タイの基礎知識 (アジアの基礎知識 1)

著者 :
  • めこん
4.07
  • (5)
  • (5)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 57
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784839602932

作品紹介・あらすじ

タイのことを知りたいと思う人が最後まで一気に読めて、基本的な情報がすっと頭に入る。

〇読みやすい・・・研究者がひとりで執筆→全体のまとまりがある。
〇理解しやすい・・・各節2~4ページ。写真・図版・地図を多用。
〇必要最小限の知識・・・詳しくなりすぎない。固有名詞より流れや構造を重視。タイを代表する人物15名のコラムがユニークで役に立つ。
〇読者の立場に立ったレイアウト・・・細部まで気を配り、親切に。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最新の社会情勢も含めた基礎知識が分かりやすく記載されている。手元に欲しい。

  • タイ旅行にあたって読了。


    •タイも仏教だが、日本と流派が違う。日本は大乗仏教でタイは上座仏教。大乗仏教は他者を救済することを目的としているが、上座仏教は自己の救済、自身の徳を積むための行為が、来世ののより良い生活に結びつくと考える。

    •タイには精霊侵攻があり、ピーと呼ばれている。祖先の霊、地域の守護霊、自然に宿る霊など…。タイの街(ムアン)には必ず町の守護霊をまつるラックムアンという柱もある。

  • タイに行った前後で一読。

    政治状況、国王について、周辺国との関係、日本との関係、国民の気質、宗教観など、ガイドブックでは決して得られない知識を学べた。

  • 地理気候歴史など幅広い分野をカバーしていますが、個人的に印象に残ったポイント:

    <社会>
    東南アジアはベトナム、ジャワ、ルソン(フィリピン)など一部の地域を除いて人口密度の小さい小人口世界であり、土地よりも人の方が重要な資源であったことから、伝統的な戦争における戦利品は人であり、二者関係が卓越した社会が形成された(保護を与えるピーと忠誠を尽くすノーン)。タイ社会は個人主義的な傾向が強く、集団主義的日本社会と比べて「緩い」社会と形容される。また、とりあえず社会の構成員の誰かと二者関係を構築すれば、新参者もすぐ社会の一員になれるという側面があり外国人にとって居心地がいい。タイの「能力があれば出自を問わず登用する」という伝統の基盤となっている。

    <歴史>
    ・ラーマ4世はビルマや中国が列強に敗北するのを見て、 列強と対立するのではなく可能な限り列強の要求を受け入れて良好な関係を構築する道を選んだ。その結果、イギリスと不平等条約を締結し伝統的な皇室独占貿易を廃止し自由貿易を認めた。(このようにタイ経済を握っている存在であったことが、タイ王室が世界一お金持ちの理由?)最大の財源である王室独占貿易から収入を失うことになったので、これに代わる財源として輸出を奨励することになった。当時米は東南アジアの植民地化に伴い需要が増していた。
    ・ラーマ5世は、タイの独立を守るために分権的な国家体制の中央集権化を推進した(チャックリー改革)。結果的に中央集権化の推進と鉄道による経済的統合の成果によりイギリスとフランスが定めた緩衝地帯よりも多くの領土をタイ国の領土として保全することができた。

  • 日本人がなぜタイに惹かれるのか。それは、次の理由があるという。
    ○日本に似た景観-伝統的に稲作に立脚した社会と木造家屋の組み合わせが、深い郷愁に駆られる。車も左側通行。
    ○多様な観光資源-遺跡、寺院、リゾートビーチ、ショッピング
    ○食べ物の類似点-米(但、インディカ種)と魚は食べ物の主役。魚醤の存在。
    ○宗教-国民の9割以上が仏教徒(但、上座部仏教)。日本の神道のような精霊信仰もある。
    ○居心地の良い社会―「ピー・ノーン」(保護・被保護)の二者関係が重要な社会。個人主義的な傾向が強く、よそ者に対しても包容力がある社会。微笑の国(the Land of Smiles)。「マイペンライ(大丈夫、気にしない)」

    タイ系民族を大きく分けると、中部から南部にかけてのシャム(サヤーム)と北部から東北部にかけてのラーオ(ラオスの主要民族とタイ東北部のラーオは元々同じ民族。1893年にメコン川を境に東側がフランスに割譲されたため分断)。シャムは、アユタヤの崩壊(1351-1767)後、トンプリー朝(1767-82, ビルマから独立を回復したタークシンが中国福建省の潮州系華人の支援を得て成立)を経て、ラッタナコーシン朝(アユタヤ王家の血を引くラーマ1世が1782年に開く)を興し、現在に至る。タイではシャムの文化が規範となっており、1939年までの正式国名はシャムであった。

    冊封体制を基盤とする東南アジアの国際秩序は、ヨーロッパ諸国の侵出により崩壊。特にフランスは強欲で、トンブリー朝(1767-87)時のタイの領域は、現在のラオスとカンボジアも含んでいたが、フランスは1863年にカンボジアを保護国とし、1887年にフランス領インドシナ連邦を成立させると、1893年に仏泰戦争を経てラオスを連邦に編入。1863から1907年まで5度にわたりタイはメコン川流域の支配域を割譲している。このため1940年から41年に、「タイ・フランス領インドシナ紛争」が勃発。1941年に日本が仲介役を果たし失地回復している(cf. Victory Monument)。

    「プラーサート・プラウィハーン(プレア・ビヘア)寺院」(9世紀末にクメール人が建設したヒンズー教寺院)を巡るタイとカンボジアの軍事衝突に見られるように、国境線問題は今も顕著である。

  • ハードカバーですが、平易に書かれていてとても読みやすかったです。大学の先生が長年の研究を踏まえて体系的にまとめられた本がとても読みやすく、知識を得やすい点で本書は良書と言えます。

  • タイトルにもある通り、この本を読めばタイについての基本的なことは大体わかります。まじめに学術的に書かれているので、多少読むのに時間がかかりました。
    国際関係の中でも特に周辺諸国との関係が興味深かったです。植民地になったことがないという点で、日本との共通点も多いと感じました。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

横浜市立大学国際教養学部教授
1971年生まれ。1999年,東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。横浜市立大学国際文化学部専任講師,同助教授,同国際総合科学部准教授,同教授を経て,2019年より現職。博士(学術)。第17回大平正芳記念賞(『タイ経済と鉄道 1885~1935年』),第2回鉄道史学会住田奨励賞(『鉄道と道路の政治経済学 タイの交通政策と商品流通1935~1975年』),第40回交通図書賞(『都市交通のポリティクス バンコク1886~2012年』),第30回大同生命地域研究奨励賞を受賞。

「2022年 『草の根の日タイ同盟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柿崎一郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
又吉 直樹
伊坂 幸太郎
デールカーネギ...
今村 翔吾
遠藤 周作
エラ・フランシス...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×