短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

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  • メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840138642

作品紹介・あらすじ

めくるめく言葉のワンダー。読者から寄せられた短歌の数々を、人気歌人が講評する実践的短歌入門。

感想・レビュー・書評

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  • 短歌くださいの第一弾(2008年5月から2010年10月)
    最初は編集部の皆さんから募集したり、穂村さん自身の歌を紹介していたりして初々しさを感じます。
    イラスト担当の陣埼草子さんの歌もあります。このころからシラソさんのお名前もあって常連さんの凄さを感じます。お題に対するつぶやきがまた穂村さんらしさ感じて嬉しくなる。
    「連載は続きますから、もっとください」トークイベントではまさかこんなに続くとは思わなかったと感慨深げにおっしゃってました。

    「時がながれて現実の状況がどう変化しても、恋が消えても、つくったひとが死んでしまっても、歌の煌めきだけは永遠に残る」
    「頭痛薬や胃腸薬以外にも、飴玉とか言葉とか眠りとかキスとかビンタが薬になるケースもありますよね」
    「私は爪を噛むのが止められないのですが、ひとによっていろいろな癖がありますよね」
    掲載されたどの歌も素晴らしいですが、特に気になった歌を抜粋

    銀行で暗証番号入れるたび隣の君にゴメンと思う(編集部S)
    カーナビが「目的地です」というたびに僕らは笑った涙が出るほど(晴家渡)
    ブティツクのたくさんの服はひらかれてそしてたたまれましたおやすみ(陣埼草子)
    深夜2時テレビはザーザー言っている僕の心をニュースにしてる(木下侑介)
    イカ墨のパスタを皿に盛るように洗面器へと入れる黒髪(麻倉遥)
    腕組みをして僕たちは見守った暴れまわる朝の脱水機を(穂村弘)
    とびだしたクリームパンのクリームを舐めとるくらいの気持ちでいる朝(いさご)
    きみのくび切り取り線が描かれてた大丈夫だよわたしがまもる(シラソ)
    「動物と人間のちがいなんですか?」倫理のテストにすごい嘘書く(ゆり)
    さよならをしてから大体2時間後 なに話してたか分かり始める(たかだま)

  • 愛読雑誌「ダ・ヴィンチ」のお気に入りのコーナーが本になっていたんだ?!
    図書館の“ヤング”のところに展示してありました。
    え?ヤング専用?…っていぶかしく思ったけれど、若い人にぜひ読んで欲しいということなんでしょうね。

    短歌、詳しくないので、現代の有名歌人の名前も知りませんが、名もなき人たちの歌、響く。
    街で何気なくすれ違った人の、心の中にもこんな感性が、もしかしたら潜んでいるのかもしれないな。
    「こわい歌はいい歌」だそう。

    幸いなことに、一冊目だった。
    続きも読もうと思う。

  • 『ダ・ヴィンチ』連載コーナーをまとめた本。
    読者から投稿された短歌にほむらさんがコメントを付けていく、という構成です。
    雑誌を立ち読みしているときから、投稿者のみなさんの作品がすごすぎて目を白黒させていたのですが、1冊にまとまるとより一層まぶしく見えます。

    各々の目を通して見えた世界が31文字の中に凝縮されていて、一首一首に新鮮な驚きを感じました。
    いろいろな方の作った歌を読むと自分の好みの短歌も見えてきます。
    私は絵画で言うとマグリットとかダリのような世界を感じさせる歌が好みなようです。

    はっとさせられるのは、意外性があったとき。
    普段は組み合わさることのない言葉や現象が、31文字の世界では隣り合い絡み合って、ちょっとびっくりするきらめきを生み出すのです。
    そのきらめきは中毒性があるようで、もっともっと見たい気持ちになってしまうのです。

  • 短歌ってこういうものなんだ、と初めて知った。
    「何か物事を見て、自分がこう感じた」までを書くものだと思っていたが、実際は「何か物事を見た」だけでも良い、というごく当たり前のことを学んだ。
    色んな人の短歌が読めるので、こういう目線で見ているんだなと新鮮で面白かった。

    短歌とは自分の周りにある繰り返し行われる何気ないこと、一生に一度しかないこと、その切り取り方に妙を見出すものなのかな、という感じがした。
    わたしは一生に一度しかないな、と頭でわかっていてもそのかけがえのなさをなんとなく流してしまうので、もっとこういう視点が必要だと思う。

    穂村弘さんの受けもとても良く、一見よくわからない短歌も、なるほどこういう意図で詠んでいるのかと感心することばかりだった。
    顔も知らない他人の31文字の意味をきちんと理解して解説するというのは多分すごく難しいことなのではないか。

  • 【森の中の図書館大賞 ノミネート作】

    雑誌「ダ・ヴィンチ」に掲載された読者の短歌をまとめたもの。ビリビリくる作品ばかりです。「こんにちは私の名前は噛ませ犬 愛読書の名は『空気』です」が一番衝撃を受けました(笑)

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • なんだか急に短歌なんです(笑)
    このシリーズは前から読みたいと思っていたもので、どうやらその時がきたようです。

    「初心者歓迎」という穂村さんのお言葉に甘えて、構えずに短歌の世界を楽しめました。
    若い方たちのハッとすることばの使い方がすてきだったり、全く知らない方の苦しさが自分と重なって涙が出そうになったり、たった30字前後の文字の並びなのに不思議です。

    「たぶん普段は忘れているんだけど、我々の日常の根底には、生の奇蹟性といったものがあって、短歌というレンズで「今ここ」を拡大したとき、それが一瞬みえることがある。その意外な姿に驚きながら、同時に「やっぱり」と納得するのではないか。」p50

    一首ごとにある穂村さんの解説が、短歌の講義を受けているようでとても面白い。
    作品と自分とが一対一で放り出される詩歌集と違い(だから苦手なんだよな)、ここでは「ホムラ先生」が付いていてくれるのでなんと心強いことか。私一人ではきっと作品の入口を眺めてすごすご引き返すところ、そこに潜む感覚や情景を驚くほどの感性で拾い出し、そのドアを開けてもっと中へと導いて、そこに広がる景色を見せてくれるのです。

    短歌に心を奪われると、日常会話中「あ、いまの5・7・5だわ」とにやけてしまったり、世界のすべてを31文字にしてやりたいと思ったりするものですね。
    今月のお題、調子に乗って提出してしまいましたよホムラ先生。

  • その一つ前に読んだ京極作品に、プロの手腕を感じたのだとしたら、こちらはプロではなく普通に暮らしている人でも、世の中にはこんなに感性豊かな人達で溢れかえっているんだなぁ!ということです。

    「まっすぐにぶつかってきてくれるぶん雨は君よりやさしいものだ」とか、17歳の女の子が詠んだというこのヒリヒリ感がたまりません。

  •   また朝がきた と思ったら あっというまに夜になった。

    良く剥がし忘れる(日めくり)のカレンダー。

    まだ今日だけど、ペリッと剥がす。

    もうすぐ終わる今日。

    もう戻らない一日。

    くしゃっと丸めた瞬間のことを思い出してしまった。


    手のひらに収まる一日に、
    私は何を見ただろう?

    胸がドキドキしてきた。

    これはごみ、なのか?
    捨ててしまっていいものなのか?

    『短歌ください』に集まった歌は
    鮮やかに日常が、今日の歌が、恋心が、おかしかった事が、謎が、
    どうでもいい事が、活き活きと綴られていた。

    思い出した、としても

    歌と化した、としても

    一日がそんな形で蘇った、としても

    何が変わるものか。

    そうも思えたが、

    手の中にくしゃくしゃは

    (それでも…)と、何か言いたげであった。(気がした)

    歌、って面白い。

    そう思えた穂村弘選の歌集。

  • 何の気なしに手を伸ばした初めての歌集。
    大変に面白かった。感動。
    一般の人から応募された作品たち、っていうのもまた良かったんだと思う。
    「世の中にはこんな素敵な言葉を紡げる人たちがたくさんいるんだなあ」とわくわくした。
    鋭い批評にぎょっとしたり、濃い闇を見てぞくりとしたり、声を上げて本気で笑ったり。
    自分の感受性をじゅくじゅくと刺激されているような感覚がたまらない。
    一首一首の穂村さんのコメントもいい。
    納得させられたり、共感させられたり、「深読みしすぎでは?」と反論したくなったり。
    誰かとああだこうだ言いながら読んでる気になれる。
    しかし流石、褒め言葉まで美しい。
    短歌、はまってしまうやも、やも。

  • 穂村さんのせいで短歌が気になってきてしまっている今日この頃です。この「短歌ください」は、ダヴィンチのコーナーでたまに読んでいましたが、やっぱりなんというか、みなさんの目のつけどころや発想に驚くばかり。面白かったです。自分も真似して詠んでみたくなります。

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著者プロフィール

穂村 弘(ほむら・ひろし):1962年北海道生まれ。歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌にとどまることなく、エッセイや評論、絵本、翻訳など広く活躍中。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』、『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『絶叫委員会』『にょっ記』『野良猫を尊敬した日』『短歌のガチャポン』など多数。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、2017年、エッセイ集『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、2018年、歌集『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。

「2023年 『彗星交叉点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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