蕎麦湯が来ない

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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838730858

作品紹介・あらすじ

美しく、儚く、切なく、哀しく、馬鹿馬鹿しく、愛おしい。

鬼才と奇才。文学界の異才コンビが詠む、センチメンタル過剰で自意識異常な自由律俳句集。
『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』に続くシリーズ第三弾。四〇四句の自由律俳句と五〇篇の散文を収録。

琴線に触れまくる言葉たち。
しみじみってもんじゃない。


これは自由派の記録の最終章である。

誰もいない時計店で動いている針
写真にうつらない月を仰ぐ
もう引き返せないということもない
ブランコに濡らされた手を拭く
用途の無い棚を眺めている
そうだふりかけがある

*自由律俳句とは、五七五の形式を破り自由な韻律で詠む俳句のこと。

感想・レビュー・書評

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  • せきしろさんと又吉直樹さんの自由律俳句集第3弾。
    タイトルだけで完全に心を掴まれてしまいました。

    収録された自由律俳句は、日常で覚えがあるのに普段は気にもしなかったような瞬間を掬い上げていて、読んでいると「あるある!」と思いながら、少し切なくなったり、懐かしい気持ちになったりするのでした。
    時々差し挟まれる散文も、たった2ページなのにせきしろさんや又吉さんの頭の中のとりとめのない思考を一緒に辿っているようでおもしろかったです。
    又吉さんの先輩・後輩と一緒に飲んだときのエピソードを綴った「鼻の穴で喋ってんのか」の最後の一文がツボに入ってしまいました。

    じわじわ笑えて、じわじわ切ない。
    じわじわの塩梅がちょうどよくて、なんだか癖になるのです。

  • せきしろさんと又吉さんの共著。
    自由律俳句の合間に2ページの短い随筆が、そしてどこかで見たことありそうな普遍的な写真が挟まる。

    随筆は日常にある些細ながらも人生のうち3回くらいしか起こらなそうな出来事を拾い上げているのがとてもいい。
    わたしは小さいが「あるな」という事象をきちんと言語化できる人への憧れがある。

    せきしろさんの「町の変わったおじさんを認知しているつもりが自分もおじさんから認知されていた」という話、何気ないんだけど何気なく考え方を変えられそうだ…。
    第三者視点の観察者だと思ってたのにいきなり一対一の関係に持ち込まれる恥ずかしさ、あるよね。

    最後にあとがきの類がないのが良かった。我に返らないというか。ポエティックな本においてのあとがきって「ま、こんなんもやってますけどね…」といった釈明のようなものになりがちなイメージがあるので、そこから降りずに「ハイ!では!」という終わり方、潔い。


    又吉「カツ丼食える程度の憂鬱」「黒いところは海だよ」「一貫だった」

    せきしろ「茶髪の夫婦が大笑いしている」「魚のここは大人が食べるところ」

  • シリーズの中で一番好きかも。
    ちょっとした小石につまずいて、そのことをいつまでも忘れない、かといって恨んだりもしない、ちょうどよい根の持ち方だと思った。

  • せきしろさんと又吉さんによる自由律俳句と散文。
    今作も濃度の濃いセンチメンタルを楽しむことができた。

    年が近い知り合いを亡くしたエピソードが二つあって、どちらもせきしろさんの書いた散文だった。なんともいえない気持ちになったけど、ちょうどこの本を読んでいた11月3日がせきしろさんの誕生日で夜中にインスタライブ配信を行っていた。
    「最近はワクワクすることは何もないですね」と真顔で語った直後に「小林歌穂さんはワクワクしますね。きれいだし、歌もうまいし」と続けるせきしろさん。最高だなと思わずにはいられなかった。

    又吉さんの散文は、芸人仲間や仕事上の話も多かった。作家として売れてもなお変わらずに自意識を抱えているようだった。自分の考えていることを知られるのは恥ずかしいのに、誰かに自分を理解してほしいという気持ち。わがままなようで、人間の本質だと思う。

    散文だけでなく、自由律俳句も写真もどれもセンチメンタル過剰で素晴らしかった。
    未来にばかり眼を向けるのではなく、過去の思い出に浸る時間の大切さをいつも通り実感した。

  • 青春、懐かしい風景が思い出される。
    くだらなくもシュールであり、感動もある自由律俳句集


    「お通しがえびあげせんべいだった」が結構好き。

    あなたにとってのただのお通しは、誰かにとっての修練の蓄積かもしれませんよ。それでも私を残しますか?

    作った側のことも考えられる感性が素晴らしい。気にしすぎだろうとも思うが。

  • 日常を切り取る

    せきしろと又吉の自由律俳句andエッセイ集3作目。正直、1作目や2作目の方が切り取った場面に魅力を感じたかも。でも、本を読んでいると自分も詠んでみたくなる気持ちにさせてくれる。
    又吉のカミソリのエッセイが、作家と芸人魂が感じられて又吉らしくて面白かった。

  • この本の楽しみ方。敢えてどちらの俳句か名前を見ずに「このあるあるはせきしろさんだろう」「この影で何も見えない感じは又吉さんだろう」「何っ!この句、せきしろさんだったのか!」
    と、どちらの俳句か予想しながら読んでみる。
    個人的に「ゴミ袋の隙間からゴミを入れる」が気に入った。

  • せきしろさんの「もう一度数を数える」と
    又吉の「「カウンターにしてください」と怒られた」
    が特に好きだった。
    又吉のたまにくる関西弁のツッコミがおもしろい。ツッコミがおもしろい人はボケもおもしろい。

    このシリーズは全て購入してるし、このシリーズのお陰でせきしろさんのことをすごく好きになった。いい出会いだなぁ。

  • (2024/3/15読了)
    せきしろさん、又吉さん2人による、自由律俳句とエッセイ。
    自由律俳句というのを初めて知った。決まり事があるのかないのか、まるで呟きのようで、これなら自分にもできそうな気がする。
    しかし、終盤に「句でもなんでもないそのままのフレーズが頭に浮かんだ」と又吉さんが書かれている。
    やはり呟きじゃなくて想像を膨らませられるかどうかなのかも。
    共感して想像を膨らませながら肩の力を抜いて少しずつ読んだ。
    一番衝撃だったのは、「一貫だった」
    これは又吉さんの句だが、私はせきしろさんと思考が似ていると思った。

  • ふふっとなる。哀愁の中にあるおかしみが愛おしく、深刻さの中にある滑稽さに笑わせてもらった。

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著者プロフィール

作家、俳人。1970年、北海道生まれ。A型。北海道北見北斗高校卒。主な著書に『去年ルノアールで』『海辺の週刊大衆』『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』『たとえる技術』『その落とし物は誰かの形見かもしれない』など。また、又吉直樹との共著に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『蕎麦湯が来ない』などがある。

「2022年 『放哉の本を読まずに孤独』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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