人の心をひらく技術

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840135047

感想・レビュー・書評

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  •  売れっ子ノンフィクション作家が、これまでやってきた仕事をふまえて、「人の心をひらく」話の聞き方を説いた本。巻末に構成者のクレジットがあるので、小松の話をライターがまとめたものだろう。

     中田英寿、イチロー、中村勘九郎、YOSHIKIなど、各界著名人への取材の舞台裏が随所で語られ、それらはいずれもたいそう面白い。たとえば、勘九郎とのこんなやりとり。

    《「私など、本来は歌舞伎を書く資格などないかもしれないのですが……」
     私がそう言ったとき、勘九郎さんは突然怒り出してしまいました。
    「冗談じゃないよ! どんな資格がいるって言うんだよ。役者以外、みんな素人なんだからさ、いちいち謝らなくていいんだよ。それにね、俺は『自分は歌舞伎のプロです』なんて言って原稿書いている奴、ぜんぜん認めてないからね」
     その言葉が私に対する優しさだということは、すぐにわかりました。》

     本書は取材裏話集であると同時に、ライター小松成美の成長物語(サクセス・ストーリーではなく)としても読める。OLから突然ライターに転身し、蓄積ゼロからスタートした彼女が、押しも押されもしない一流ライターになっていくまでの道筋が、くっきりとたどられているのだ。

     後半、「人の心をひらく」技術が具体的に説かれた部分には、「何をあたりまえのことを」と思えるアドバイスも少なくない。そのへんは読み飛ばしてしまったが、総じて傾聴に値するアドバイスが多く、ライターおよびライター志望者なら必読の内容となっている。

     「人の心をひらく」ために小松が重ねてきた努力は、同じライターとして頭が下がるほどのものだ。たとえば、彼女は取材前に質問を練ったあと、その質問を実際にしてみるところを鏡の前でくり返し練習するのだという。

    《北京オリンピックで銀メダルを獲得したフェンシングの太田雄貴さんへのインタビューでも、インタビューメモを作成し、鏡の前での練習をして臨みました。フェンシングという競技には知らない専門用語が多く、またフェンシングの動作を言葉で伝えることも不慣れです。質問や知りたい技術について紙に書き出し、ある程度すらすら言えるまで練習しました。》

     取材準備として資料を読み込み、質問を練るところまでは、ライターなら誰でもやる。が、鏡の前でこんな練習までやるライターを、私はほかに知らない。

     また、インタビューの最中、「何だかちょっとリズムが合わないな」と感じたときに、彼女は「相手の呼吸のリズムを計ってみる」のだという。そして、呼吸のリズムを「ただ合わせるのではなく、コントロールする」のだと……。
     取材中の「相手の呼吸のリズム」なんて、私は考えたこともなかった。もはや名人芸の域だと思う。
     
     インタビューイから「手品のように言葉を引き出す」小松成美の仕事ぶりは、「小松マジック」とも呼ばれる。しかしそのマジックは、持って生まれた才能(もあるだろうが)というより、彼女が積み重ねてきた努力の賜物なのである。そのことを思い知らされる一冊。

     もちろん、本書はライター入門ではなく、広くビジネスに役立つ本だという体裁をとっている。そうしなければ売れないからだが、ライターやカウンセラーなど「人の話を聞く仕事」以外の人が読んでも、さして有益ではないと思う。

  • 話し方ではなく聞き方の本で「質問力」的な切り口以外というのは意外と珍しいかも。
    スポーツ系のインタビュアーの文章に触れる機会はほぼないので新鮮でした。

    人は一人であり,「「何でもわかり合える人」は死ぬまでに一人会えれば幸運」というのは大前提だと思いますが,そこからコミュニケーションを否定しないのは大切。

    ・理解し合うには時間が必要
    ・誰にでも必ず話したいことがある
    ・和紙のように言葉を重ね,信頼を重ねる
    ・常識と観察眼
    ・すべての情報を集め,すべての情報を捨てる
    ・マナーとフラットな心

  • この本を読んでやること

    気遣い
    分け隔てなく接する
    ブラックノート
    鏡トレーニング

  • 著者の真摯で誠実な姿勢が読んでいるだけで伝わってくる。読み終わると,自分がぴしっとなるような気がする。
    結構意外だと思うところもある。「聴く」よりも「聞く」が難しい,社交辞令や常套句の再評価…どれも奇を狙っているわけではない。確かに。

  • コミュニケーションは聞くのが8割。
    感想は素直に表現する。
    沈黙を恐れない。

  • この本では次がポイント。
    ・諦めないこと!←これがこの本での一番の学び。
    ・聴くよりも深く聞き取る「聞く」を。
    ・常識やマナーは守るべし。
    ・相手の心に寄り添うこと。
    ・自分の人柄・人間力が大切。
    インタビュアーだけでなく全ての人に勉強になる。

    しかし、そんなに有名人の内面に迫っても人それぞれで得意不得意があると思う。
    精神性の低い有名人の思考・哲学を知って何になる?
    ほとんどの読者はミーハーでインタビュー記事からは学ばない。

  • ≪目次≫
    第1章  「人とつながる」現場から
    第2章  人の心をひらく
        1stステップ 人の心をひらくマナー
        2ndステップ 会話を深めるスキル
        3rdステップ コミュニケーション力を上げる
    第3章 「人間を聞く」ということ

    ≪内容≫
    中田英寿やイチロー、YOSHIKIなどへのロングインタビューで有名な著者の仕事の流儀の本。
    一応、「技術」と銘打っているので、第2章はそうしたテクニックも見られる。ただ、いずれもテクニックも即戦力ではなく(むろん、「聞く力」に即戦力はない)、経験の中で気付き、磨いていったものなで、この本を読んでも、経験を繰り返さなければ身にはつかないもの。そこのところを理解しないと、「技術」に惹かれて読んでも、がっかりしてしまうだろう。
    〇「相手を思う」(心をフラットにして、肩書き雰囲気だけで相手を見ない)
    〇「誰よりもあなたを知りたい」気持ちで臨む(事前の調査は怠らず、徹底的に。ただし、これはインタビューのテクニック。でも、心構えとしては必要)
    〇注意深く相手を観察し、相手の考え方、コンディション等を鑑み、8割聞く姿勢で。そして、相手の言葉を受け容れながら、言葉を返す。
    〇「相手が主役」
    〇「小さな共感」、「小さな信頼」の積み重ねが、大きな土台となる。
    〇相手が自己否定をしてる時は要注意。逆のメッセージの表現である場合がある(自分を肯定してほしいケースあり)
    〇「全身で相手の話を聞こうとする」=「聞いて理解する力」
    〇人の話を聞いて心に残ったメッセージが自分にとってのメッセージとなり、考える機会を与えてくれる。
    〇読書でも「聞く力」は鍛えられる。その読書は音読で。

  • 筆者にすごく興味が湧いた。インタビュー本を読んでみたいと思った。インタビューを受ける側の内面にするりと入っていく点は見事。

  • 人の話って、けっこう流して聞いてたな~って思う。

    聞くときの留意・意識。少しずつ実践していこう。

    和紙を重ねるような会話・・・できたらいいな。

  • 文章は決してうまいとは思わないけど、ところどころにゴツっとした面白みがある本。“難しい”と思われる人とコミュニケーションが取れる、率直さ、素直さ、飾らない人柄がうらやましい。

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著者プロフィール

一九六二年横浜市生まれ。広告代理店
勤務などを経て八九年より執筆を開始。
主題は多岐にわたり、人物ルポルタージュ、
ノンフィクション、インタビューなどの作品を発表。
著書に『YOSHIKI /佳樹』『全身女優 私たちの森光子』
『五郎丸日記』『それってキセキ GReeeeNの物語』
『虹色のチョーク 働く幸せを実現した町工場の奇跡』
などがある。

「2020年 『M 愛すべき人がいて 愛すべき人がいて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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