- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840148917
作品紹介・あらすじ
視界が歪み、記憶が混濁し、暗闇が臭いたち、眩暈をよぶ。
読み手を眩惑する八つの物語。京極小説の本領を味わえる怪しき短篇集。
幽けき『幽談』、ほの冥い『冥談』に続く、「 」シリーズ第三弾。
感想・レビュー・書評
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着地点がとても不安定な感じ。良い意味で。
怖いようで怖くなく。
なんてことないようでふっと後ろが気になる感じ。
見える事が怖いのか?見えない事が怖いのか?
見えるから怖いのか?見えないから怖いのか?
そんな狭間にぐらぐらと、立たされているような作品でした。
本の装丁の凝りようもひとつの作品として体感してもらいたい。
文字の色・フォント・空間がとてもその作品を表していました。 -
トイレに眩む第一話。
あの汲み取り式トイレの、どうしようもない気持ち悪さ。
あの描写見事。経験者の感覚をあますところなく、伝えてくれてます。
あと、最後の話。
何が虚で、何が実なのか。誰にとって虚で、誰にとって実なのか。記録は実で、記憶が虚なのか。記録が虚で、記憶が実なのか。
乱暴にいうと、個人個人の知覚したもんが、実。それ以外は虚。
全ては、個人主観で決まること。
でいいですか。乱暴ですが。
そういう感覚が、京極夏彦の小説の伏流水なんでしょうね。読んだことあるの、少ないけれど。
この「」談シリーズだから、余計に思うのかもしれないです。 -
なんとも不気味で気持ち悪い、夢か現か、分かるような分からないような、短編集。何だか、読んでいるだけで、手が汚れるような気がしてしまって、食事中は読めない(誉め言葉)。
読んでいると、怖いってなんなのかよくわからなくなる。あるものはあり、無いものは無いというだけなので、ないはずのものがあれば、それはあったというだけのことで。結局は、なんの解釈もしなければ、単なる現象でしかないということか。あとは、快か不快かというだけで。 -
「」談シリーズ。表紙からしてぐらぐらしてくる。
内容も落ちているのか、おちていないのか分からない。
ああ、気持ちが悪い。
なんかもう、温泉の話なんて本当に気持ちが悪い。
さすが京極の世界。 -
『便所の神様』『歪み観音』『見世物婆』『もくちゃん』『シリミズさん』『杜鵑乃湯』『けしに坂』『むかし塚』八編、一応ジャンル的にはホラーにカテゴライズされているようですが、怖くはない。『シリミズさん』に出て来るモノが端的に本著全体を現していると思う、
”不吉というよりも気が萎える”
そんな短編集。一番ナニな気分になるのが『杜鵑乃湯』これがまた私が小さい頃から繰り返しよく見ている”厭な夢”のシリーズの1つにものすんごく似通っていてキモチワルーーい。とくに、行李で天井から屋根に出て、出ると妙な温泉があるとか、温泉に浸かるとそのまま壁を突き抜けてヌルヌルになるとか、その他細かい設定似過ぎなので、もしかしたら覚えていないだけで原典があるんかもしれない。同じモノを読んだか、、(嫌すぎ)。 -
京極氏の短編集。
どの話も思考と現実の境があいまいな感じがして、それが尚更怖い。
どこまでが現実で、どこまでが妄想なのか・・・。
そして、およそ現実的でない出来ごとの数々。
とても面白く読む事が出来ました。
恒川氏の作品が好きな人にもオススメ。 -
タイトルのように、まるで目くらましのような話が収録された短編集。
読んでたら気分が悪くなるような、眩暈がしそうな・・・とにかく厭~な気分になる話ばかりでした。
そして、またもや装丁が凝ってます。
と言ってもパッと見て分かるようなものでなく、何となく読んでいて「あれ?」と気づくようなもの。
でもその分からない程度なのが余計に気持ち悪くなる。
例えば文字列が上から下へどんどん移動していたり、中ほどのページには薄らと色がついているボーダーラインがあったり・・・。
「あれ?私目がおかしいのかな?」
そんな風に思わされる、脳がちょっと疲れる工夫がされています。
まあ、そういうのも楽しめるからいいんですけど・・・。
「便所の神様」
汚い。臭い。暗い。
木造建ての平屋に住む少年の話。
少年は特に便所が汚い、臭いので厭だと思っていて、さらに天井を絶対見上げてはいけないと思っている。
なのに、ある日、天井を見上げてしまった少年の目に入ったものは-。
これはとにかく、便所の描写が見ていて気持ち悪い。
ある時点で想像するのをやめました。
「歪み観音」
世の中の何もかもが歪んで見えるようになった女性の話。
「見世物姥」
冬の嫌いな少年は祭を楽しみにしている。
少年の村には祭は6年に一度しかやってこない。
6年ぶりの祭の日、少年は前回の祭の日に同級生が神隠しにあった事を思い出し、その事を見世物小屋のおじさんに言う。
おじさんは自分たちは人さらいではないと言うが、そこには大きな箱があり、箱の中身は見せられないと言う。
「もくちゃん」
頭のおかしな男性(この話では「困った人」となっている)、「もくちゃん」。
主人公の少年の同級生はその「もくちゃん」に懐かれていて、「もくちゃん」と呼ばれている。
同級生の一人は、二人の間は怪しいのではないか?というが-。
これが一番面白いと思いました。
不思議で奇妙な雰囲漂う話。
何気に書いてる事にもすごく共感した。
『何か起きてからでは遅いから、何か起きる前に何とかしておくというのが最近の風潮である。その結果、何か起きてしまった時に何もできない-ということになっているような気もするのだが、どうなのだろう。どれだけ念入りに予防したって、その予防線を上回る出来事というのは起きてしまう。起きる時には起きるものなのだ。だから、何か起きた時にきっちりと始末をつけられるように用意しておくことこそが危機管理というものであるようにも思うのだが、どうも最近は違うようである。』
『危なっかしいものは取り敢えず排除してしまう-それが正義だと、かなり多くの人は考えているのではないだろうか。
少し前までは危なっかしいものであっても排除することはせず、寧ろ上手に共存していくことを考えたものだった。』
全く同感!
変な事ばかり書いてるかと思いきや、こうういう非常にマトモな感覚で書かれている。
だから私でもこの人の書く不思議話についていけるのだと思う。
他、「シリミズさん」という薄汚い人形を祀る実家に帰ってきた女性の話、不気味で古臭いホテルに泊まった男性の話など、全8話。
この本を読む前に読んだ小説が全く文章に魅力がなく、続けてこれを読むといつもより描写も文章も巧みだと感じられた。
変な話ばかりだけど、意外にもちゃんとした小説だと改めて思った。