働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
- メディアファクトリー (2010年12月31日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840136617
作品紹介・あらすじ
7割は休んでいて、1割は一生働かない。巣から追い出されるハチ、敵前逃亡する兵隊アリなど「ダメな虫」がもたらす意外な効果。身につまされる最新生物学。
感想・レビュー・書評
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無駄を愛し続ける。効率ばかり追及しない。一見無駄なものでも、実は長い目で見れば意味があるということ。惑わされないようにしなければと思いました。バッサリ切るのではなく、ちがう角度からもう一度確認してみるのもよいと思いました。
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副題にあるとおり、人間の視点から見ることで、私たちの生活に参考となることがあるかもしれない。
各章末には、まとめがあるので復習するのには良いかもしれない。著者の意図がわかり、ミスリーディングなし。
・齢間分業
・フリーラーダー(ただ乗り)
・チーター(だます者) -
ダーウィンの進化論を勉強する必要を感じる。
著者の方は生物学者であり、無理矢理人間の行動に結びつけることは避けているが、非常に興味深い内容。
自分の意志を持っていない真社会性の生き物たちを根気良く調べているのも頭が下がる思いだが、いつの日か役に立つこともありそうな感じ。
どこの世界でもサブのメンバーが控えていることによる重要性、企業にも当てはまるところもありそうだ。 -
進化生物学の話だけど、一般読者向けに文章も平易で分かりやすい。「働かない働きアリ」という一見非効率的なシステムはなぜ存在するのか? ハチやアリにも過労死がある? 本当に働かない利己的な裏切り者チーター(cheater)の出現など、小さな昆虫の社会にもいろいろあって面白い。
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これはもう「こういった類の話が好きかどうか?」で☆の数が全然違いますよね。私は好物です。
語り口がやさしく、わかりやすいところもイイ。(フレーズでいっぱい引用しました。ブログモードにして読んでみてください。)
全てのアリが働いたら仕事量upするけど「一定時間仕事が滞るとコロニーが死滅」という前提条件を加えると、全てのアリが働いていない方がコロニーは長く続く。
卵や幼虫はいつも唾液で舐めて殺菌しないと!一日でも怠ると卵全滅しちゃうから。
みたいなことを丁寧に、学者さんが「一般ピープルにもわかりやすく、どうしても伝えたい」熱意をもってやさしく教えてくれます。
人間の社会に置き換えてみるとどうか、とか、
多様性を人間に置き換える。
みたいな本ではなく、「純粋にアリの本」です。
逆にこの本を読んで、人間の多様性を感想として書くと、その人の個性というか、ヒトに対して思っている考えダダ漏れになると思います。 -
社会性生物を研究する著者が、ハチやアリのなどの真性社会性生物の生態から、社会性の意義と進化の向かう先について論じる。
まずはこんな途方も無く大変な研究があることに驚いた。
働かないアリは働く意思をもっておりそれぞれの反応閾値が違うだけだという。仕事量に応じ働き始めるタイミングが違う。反応閾値が全て同一のコロニーがあったとしたら、短期的労働効率はよいがムシは過労死してしまう。働かない予備能があるコロニーのほうが長期的に見て発展する。
進化の究極の目標は適応と種の存続であるが、未だ完全なる個体が出現していない。
変動する環境の中では短期的には非効率的なことであっても、長期的には労働効率が向上し永続的に種が存続する進化のほうが有利である。
人間社会においても、短期的労働効率ばかりに目を向けるのではなく、一見ムダに思えることにも大きな意義があることを知った。
環境変化の中でいつ必要となるかはわからない予備能を持ち合わせていることが、長期的に存続し労働効率が向上するためのカギになるのだと思った。 -
"アリの生態を研究している方の本。本当に大変な地道な調査をしてアリの生態を研究していることがよくわかる。また、とても興味深い生き物。
小さい頃は、アリさんをじ~~っと見ているだけで、時間が過ぎていっていた。そんなことを思い出しながら。
おもしろかった。" -
ちょっと難しいところもありましたが、概ね参考になりました。ハチやアリには働かない(感度が鈍くて働けない)ものがいて、上手く成り立っているという話です。
人間の社会も同じようなところがあって、目先の効率や利益ばかりを追っていてはダメになるという意見には共感します。 -
ネット記事で紹介をみて、ネット書店でその本を買う。でもまだ紙の本は手放さないぞ。
この本はまさにそんな風に知ってそんな風に買った。一般向けの書物として軽いタッチで描かれているが、実にまじめな生物学の本である。しかし、生物学といっても真社会性生物といわれる、社会を作る生物を扱っているので、俄然、人間という社会性生物の生態と対照されることで、「身につまされる」のである。
社会を作る生物というとハチやアリは誰もが思い浮かぶところだろうが、『新世界より』でネタになっていたハダカデバネズミから、粘菌の一種までいろいろあるという。
何しろタイトルにもある、働きアリが働いていないというのが、衝撃的というか、面白くて買ったのだ。実際、ある瞬間をとると、7割くらいの働きアリは働いていない。つまり休憩中。休憩が終われば働き出すのだが、それでも、2割くらいのアリは一生働かないのだそうだ。そういう話を人間社会、端的には自分の周囲の状況に照らし合わせて、「身につまされる」と思うわけだ。
ではなぜ働かないアリがいるかといえば、いくつか理由があるが、ひとつは個々の個体の知的能力が低い集団が状況に応じて適度に労働力を供給するためであり、また、いざというときの予備力として必要と説明される。後者の理由は、現代の人間社会が効率ばかりを求めるあまり、実は長期的には社会の生存に適していない状況に陥っているのではないという警鐘となる。
しかしながら、前者の理由にあるように、個々の個体が高度な知的機能を持った人間の社会と単純な反応しかできない個体によって構成されるアリの社会を比べるのは実は詭弁である。それは筆者もわかっているのだが、それでも人間と引き比べたくなるのが、面白いところ。基本的に生物の行動原理は自分の遺伝子をよりたくさん残すことを目的とするという前提に考察されるが、目下、苦闘を強いられている独裁者たちをみても、アリと一緒みたいだし。
そして、「働かないアリ」とは、自嘲的に筆者たち生物学者たちのことでもある。こうした研究がネットで紹介されたら「なんてひまな奴らなんだろう」と書き込みがあったそうだ。いわゆる会社の仕事はしていないし、すぐに役に立つこともしていないし、でも、夏のさなかにアリのコロニーを探して歩いて、働かないアリの数を数えたり、すごく大変らしい。そんな面倒なことを飽くことなく続けているなんて、なんてひまな人たち!
本書は200ページに満たず、とても薄いのだが、700円を越える。本も高くなったものだと思ったが、もしや、このメディアファクトリーという会社、働かない社員を飼っているので、本の値段が高くなってしまうのであろうか。 -
進化生物学者が、アリやハチのような特殊な集団構成をもつ生物(昆虫)の行動の実態を研究・解明した、画期的な著作。
著者が対象としたのは、単に群れを作って行動する生物ではなく、繁殖を専門にする個体(女王アリ・女王バチ)と労働を専門にこなす個体(ワーカー。働きアリ・働きバチ)からなるコロニーと呼ばれる集団をつくる「真社会性生物」と呼ばれる生物である。
生物進化には、「子どもをたくさん残せる、ある性質をもった個体は、その性質のおかげで子孫の数を増やし、最後には集団の中には、その性質をもつものだけしかいなくなる」という大原則があるにもかかわらず、真社会性生物のワーカーは多くの場合子どもを生まないので、「子孫の数を増やす」という法則とは矛盾する性質が進化してきた生物であり、これはチャールズ・ダーウィンが謎と考え、昔から生物学者の注目を集めていたのだという。
そして、その研究の結果、以下のような面白い事実が判明したという。
◆コロニーの7~8割のアリは、何もせずに休んでいる。働くアリだけを選抜したコロニーでも、働かないアリだけを残したコロニーでも、やはり、一部のアリは働くものの、7~8割のアリは働かない。これは、それぞれの個体に「反応閾値(仕事に対する腰の軽さの個体差)」があるためであり、疲労という不可避の要素を考慮すると、働くものばかりのシステムよりも、働かないものを常に含む一見非効率的なシステムの方が、長期的な存続が可能となるためと考えられる。
◆多くのアリ・ハチではコロニーには普段はメスしかいない。ミツバチのオスは新しい女王バチが交尾を行うごく短期だけ現れ、役割を終えるとエサを与えられず、巣から追い出されて死んでしまう。
◆自ら子どもを生まずに、他者のために自らを犠牲にして働くワーカーがどうして存在するのかについては、手伝う相手は血縁者であり、それが生む血縁個体を通して利他者の適応度が上がるという「血縁選択説」と、血縁関係がなくとも、群を作ることに大きなメリットがあるという「群選択説」がある。
著者の「働きアリの2割ほどはずっと働かない」という研究結果が新聞で取り上げられたところ、翌日の新聞に「この研究やった人ヒマだよね」という読者の投書が載ったというのは何とも笑える話だが、人間社会を考える上で、参考になるような、ならないような、ちょっと楽しい一冊である。
(2013年3月了)
著者プロフィール
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