小説・秒速5センチメートル (文庫ダ・ヴィンチ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840148573

感想・レビュー・書評

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  • アニメを見ていてストーリーは知っていたのに、文庫化と聞いて、思わずポチッ。
    アニメを見た時は、ハッピーエンディングになるんだろうと思ってみていたら、すれ違いで終わり、「なんじゃこりゃあ」とショックを受け、もどかしくて切なくて歯がゆいながらも、バッドエンディングでもなかったか?と、なんかシコリの残る思いでした。本も読んだら、ザワザワした思いになるんだろうな、と思ったら案の定ザワザワ。
    でも、小説の方が救われる。

    決して、読後感はいいわけではない。なんでこんなにすれ違うんだろう、とイライラにも似たザワザワが心を締めつけてくる。主人公、遠野貴樹に、なんでもっとうまく人と付き合えないのか?と問いたくもなる(じぶんのことは捨て置いて)。
    「たったひとりきりでいい、なぜ俺は、誰かをすこしだけでも幸せに近づけることができなかったんだろう」ぐっさり突き刺さる言葉。
    会えなくなったら、それは死んだのと同じ・・・。対話編(金城一紀)が思い出される。圧倒的現実、物理的距離によって、人と人は引き離されてしまう。大人になれば、お金という力をもってその距離を何とか取り繕うこともできるけど、中学生や高校生ではね。会えなくなってしまったら、そこまで。
    もうこの歳になると新しい出会いみたいなものはなく、新しい出会いに対する喪失感はない。でも、もう会えないかも、なんて考えたくないね。

    解説を読んで、納得。なぜか解説でも涙ぐんでしまった。そう、このお話は喪失感なのだ。当たり前のようにハッピーエンドや爽快感・痛快感を求めていたところに、ズーンと喪失感を突きつけられる。どう処理したらいいのか悩んでしまうくらいに。でも『それが現実だ』と突き刺さる。

    小説版の方が最後は「次へ」という感じは強い。主人公が新しく前へ進む感じで終わっている。そういう意味では、アニメより救われた感じを受けた。
    やっぱり、文字表現だと心情の吐露が多くなって、物語に深みを感じる。解説にある通り、読み手に作中時間の進行が委ねられるから、深みを感じるのだろうな。

    「もし自分に犬みたいな尻尾があったら、きっとぶんぶんと振ってしまっていたと思う。ああ、私は犬じゃなくて良かった、・・・・」の表現がすごく好きで心に残っている、アニメを見た時から。こんなに素直に人を好きになって、素直に感情表現できることがうらやましい。そういえば最近はネコ耳が商品化されたとか。
    「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」・・・きれいな響き。
    もう一度アニメを見たくなった。山崎まさよしの「one more time,one more chance」が切なく響く・・・いつでも捜しているよどっかに君の姿を明け方の町桜木町でこんなとこにくるはずもないのに・・・

    やはり心ザワザワ。人を好きになること、人と付き合うことには必ず喪失があるという現実を突きつけられるお話。

  • 切ない恋の物語。

    一言で描くとずいぶん陳腐なものに感じられるのだが、少しでも触れると崩れてしましそうな微妙な心理状態を、淡々と描いている。

    元は著者の映像作品であり、映像では語られなかった主人公の一面を垣間見ることができる。ただ毎日を漠然として生きている者の、言いようのない絶望感、心から好きになれるけれども充たされない不安を丁寧に描いているのも魅力の一つ。

  • 文章がとても瑞々しい。

  • 同タイトルのアニメ映画作品を、著者みずからがノベライズした作品です。

    物語は、小学生のころの遠野貴樹と篠原明里の思い出、高校時代の貴樹と彼にあこがれる澄田花苗の関係が、そして社会人となった貴樹の胸の内が語られるという三つの連作短編で構成されています。

    触れれば壊れてしまいそうに繊細でみずみずしい青春の心を内に秘めたままで社会人となった貴樹に感情移入できず、残念でした。小説では、当然のことながらく、ことばだけで登場人物たちの心象風景の報告がつづられることになるので、キャラクターによって心情を語らせる映像作品とはちがう印象になってしまうのかもしれません。

    映画を補完するという点では、満足することのできる内容でした。



  • 儚く甘い。きっと、誰しも何歳かまではあったであろう純粋な時代。
    思春期、列車、小旅行、雪、桜、制服、心象風景だな。
    親の転勤の都合で引っ越しを経験した少年と少女。また、親の都合で離れ離れに、時を経てやがて大人へ。

    生きて行く上で、出会いや別れはつきもの。そして、その中では喪失を経験する。喪失感への向き合い方。齢を重ねると色んなことに鈍くなるというか、ふてぶてしくなることもあるが。

    あんなこともあったなーと、耽るにはちょうどいい爽やかな一冊でした。

  • 映画が好きすぎて購入しました。

  • ネタバレ ネットでたまたま出会ったイメージソングの『想い出は遠くの日々』が好きで、本作にも興味が湧き、読んでみた。中村航の恋愛小説のようにするする読める。中村航の気持ちがポカポカするタイプとは違って、新海誠本人が言っているようにテーマは「喪失」であり、切ないが美しい作品。桜を見て雪を想う。雪を見て桜を想う。自分もこういう恋愛をしていたら、違った人生だったのだろうか(喪失したくはないが)。ハッピーエンドではないけど(バッドでもないけど)、本人たちが前を向いているのが救い。アニメ版はまだ観てないので、是非観たい。

  • まさに、読んでると、切なくなる。

  • じっくり噛み締めながら読む感じ
    切ない

  • 映像から入りました。新海さんの作品は大好きですが、小説になっているのは初めて読みました。DVDとは敢えて違うようにしている部分もあると後書きに書いてあるように、DVDとは違うところはありましたが、それはそれでどっちも彼の作品ですし、どちらが良いとか悪いとかはなかったです。何度も繰り返し見ている作品なので、文章を読みながら頭の中に映像が鮮明に映し出されました。読み終わったあと、またDVDを見たくなり、いそいそとテレビをつけました!

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著者プロフィール

1973年生まれ、長野県出身。
2002年、ほとんど個人で制作した短編作品『ほしのこえ』でデビュー。
2016年『君の名は。』、2019年『天気の子』、2022年『すずめの戸締まり』公開、監督として国内外で高い評価と支持を受けている。

「2023年 『すずめの戸締まり(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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