- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840152181
作品紹介・あらすじ
F市のお城跡に建つ県庁で事務をしている公務員の奈津美。その平穏な日常は、オホリノテを踏みつけたことで揺らぎ始めた。オホリノテ。お堀の手。梅雨になると石垣から這い出してくる、焼け焦げたような色の藻草のことだ。この土地には、奈津美のまわりには、常に死者の影がつきまとう…。第2回『幽』怪談文学賞大賞受賞作に書き下ろしを加えた実話から織り上げたふるさと怪談。
感想・レビュー・書評
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福井県を舞台とした短編連作集。県庁に勤める24歳の奈津美が主人公。
彼女が体験した不気味な事、悲しい事、不思議な事についてが描かれています。
ドキュメンタリー的な空気を感じ、内容はだいぶ違いますが「残穢」を思い出した。
本作も実話が元になっているとか…。何処の土地にも土着の怪談はあるのでしょう。
怖さ、後味の悪さ、それに相反するいい話もある。怪談ベースですがバラエティに富んだ印象を持ちました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お城跡の町を舞台にした怪談連作短編集。数々の言い伝えが語られる土地の雰囲気とそこで起こる怪異は、怖いながらもどこかほっこりとした優しさを感じさせられます。……いや、それでもやっぱり怖いか。
お気に入りは「向こう岸―あの日」。これも怖いながらも優しい話、と思ったら。このラストはあまりに怖すぎました。これこそリアルな恐ろしさなのかもしれない……。 -
著者の地元に語り継がれる伝承、都市伝説を基に紡ぎあげられた短編を6編収録した連作。
どの作品も不気味さ、怖さをしっかりまとっていて、この季節に読むにはぴったり!
異様な状況を描く場面が多いのですが、その場面での情景描写が巧みで、実際にその場面の映像や時には臭気すらも感じさせられて読んでいて引き込まれます。
怪談ものとしての怖さももちろんですが、主人公奈津美の心理描写も巧み。人との付き合い方や、地元で生活する奈津美と都市部へ出ていった友人との微妙な距離感の描き方など、巧いなあと思ってしまいます。
印象的な短編は『向こう岸―あの日』
ラストでの後味の悪さが強烈でした。てっきりそういう流れで来るとは思っていなかったので、なかなかのパンチ力……。苦い結末が好きな方なら、読む価値ありの作品だと思います。
第2回『幽』怪談文学賞短編部門大賞『あちん』収録