沈没船が教える世界史 (メディアファクトリー新書 16)

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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840136648

作品紹介・あらすじ

海底には、財宝と「真実」が眠っていた。キャプテン・キッド、無敵艦隊、元寇、ローマ帝国…。世界史の常識を覆す「新発見」の数々。いま注目の水中考古学を知る。

感想・レビュー・書評

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  • 沈没船ってなんだかロマンがありますね。
    『タイタニック』の映画を思い出すと、沈んだ当時は大惨事なのですが、時代を経て、残骸から昔のお宝などが発見されたりするからです。
    2009年に開催された「海のエジプト展」も非常に面白かったため、タイトルに引かれて読んでみました。

    水中の沈没船は地表のものよりも保存状態が良く、つい昨日沈んだばかりに見える数千年前の船が、ある日突然発見される可能性もあるのだとか。
    やはり海にはまだロマンが眠っているようです。

    イギリスがスペイン無敵艦隊を破ったアルマダの海戦の裏の事情も紹介されています。
    イギリス艦隊の副司令官フランシス・ドレイクは、海賊行為をしながらマゼラン海峡を突破したんだとか。
    彼は祖国の英雄ですが、スペイン人には海賊扱いされているそうです。

    映画やディズニーランドでおなじみのカリブの海賊は、18世紀に活躍したとのこと。
    「黒ひげ」の話が紹介されていました。
    黒ひげ危機一発のモデルですね。
    スチーブンソンの『宝島』は、海賊キャプテン・キッドの隠した財宝がどこかに眠っているという伝説がベースになっています。
    海賊が元ネタとなっているものは、案外多いことに気がつきます。

    「三角貿易」とは、ヨーロッパで武器→西アフリカで奴隷→西インドで砂糖→ヨーロッパ、の三角形。
    社会の授業を思い出しました。

    ヴァイキングは好戦的というより、交易を主な目的として各地に植民していった民族だとか、日本一島が多い県は長崎(971島)だとか、興味深い雑学が文中にいろいろと取り込まれています。
    元寇の「神風」は台風のことで、瞬間最大風速が約55m。
    洞爺丸台風に匹敵する強さで、海上交通の難所の伊万里湾にいた元の船はぶつかり合い、大きな被害を出したそうです。

    著者が携わっている海洋考古学の調査法についても紹介されていました。
    ダイバーが発見した与那国海底遺跡のイメージが強いですが、そんなきれいな海にもぐることはないのだとか。
    透明度の高い海に沈んでいる船は、すでに発見されて引き上げられているため、見つけにくいヘドロの漂う汚い海に潜ることがほとんどだそうです。

    海洋研究者の悩みもつづられます。
    生活の為の漁業者に、遺跡が知らず破壊されてしまうケースが多いのだとか。
    特に底引き網漁の盛んな海域に被害が多いそうです。
    ウォーターフロントの不動産物件も、古い時代の沈没船の上に建っている可能性があるのだそうです。
    日本もよく調査してから埋め立てしないと、貴重な歴史資料を発見できずに終わってしまいそう。

    また、沈没船などの水中遺産を人類共通の文化遺産とせずに、宝として盗む盗掘者が研究者にとっての敵。
    オークションで好事家の手に渡ったら、もはや手を出せないそうです。
    水中文化遺産保護の必要性が叫ばれ、2009年にユネスコが「水中文化遺産保護条約」を採択し、20カ国以上が批准したそうです。
    ただ排他的経済水域の扱いを巡って折り合いがつかず、アメリカ、イギリス、日本はまだ批准に至っていないのだとか。
    日本もまだだとは。遺跡の破壊や盗難防止のために、一刻も早く協定が結ばれればよいのですが。

    水中考古学の歴史はまだ50年という新しい学問。
    世界中の海にはまだ300万隻の沈没船が眠っているそうです。
    改善点は多いものの、やはりロマンがまだまだ残っている領域だなと思いました。

    • diver0620さん
      おもしろそうですね!ノーマークでした。
      ダイバーとしては水中考古学ってすごく気になる分野です。読んでみたいと思います。
      おもしろそうですね!ノーマークでした。
      ダイバーとしては水中考古学ってすごく気になる分野です。読んでみたいと思います。
      2014/04/04
    • リカさん
      diver0620さん、コメントいただいていたのに長らく気づかずにすみません!
      お名前のとおりダイバーなんですね。水中考古学者はみんなダイ...
      diver0620さん、コメントいただいていたのに長らく気づかずにすみません!
      お名前のとおりダイバーなんですね。水中考古学者はみんなダイバーライセンス所持者というのが意外でしたが、考えてみれば当たり前なんですね。
      ダイバーの方が読まれたら、さらにおもしろいと思いますよ!
      2014/07/08
  • 読みやすく面白かった。
    水中考古学がもっと発展して、歴史上の発見がたくさんなされるといいですね!

  • 海の先に陸があるともわからずに航海するなんて大冒険だなー。地球儀を見ながら読みたくなる本です。面白かった。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    沈没船の積載物を調査することで多くの発見があったことは聞いたことがあったが、それが水中考古学という研究分野が存在することは初めて知ったような気がする。
    世界の沈没船に関する解説も面白く読むことができたが、やはり元寇の沈没船に関する部分が最も面白かった。
    著者の説明では水中考古学は比較的に新しい研究分野で今後も多くの沈没船や水中遺跡が発掘されることが示唆されており、楽しみだ。

  • 考古学に無知なダイバーによる沈没船からの遺物取得、陸地の発掘より海底の沈没船発掘の方が考古学上、今まで知り得なかった歴史の真実を知るためには大きな可能性があることも分かった。しかし、沈没船に至るまでの記述が長いこと、沈没船の記述に関しても断片的でイマイチ。

  • 成毛眞さんが紹介し、その後、naichiさんから直接本のキュレーター勉強会二軍キャンプで紹介を受けていたので読んでみることにした。歴史大好きかつ探検大好きな私にはたまらない一冊となった。

  • SR1a

  • 2010年刊行。テキサスA&М大学博士課程在学。水中考古学(海底等に眠る遺跡・遺物を陸上考古学と類似の方法論で発掘採集し、保存しつつ解析・分析する学問)の見地から、西洋の大航海時代の在り様・沈没船の分析結果、元寇(日と越南)による沈没船の分析をざっくりと解説。学問の黎明期とはこういう感じなのかな、という意味でも面白い。蒙古襲来絵詞に描かれていた「てつはう」と思われる遺物を長崎県鷹島近海で発掘、日元船に満載された銅銭、英国に敗れたスペイン無敵艦隊は実は寄せ集め船団の可能性など、史実の逆転・補強に資する。

  • 新書文庫

  • ダイバー的にはすごく気になる水中考古学の世界。
    本書は沈船からのアプローチ。「第4章 沈没船発掘マニュアル」からが俄然面白い!

    水中洞窟内の遺跡の発掘などの世界もあると聞いていますが、日本で本格的に行っている大学はないものか・・・と思って探したら、学会やらいろいろあるのですね~

    具体的に参加できるような活動をしていきたいと思います。

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