんど(一部例外あり)は、ありとあらゆる困難を体当たりで蹴散らしている。
    その力の源は「愛」だと描かれている。
    それがもうカッコイイのだ。

    こんな世界があると信じることは心の救いです。

  • 辻村深月さんデビューしました☆
    ハケンアニメだから、アニメ業界の労働状況がメインなのかなぁって思っていたら、そうじゃなかったことが前半で早くもわかってくる。だからカタカナなんだなぁって。
    それぞれの立場の人々が日々格闘しながら作品はできあがってゆきます。
    作品は恙なく進行してゆくのですが、各章で主役が入れ替わります。最初はイケメン監督と助手、ライバル会社の監督、アニメーター、自治体の役所の人、いろんな人が登場。イケメン監督の両親も登場しちゃうんですよ。このサプライズはすっごく嬉しかった。

    てっぺんとるぞ~ってDVD売り上げトップという「覇権アニメ」を争うけれど、その実、それに選ばれることだけに重きをおかず、伝えたいことをきちんと伝えることをなにより大切にしていたことがステキでした。予算やしがらみや風評に負けず、本気を届ける姿勢と、その意志を支え守ってゆく人々が。彼らがどこかに実在していて、ドキドキや愛を伝えるべく今日も走っていたらなぁ。
    実は、この本を中古で購入したら、届いた本の裏表紙に、こどもたちを魅了してやまないアニメ制作会社のゴム印が押されていて、これにもドキドキが止まらなくなって大変。本のレビューは、読んだ人の背景や軌跡が違うぶんその数だけあると思っていて、自分に書けるものを一生懸命書こうといつも思っているのですが、この本だけは別で「本だなからみていたのかなぁ。いろんな監督やスタッフの人々の涙や葛藤や喜びを。いいなぁ」って思わずにはいられませんでした。いつも本が話してくれることを受けとりたいと思っていますが、この本だけは、本がお話してくれたらなぁって切望してしまいます。

  • まだ、じーんと余韻が残っていて、目頭が熱いです。
    文句なしの最高傑作。読めて幸せでした。
    ハケンアニメは派遣アニメじゃない、というのは知っていました。が、具体的にどういうことなのか、というのは本書を読んで知るところでした。

    読んでいて胸が熱くなるし、涙がこみ上げてくるし、その涙がまた熱い。仕事に誇りを持って働く人たちの姿があまりにも尊くて。

    アニメ業界といえば、ものすごくタフでないと乗り切れないハードな現場で、夢を糧に生き抜くイメージでした。
    実際に描かれているのも壮絶な現場で、いわゆる時間給で働く職種ではないんですよね。何日も寝てないなんて描写が度々出てきますが、それなのに本書は全然重苦しさや暗さがない。

    狭い業界ならではの苦労も見え隠れするけど、読んでいてこんなにも泣きたくなるのは、愛を持って仕事をしているのがありありと伝わるから。誇りを持って仕事をしている人って、なんて、格好いいんでしょうね。
    ハードな現場だからこそ、誇りや愛情なしには乗り切れないという一面はあるかもしれません。
    でも、自らその道を選び取って進む人たちがすごく輝いていて、感動しっぱなしでした。

    さて、アニメと言えば私もあまり見る方ではないですが、「コードギアス 反逆のルルーシュ」には随分はまって泣いたりしたものです。
    アニメがある人生もまた、本がある人生と同様に豊かなものでしょうね。

    ところで本書は、登場する人物もまた魅力的でキャラが立っているんです。物語の終盤近くにも新たに魅力的な人物が登場したかと思えば、思いもよらない相関図に驚いてみたり。どの人の素敵で好きですが、なんだかんだで一番好きなのは王子でしょうか。
    ちょっぴり前途多難ですが、お似合いな二人が結ばれたらいいなあ。本当にいい物語でした。おすすめ。

    • koshoujiさん
      初めまして。
      フォローいただき、ありがとうございます。<(_ _)>
      リフォローさせていただきました。
      お手すきの時で結構ですので、
      ...
      初めまして。
      フォローいただき、ありがとうございます。<(_ _)>
      リフォローさせていただきました。
      お手すきの時で結構ですので、
      どのレビューをお読みになってフォローするお気持ちになられたのか、
      お教えいただければありがたく存じます。
      今後ともよろしくお願い致します。
      2016/05/05
    • yocoさん
      はじめまして、こんばんは^^
      コメントもリフォローもありがとうございます。

      koshoujiさんのレビューを初めて読んだのは綿矢りさ...
      はじめまして、こんばんは^^
      コメントもリフォローもありがとうございます。

      koshoujiさんのレビューを初めて読んだのは綿矢りささんの「ウォーク・イン・クローゼット」で、フォローさせていただいてる杜のうさこさん経由でタイムラインに流れてきたように記憶してます。

      なんて素敵なレビューなの!と思ってページを拝見させてもらったら、どれもこれも素敵レビューすぎて、速攻でフォローさせていただいたんです。それもこっそり・・笑

      いつもいつも、私もこんな風にレビュー書けたらいいなあって思いながら読ませてもらってます^^
      こちらこそどうぞよろしくお願いします(_ _*)♫
      2016/05/05
  • え?これ辻村深月だよね?と思ったのが最初の印象だったんだけど。
    前向きな愛にあふれる熱血お仕事小説+ラブコメな本作は、ハケンってそういう意味なのか―てところから始まり、チヨダ・コーキの登場により無駄にテンションあがりました。

    全然詳しくはないけど多少マンガも読みアニメも見るし作中のイケメンにときめくし、周囲の人よりは二次元よりなのかな?とは思うものの、オタクには程遠いリア充寄りの人間なんだろうなと感じますな。

    アニメーション作りって、儲からないとかハードだとか聞くけど、想像以上に愛憎とお金にまみれた過酷な現場なのね。
    でも素敵。みんな素敵。
    しかし王子の「三次元の可愛さなんて所詮二次元の可愛さに絶対的に敵わない」ってのがいーなー。

    とてもおもしろかったです。

  • アニメの製作現場の熱っぽい人間模様をいきいきと描いた作品。
    3人の個性的な女性と、そのお相手?を中心に。
    ノリが良く、愛に溢れていて、面白かったです。

    「王子と猛獣使い」
    中堅スタジオの女性プロデューサー有科香屋子は、王子こと(なんと本名で)王子千晴監督のことに頭を悩ませていた。
    伝説的な作品で知られる、天才肌で気まぐれな王子。
    香屋子はアニメが大好きでかなりの美人、ちょっと天然。
    王子のほうも憎からず思っているのだが、香屋子はまったく気づかない‥

    「女王様と風見鶏」
    女性の若手アニメ監督、斉藤瞳。小柄だが、職業柄性格はきっぱりしている。
    敏腕プロデューサーの行城とコンビを組むが、行城は口八丁手八丁、アニメを愛している感じはしない人物。
    しかし‥?

    「軍隊アリと公務員」
    新潟市に本拠を移したアニメ原画スタジオで働く並澤和奈。神原画を描くとファンの間では噂になっている。
    市役所の観光課の宗森のまじめさに戸惑うが、しだいに協力的に‥?

    章のタイトルや、キャラの立った描き方など、いつもの辻村作品とは雰囲気が違いますね。
    アニメ風を意識したせいなのか?
    むしろ有川浩っぽいけど、だったら女王様キャラがもっと強く描かれていそう。割と控えめなのが辻村さんぽいかも。
    話はモデルがあるというわけじゃなさそうだけど、取材に基づくアニメ製作の実態を少しは知ることが出来るし、快調なテンポでハッピーな方向へ向かい、楽しく読めました☆

  • ずっとこの世界に浸っていたいと思える作品だった。
    熱い思いをもって仕事をしている人は素敵だ。
    嫌なことも辛いことも山ほどあるのに、それでも、通りすぎてしまうと楽しさしか残らない、という感覚。
    そんな気持ちで仕事ができたら、作品が作れたら、他にはもう何も望まない。
    第三章の波澤和奈の自意識過剰ぶりは、痛くてくすぐったくて、一番感情移入してしまったなあ。浴衣姿をかわいいと言われるシーンでは、思わず涙ぐんでしまったくらい。
    今までの辻村作品とはちょっと雰囲気が違うけれども、これを機にもっと他の作品も読もうと思った。
    カバーがちょっと抵抗あったかな。やっぱり、ああいう絵は手を出しにくい。

  • 辻村深月さんの朝が来るがよかったのでこれも読んでみる。

    もっとよかった。
    いわゆるマンガとか小説とかと同じくアニメ制作者ものなんだけど、こういうの何故か面白い。

    読みながら、笑ったり怒ったり悲しくなったり恥ずかしくなったり素直に感情移入できる感じが心地よかった。

    読み終わったらふわっと全部忘れてしまう感じも気持ちいい。

    辻村さんファンになったかも。もっと読みたい。

  • 伝説のアニメと言われた王子監督の「ヨスガ」。
    そのラストにまつわるエピソードが強く印象に残った。
    最終回の1話前で人類を滅ぼす敵との戦いは終わりを迎える。
    では、最終回では何を描き、どんなストーリーになるのか。
    新たな敵が現れて、魔法少女候補の4人全員が魔法少女となって戦いは続くのか。
    それとも4人とも戦うべき相手がいなくなって、全員が魔法少女とはならないか。
    多くのファンがそれぞれの予想をたてていた。
    そして最終回。
    戦う相手はすでにいないまま、1人は当初の予定通り魔法少女となり、残った3人は現実の生活へと戻っていく。
    だが、王子は言う。
    「殺したかったんですよ」と。
    選ばれなかった3人を殺して終わりにしたかったけれど、やらせてはもらえなかったと。
    倫理的な問題やグッズ販売の売上など、大人の事情による理由がそこにはある。
    でも、もしもそんなラストのアニメだったら、きっと忘れられないアニメになっただろう。
    賛否両論、喧々諤々の騒ぎになったとしても、文字通り「伝説のアニメ」になったに違いない。
    ハッピーエンドばかりが良いラストなわけじゃないだろう。
    ハケンアニメは「覇権アニメ」だ。
    そのクールでパッケージ(DVD等)の売上1位を争うこの言葉は、業界側にとっての言葉だ。
    だが、けっして視聴しているファンにとっての1番ではない。
    ファンは売上や視聴率に関係なく、「誠実に公平に」判断する。
    どのアニメが好きで、どこに心惹かれるのか。
    100人の視聴者がいれば、「ハケンアニメ」は100通りの理由でそれぞれの視聴者の中にあるのだろう。
    アニメ制作の裏側が、各章で主人公を変えながら描かれている。
    一人はアニメプロデューサー。
    一人はアニメ監督。
    そしてもう一人は原画スタジオで働くアニメーター。
    立場の違いはあるものの、彼女たちの日々はけっして平穏ではない。
    何かと作りあげることの難しさ、葛藤、そして結果を求められることへの不安。
    読んでいて引きこまれるものがあり、一気に読み通してしまった。

    個人的にアニメが好きなことも影響しているのかもしれない。
    けれど、アニメには詳しくない。普段アニメなんて見ない。興味もない。
    そんな人も楽しめる物語だと思えた。
    この物語、そのうちにドラマの原作とかになりそうで怖いような・・・。
    好きな物語はあまり映像化してほしくない気がする。

全567件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

ハケンアニメ!のその他の作品

辻村深月の作品

ハケンアニメ!を本棚に登録しているひと

ツイートする