福岡ハカセの本棚 (メディアファクトリー新書)

著者 :
  • メディアファクトリー
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840149273

感想・レビュー・書評

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  • ああ、面白かった。。。!
    福岡ハカセこと、福岡伸一さんは青山学院大理工学部・生命科学科教授。
    専攻は分子生物学という方。
    2011年年5月~2012年3月、ジュンク堂書店池袋本店で開催された[動的書房]。
    その際集めた400冊から厳選し、更に新たな本も加えて100冊のラインナップをつくり、誕生したのが本書だ。
    人生とからめて語る読書遍歴は半ば評伝のような趣。
    精緻で美しい世界に、一気にファンになってしまった。

    図鑑に魅せられ、美しい蝶との出会いが宝物になった少年時代。
    この世に存在するものを同じ尺度をもってほぼ等間隔に並べ、「公平なグリッド(格子)の中に整理されている」ことに陶酔を感じたという。
    また、どんな小さな虫にも名前が付いていることに目を向ける。
    ハカセにとって読書とは、この世界の事物を洗いざらい枚挙し、それらを公平なグリッドの中に並べるという場所からスタートしたのだそうだ。

    科学者になった後も、生物のカラダを分子レヴェルにまで分解し、そこにある要素を徹底して枚挙し、それらに名前をつけるという仕事を続けている。
    ここから地図というキーワードが出てくる。
    「マップラバー(map lover)」と「マップヘイター(map hater)」。

    地図をこよなく愛し、目的地に向かう時は必ずそれを頼りにするのがマップラバー。
    そんなものを必要とせず、自分の勘と嗅覚でたどり着けるマップヘイター。
    世界全体の見取り図を手に入れたいハカセはマップラバーとして、読書遍歴を語っていく。
    専門の生物学に関わる本はかなり多くなる。

    「せいめいのれきし」からダーウィン。同じ進化論をとなえたラマルク。
    ダーウィニズムを推し進めたドーキンスの「利己的な遺伝子」。ファーブルを最初に日本に紹介したのが大杉栄だったとはね!
    そしてドーキンスは日高敏孝さんの紹介。いやぁ知らなかったわ。
    この間の世界の新しい見方は言いようもないほど魅力的で新鮮だ。
    様々な知見や考察に繰り返しふれて、それらについて考えながら本を紹介するというスリリングな悦楽に身を任せて旅をする。

    しかし、ハカセは今やマップヘイターになられた。
    この世界をグリッドの上に整理しようとすれば、最初に存在していた関係性は切断される。
    世界をどこまで見ても全体を知ることはできないと、ハカセは地図を捨てた。
    この後紹介されるのはカズオ・イシグロをはじめとする文学作品になっていく。

    記述されようもないもので満ちているこの世界。
    そこから切り出せる「部分」など、本当はない。
    私たちの人生には全体を見渡せる俯瞰図などないし、計算された設計図もない。
    自由な旅路を、好奇心と嗅覚で歩き出したハカセ。
    Howの探求がすべて語りつくされたときにWhyに答えることが出来るといわれるが、それはいつのことだろう。
    マップラバーである私は、行く末を見守っていくしかない。

    巻末には「動的書房」で集めた400冊のラインナップ付き。
    浪漫あふれる生物学の世界へ、皆さんもぜひどうぞ。

  • 生物学者の著者が子供の頃夢中になった、ドリトル先生シリーズなど童話から、村上春樹やカズオ・イシグロなどの小説まで、幅広い本が紹介されている。

    ダーウィンなど昔の科学者の書いた本、昆虫や遺伝子の話から宇宙の話まで、科学に興味が子供が読めば、益々興味が湧くに違いない。その意味で、本好きな小中高生にオススメ。

    巻末に、オススメ本のリストが掲載されているのも親切。

  • 生物学者の福岡伸一氏が自然科学はもちろん、文芸、建築、美術、絵本などあらゆるジャンルの本を100冊紹介しているブックガイド。
    著者自身が生物学者になるまでに、幼い頃ひらいた図鑑、絵本などから始まり徐々に自然界、生物に興味を持っていくきっかけとなった本を次々に紹介していきます。

    少年の頃に読んだジュール・ヴェルヌの「地底旅行」「海底二万里」やヒュー・ロフティングの「ドリトル先生航海記」。

    微生物学の父レーウェンフックと画家フェルメールとの意外な関係。

    ダーウィンの進化論「種の起源」からリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」へ生物学界の流れ。ファーブル昆虫記で有名なファーブルは進化論に批判的だったこととか。

    とにかく本を紹介しながらどんどん生物学に興味を抱かせるようなお話が出てくるし、その紹介の流れが一つの物語のようで。

    知識はバラバラでは意味がなく、体系化されて初めて身に付くと良く言われますが、この本に紹介される本の流れを見た時にまさにそうなんだなと思いました。

  • 福岡さんの使う言葉はとてもロマンチックだと改めて思った。おもしろい本ばかり紹介してある。

  • 素晴らしい本棚

  • 図鑑、絵本、児童書、科学、生物学、進化、科学者たち、物語、生命。ハカセが読んできた本たちが、ハカセの言葉で語られる。
    難しいものもあり、わからないこともありますが、好奇心が刺激され、手に取ってみたくなります。
    この本面白いんだよと声が聞こえます。

  • 生物学者にして名文家の著者であるが、本作は名著紹介である、数々の作家が自薦の本の照会本を出しているが、ああこの作家はこういう本を読んできたのかと思うだけで、あまり影響は受けなかったが、本作で紹介された本には本当に興味を感じたし、機会があれば読んでみたいものばかりだ、最後の方は科学的とは言えない本の紹介であったが、前半部分の本の紹介は生物化学の歴史をたどるもので、著者の他の著作とダブルものもあるが興味深いものである、そして最近の著者のテーマである動的平衡に基づいた文学嗜好も興味あるものであった。

  • 福岡センセーが読まれていた本を自分も読んでいたなんて、と嬉しく思いながら、あれも読んだ、これも読んでいたとチェックするのが楽しい本です。
    読んでいない本も詳しく解説してくれているので、ほー、読んでみようかなと引き込まれるうまい紹介をしています。

  • 本の本

  • 敬愛する福岡伸一氏が選ぶ本の紹介です。自分の読書のための地図として読まないわけにはいかないです。当然福岡氏のバイアスのかかったセレクション。そのご自身のバイアスがいくつかの軸で紐解かれます。地図への拘り。止めることの出来ない事象の整理分類癖。フェルメール、建築、生命進化。ヒトゲノム計画完遂後の氏の喪失感と、その上で厳然と残された生命の不思議。そして地図を持たない旅へ。地図のある物語と地図のない無い(ほのかな関係)。本当に氏の惜しみない思索の旅がそこに。氏の読書会にも参加していましたので、いくつかはすでに抑えてはいましたの。所詮の私と言うバイアスのためにはこの上ない道しるべでした。

    ファーブル『あなた方は死を詮索している。私は命を探っているのです。』

    エルンスト・ヘッケル 『個体の発生は系統発生を内包している?』

    カズオ・イシグロ『記憶は死に対する部分的な勝利なのです。』

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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