2100年、人口3分の1の日本 (メディアファクトリー新書 24)

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  • メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840139038

作品紹介・あらすじ

日本の人口は、現在の1億3千万人が50年後に9千万人に、100年後には4千万人にまで減ると予想されている。この変動が政治や経済や労働環境、家族関係や恋愛のあり方までをも大きく変えてしまう。それは、滅びゆく寂しい社会なのか、それとも意外なユートピアなのか?歴史人口学の第一人者が数々のデータを駆使して描き出す、人口という名の未来予想図。

感想・レビュー・書評

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  • 2011年に既にこの本が出ていたとは。
    早くからこの予想を知ることはできたのだな。
    最近は人口減についての本はたくさん出ているが、顕在化していくこれからは、さらに増えていくに違いない。

  • 2007年の日本総人口1億2777万人から2055年には8993万人、2105年には4459万人。

    世界で人口爆発が問題化していたこともあり、1970年代の日本は出生率を抑えこもうという機運があった。出生率低下は多産多死→多産少死→少産少死に移行する。その要因は1.乳幼児死亡率の低下(不必要に多産でなくてもよくなった)、2.結婚と出産の不必要化(農業社会→工業社会への転換)、3.現代文明への不安感。

    人口増加は、食料生産、さらに言えば土地の面積に依存する。生産が追いつかないため、人口増加は確実にストップする(マルサス)。産業革命で人口支持力(収容力)は格段に増加したものの、結局人口過剰による受胎調節が始まり、少産少死に移行した。環境と鉱物資源の限界は避けられない。

    農耕技術は、人口密度が高まったときにイノベーションが起こる(ニーズ発生により)。また、過去の日本は技術が成熟した際に4回(4回めはいま)人口減少が発生した。新技術の到来で増加した。

    2050年には先進国がだいたい人口減少に陥る。新興国は、中国インドの増加ベクトルは逓減する。日本が人口減少に陥る中で、これまでと同等の経済成長を確保するためには、一人あたりGDPを4.9倍程度まで引き上げなければならなく、厳しい。経済維持がやっとである。2055年には生産年齢人口=従属人口(年少人口+老年人口)になる。その対策として求められるのは、1.労働従事者の増加、2.移民の受け入れで、1に関してはⅠ.高齢者の労働参加とⅡ.女性の社会進出がある。

    明治初期は女性も労働(農業)に従事していたが、サラリーマン化とともに分化が進み(M字カーブの形成)、その後バブル崩壊を機に労働力率向上が進む。一見、出生率と労働力率は相反し合うように思えるが、官民一体となれば不可能ではない(ヨーロッパの事例)。日本では、男性による家事・育児の参加が求められている。

    日本の成熟過程(人口減少局面)では都市集中が緩和され、中央の文化が都心に拡散したが、今回はそうでもなく、むしろ人口集中が加速すると思われる(首都圏の老年人口の増加による社会保障費の増加から、それを逆に捉える説もある)。今後は地方の自然死が加速するだろう。これまで人口増加とともに住む所が増えてきたのだから、減るのも必然。むしろ、都市の集約化を進めたほうが、相互扶助による内的発展に寄与するだろう。今後は、マクロ環境や自然環境と対立せず、人間関係の形成を前提とした形で過疎対策に取り組めばよいのではないだろうか。

    1920~50年の世帯の規模は平均5名だったが、2012年には2.46人になっている。これは少子化と住み込みで働く人の減少と一人暮らし増加と核家族化による。核家族化は農業→工業シフトに伴う都心集中などに関係している。ちなみに、東北は血縁関係が強く、西日本は地縁が強い(気候か?)。今後は(死に別れも含め)高齢者の一人暮らし世帯が増えていくだろう。

    離婚の意味合いが異なるとはいえ、1900年初等の離婚割合は今より高かった。ただ、近年の熟年離婚の多さは注目に値する。

    今後の生産年齢人口縮小を補うために、海外から移民を入れるという方法もある。人口を維持するためには2050年までにあと1714万人(全体で2250万人。人口の18%)、生産年齢人口維持のためにはあと3233人(4600万人,30.5%)が必要。現在が216万であることを考えると、大胆な政策になる。かつては0.8%だったところ、プラザ合意(1985)後のバブルとともに人口増加。現在1.7%。しかし欧米諸国は軒並み5%以上、アメリカは12%。

    GDPに対する輸出は16.1%、輸入は15.6%。ドイツは40/33、韓国は45/47。貿易依存度は170国中164位。仮に鎖国したら、石油も入ってこなくなるため、生産性は低下する。日本の歴史を見ても、他国との関係悪化or鎖国時代は低成長だった。ただ、外国人が増えると、文化の違い(騒音)や日本語を話せない子供の問題などが起きる

    今後、全世界で人口が拡大していくが、そのとき食料も資源も水も足りなくなる。食糧問題を変えようとすると、環境問題に直面する

  • 昼休みの間に一気に読んだ(何回かコックリコックリしたけど)。
    各章ごとにポイントがまとめられているので、要点は掴みやすいが、そう容易な内容でもないのに。
    まぁ、ちきりんのBlog記事がなかったら、全く頭に入らなかっただろうな。


    [private]第1章
    ◎将来人口の推計は、「このまま何も対策を講じない場合」の警告として受け止めること。
    ◎日本政府は1974年に「出生を規制すべき」と明言していた。
    ◎出生率が下がった大きな要因には、現代文明の行き詰まりに対する不安がある。
    ◎「人の数は食料生産数よりも増え方が大きいため、人口は増え続けることが出来ない」とするマルサスの人口原理は現在も生きている。
    ◎日本列島では4階の人口変動が起こっていて、現在は4度目の減退期にあたる。
    ◎過去の変動との違いは、エネルギー資源や原材料があまり残っていないこと。そのため、人口が再び増加することは期待できない。

    第2章
    ◎2050年に日本の人口順位は17位まで後退し、世界の経済情勢は大きく変わる。
    ◎経済成長の持続、あるいは生活水準を維持する為には、大胆な産業構造の改革が必要。◎21世紀は「支えられる側」が「支える側」を上回る人口オーナスの時代。
    ◎のんびりと年金生活を営むフランス人と違い、日本では多くの高齢者が高い労働意欲を持っている。労働力の担い手を増やすため、高齢者の定義が引き上げられるかもしれない。
    ◎女性がもっと社会で活躍し、夫と一緒に安心して子供を祖だれられる社会に。
    ◎そのためには伝統的なジェンダー観から抜け出すことが大切。

    第3章
    ◎歴史的には人口が増える時には特定地域へ集中し、人口が停滞すると集中度は低下してきた。
    ◎今回(4度目の減退期)は例外で人口が減っても東京圏や名古屋圏への集中度が更に高まると予想されている。
    ◎ただし、将来は都心ほど「支える側」の負担が増すので、人口の一極集中は和らぐかもしれない。
    ◎2050年までに数千もの集落が消滅し、都市の集約化が進む。
    ◎新しい都市造りや集落の移転には、土地所有者との感情的な衝突が伴う。

    第4章
    ◎今後は一人暮らしの老人が劇的に増え、2030年に700万人に達する。
    ◎戦後になってから核家族をつくってきた日本人は、一人きりの生き方に慣れていない。◎「人生90年」の時代には人間関係の問題から、三世代同居をためらう家族が増える。
    ◎「ほどほどの距離感」と「緩やかな関係性」で世代間が助けある家族社会に。
    ◎結婚に「適齢期」はなくなり、子供づくりを目的としない新しい結婚文化が生まれる。◎既存の自治体や世代を超えた地域コミュニティが作られる。
    ◎学校はコンパクト化し、学生や世代を超えて友人を作る時代に。
    ◎世界に向けて発信する為の外国語教育が進み、中国語などを学ぶ人も増える。

    第5章
    ◎国内労働力を維持する為には外国人の労働力を大量に取り入れる必要がある。
    ◎減る分の労働力を総て移民で補うと、2050年には人口の3分の1が外国人になる。
    ◎外国人の受け入れは農業や工業、医療、IT分野で進んでいるが労働環境に課題あり。
    ◎日本の貿易依存度は世界でも最低レベル。諸外国との分業的な連携が必須。
    ◎食料自給率100%も夢ではないが、その場合は国民の大半が農民になる。
    ◎日本人口が増えるのは、例外なく外部の文明を取り込んで言った時代。
    ◎東京の大久保、群馬県の大泉町のような外国人街が各地に増えていく。
    ◎アジアを中心に、外国人と結婚する人も増えていく。

    第6章
    ◎21世紀中に世界中で人口増加がとまると予測されているが、問題はそれまでに人口が膨大な数に膨れ上がること。
    ◎発展途上国の人口増と経済発展によって、世界のGDPは数倍に拡大する。
    ◎今後、食料需要を補うための農業開発には常に環境問題がセットになる。
    ◎食料と同じく資源やエネルギー不足が深刻になる。
    ◎地球が支えられる人口は多くて100億人。すでに限界が近づいている。
    ◎しかし2050年以降、世界人口は停滞的局面に入る可能性が高い。
    ◎世界に先駆けて人口減少が始まった日本には、イノベーションを率先する役目がある。◎新しい文明システムを作るには、異文化との積極的な交わりが必要になる。[/private]

  • 人口関連のニュースを読み取る必要のある人におススメ。人口減そのものが国策だったという認識はなかったなあ。その後もPDCAサイクルが回り軌道修正されるところまで制度設計されてなかったのが不幸の始まりか。

  • 今後、日本が人口減少するにあたって、マクロな視点からの対策を述べた一冊。

    もう少しミクロな視点での分析や今後の提言が欲しかった。

  • 2011年刊。著者は上智大学経済学部教授(史学寄り)。◆現在、直ちに出生率が増大しても今世紀中の日本における人口減の趨勢は変わらない。予測される中位の指標で見ても、50年後9000万人弱、100年後4500万人。しかも、長期的に見ると、人口増が経済成長と関連してきた史的経験だが、この情勢下で日本の社会は如何に変貌するか。本書はある種の未来像を開陳する。◆福祉が高い関心を引くかもしれないが、むしろ経済面。経済成長率2%との仮定下なら、一人当たりGDPの低減は僅かとなり得るそうだが、国全体GDPは相当低下。
    また、限界集落の問題は勿論、集落や小規模自治体の消滅。かつ、東京圏での人口減・高齢比率増→単身世帯の急膨張。と広く具体的な日本社会像の粗描。◆問題意識。①無主or所有者・管理者不明の不動産(都市部のみならず農村部・森林地域にも妥当)の処理。②コンパクトシティ化。③都市人口減の先駆は大阪・近畿圏(90年代~)。④農業。著者はTPP等の多国間包括協定より、二国間協定の範囲拡充をと。⑤移民。50年間で3000万の人口減なら、1000万の移民労働力が必要と自・民の一部に提言者。なお、建築現場での労働力不足・高齢化
    ⑥資源・食糧の世界的不足。◆確かに、対応策は各々の専門家的知見を要し、歴史研究者の荷に余る感なしとしない(著者自身も不明は不明と認めるところあり)が、簡明に問題意識を持つにはイイかも。

  • 日本の人口は、晩婚化・非正規労働者の増加(所得減)など子供が増えにくい状況になっていることを分析。実は政府が1974年に人口減を提言していたことはびっくり。対策としては、高齢者の活用、女性の社会進出、移民の受け入れ等の大体は予想していた内容。この状況を乗り越えるには結局は社会システムの大きな変革が必要と言うことか。

  • 人口が減少し、2050年とか2100年になると日本の人口は大幅に減るという話は昔から言われている話であるが、本で改めてじっくり読むのは初めてだった。この本では過疎の集落が次づきと消滅し、これに歯止めをかけるためには移民を受け入れ外国人との関係を築いていくべきと述べられていた。そんなことをすると隣の中国とかイスラム移民が大量に押しよせ取り返しがつかなくなると思う。そんなことをするより女性が働きやすい仕組みを作るとか、高齢者も70歳ぐらいまで働ける仕組みを作るとか、そちらに力を入れたほうがいいと思う。

  • 正直そんなに面白くはないよね。誰もが知っているところをうまくまとめるのがこの本の価値かな。

  • 遠いようでそう遠くない2100年の日本。
    人口が3分の1になった日本。
    今とはかなり違った日本になるようだ。
    悲観しているばかりではしょうがない。
    人口は増えればそれでよいということではない。
    社会を営む上で必要な人口を維持することが大切。
    これからの日本社会はどうあるべきなのか。
    日本の衰退ばかりをいう内容ではなく
    人口減少をきっかけとした新しい国作りを提言するような内容だったので良かった。
    でも問題はやはり深刻なようだ。

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著者プロフィール

上智大学名誉教授

「2023年 『日本経済の歴史[第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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