お岩 小山内薫怪談集 (幽BOOKS 幽ClassicS)
- メディアファクトリー (2009年5月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840127332
作品紹介・あらすじ
バイオレンス・ホラーの知られざる原点!百年の封印を解かれて現代によみがえる史上最恐の四谷怪談小説。他に単行本未収録の怪談実話集や怪談演劇論を併録。
感想・レビュー・書評
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四谷怪談を題材にした小説。
読んでいて違和感がはなはだしい。
文章はあんまり美しくない。知らない古い言葉がちょこちょこでてくるから調べながら読んだ。
だけど難しい言葉を頑張って使っている感じではない。こなれている。
江戸が舞台だけど風俗も思考も江戸っぽくない。だけど今様でもない。
なんか変だよこれ。なんだろう。
と、思いながら途中まで読んで気がついた。
小山内薫か!小山薫堂と勘違いしてた!!!
あーどうりで。昔の本を今の本として読むから変だったのか。
当時の「今風」に書かれたものだから、題材通りの昔でもなく今現在の今風でもなくて、今とも昔ともズレている違和感があったんだ。
で、そのズレを読むという点では面白いけれど、当時の「今」の倫理にねじまげられた「昔」が合わない。
書かれた時の枠の中でしか通用しない倫理や常識の古臭さが嫌。
これは当時の感覚の中で読まないとダメだ。時代に耐えるものじゃない。
センスが合わないことに目をつぶるにしても、時代もキャラも設定がブレブレで読みにくい。
でももしかすると読み誤っているのかもしれない。
ひどいセリフが、悪者の悪い考えとして描かれているのか、それとも当たり前のこととして描かれているのかがよくわからない。
たとえば最初のほうでまだ白い伊右衛門が男は女の上に立たねばと考える。
これは悪さを示す伏線なのか、それとも真っ当な男に見せるための演出なのか。
終盤の「どうとでもごまかせる」という考えは明らかに悪いものとして描かれている。
“夫として妻を虐待したり、親として子を虐待したりする事が、法の上でさして重罪にならぬことは、今もその当時も変わりがなかった。p266”
これは現状批判だろう。物語の時代と書かれた当時と、変わらない状況を重ねて断じている。
だから単純に古い考えってわけでもなさそうなんだよな…昔の本の読み加減は難しい。
そしてこれは怪談じゃない。ホラー。パニックホラー風。
喜兵衛のご乱心がコロンバインの銃乱射事件に似てるのはちょっと興味深い。
『エレファント』http://booklog.jp/item/1/B0002XG8KQを思い出した。
この本は、小説部分よりもむしろ付録のように付いている怪談論が面白い。
最初の芝居への評価は細かいセリフの良し悪しなど、舞台を実際に見ていないとわからない。
だけど、ここがあるから二つ目以降が面白くなる。
歌舞伎の四谷怪談評(もちろん本物は観てない)を楽しめたのは新潮の四谷怪談http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4106203456で予習できていたおかげもあるかも。
「お岩」はそんなに面白くないのに、これを読んでから「嗤う伊右衛門」を読んだら相乗効果で面白く感じる。
これは単体で読むよりも、流れの中の一部として読むべきものなのだろうな。 -
旦那は割りと怖いめにあっていない(´-ω-`)
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面白かった!
体験談も怖かった。
大先輩の本をこうして読めるのは幸せです。
東さんに感謝! -
実話怪談の掌編や評論などもあるけれど、ほぼすべてを占めてのメインは時代怪談長編「お岩」。タイトルから察せられるとおり、「四谷怪談」をモチーフとしたものです。実は「四谷怪談」もきっちりと全部読んだわけじゃないのでどれほどの相違があるのかはよくわからないのですが。この「お岩」は凄い!
伊右衛門の謀略にはめられたお岩が怨霊となって祟る、という大筋の流れは同じだけれど。怨霊となったお岩はあまり登場しないんですよね。おそらくは「祟り」に間違いないのでしょうが。むしろお岩を陥れた罪悪感に駆られた人々が、自ら狂っていったような気さえします。どちらにしろ、鬼気迫る怪談。大正時代の作品ですが、あまり古さを感じさせられませんでした。