ふったらどしゃぶり When it rains, it pours (フルール文庫 ブルーライン)
- メディアファクトリー (2013年9月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840154079
作品紹介・あらすじ
同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕。報われないと知りながら、一緒に暮らす幼馴染を想い続けている整。ある日、一顕が送信したメールが手違いで整に届いたことから、互いの正体を知らぬまま、ふたりの奇妙な交流が始まった。好きだから触れてほしい、抱き合いたい-互いに満たされない愛を抱えながら、徐々に近づいていくふたりの距離。降り続く雨はやがて大きな流れとなってふたりを飲み込んでいく-。
感想・レビュー・書評
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あー…一穂さんの作品の中でもかなり上位で好きかも。同じ会社の同期、同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕×同居している幼馴染が好きな整。web連載だとなかなか続けて読むのが難しかったのでこうして本になって嬉しい。個人的にはすごくリアリティがあって、色々考えてしまったなぁ。偶然から始まって、ホントいろんなことが重なって終盤はタイトルの通り。ペーパー付。サイン会参加サイン本(ミニトート他グッズ、小冊子[アフターレイン]付)
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WEB小説マガジン「フルール」掲載作品が紙化。女性による女性のためのエロティックな恋愛小説、というのが売りのようですね。TL系とBL系の二本立てなので、自然と互いを意識しあうものを感じさせます。
そこに一穂ミチセンセの登場というのは、BLとして安定した品質保証ばかりではなく、エロ特化でもいける作家さんだと判明する良い機会になりました。
HしたいのにHさせてもらえない男と、同居する相手に片想い中の男が恋に落ちるという一見ベタなストーリーですが、切り口のセンスの良さにはっとさせられます。
ツールの扱い方もよかったです。メールのやりとりが面白く、ドキドキハラハラさせられました。読者は相手がわかってるので、いつ気がつくのかドキドキしたし、後半の修羅場もメールの存在感がハンパなかった。
登場人物が一顕にしろ整にしろ全員、生々しい感情を持ってせまってくるんですよね。
特にかおりや他の女性の登場人物の感情には女の特質というか嫌な部分がきっちり描かれていて、いたたまれなかったです。
そういうのが見たくないから、BL読んでるんです…
和章にもあっと言わされました。抱えているものがあったんですね。すごく印象が変わった登場人物です。重い。
人物像について言えば、一顕も整も種類は違ってもそれぞれ色気が漂いまくりで、感情の表し方も行動の仕方も人間臭いところがよかったかなと。
特に、エロの描き方。
話の端々に官能が見え隠れしていて、時折ドキッとさせられます。
ベルニーニの「福者 ルドヴィカ・アルベルトーニ」らしき彫刻を一緒に見て、互いを意識してしまう…というくだりがエロティックでした。芸術作品が、いい仕事しています。
そして、あるきっかけで二人は一気にセックスへとなだれ込んでいくんですよね。
どのHシーンも求め合う激情がMAXで感じられて、萌えました。
理屈じゃないんですよね。
互いをがつがつと求め合う姿に飾ることのないありのままの想いがあふれていて、やってることはただのHなんだけど、確かにこれも愛だと思わせるものがありました。
あと、砕け散ったストームグラスもインパクト大。こわい。書き下ろしのたらいはきゅんときました…
そういうツール使いがあちこちで光ってます。
読み返す確率は高いと思える作品。 -
やっぱり横組みの画面より、文庫で読むほうがストーリーに入りやすい……と思うのは古い人間だからでしょうか?
文庫化バンザーイ!!ww
おとなのエロスが売り言葉のフルールなので、かなりエロいです、エロくないシーンもなんだか色っぽくてエロいんです!
だけど!
エロだけじゃないよ!だって一穂さんだもん!!
そこにいたるまでの描写がうん、やっぱり一穂さん!!
ほんと大好きなんだ。何度だって言う!
ワタシは一穂さんの書く文章が大好きだ~!!!
帯……マルコさんの案じゃなくてよかったですねwwwwwwwww -
非常に評価が難しいお話でした・・・。
どうなのこれ?と・・・。
一言で言うと「やりたい男同士の話」というミもフタもないことになってしまいそうな。
なのに相変わらずの描写の美しい文体。
テーマも本当に難しくて恋愛にセックスが必要かみたいなところになってくると思うんだけど。
「両想い」だけどプラトニック。「同棲してる」けどセックスレスの「お預け」されてる側の二人の苦しみにスポットライトが当てられていて、「ただやりたい」というだけではないんだけど、下世話な話はそうなんでしょ。ということにもなり・・・・。
結局、その点に限らなくても恋愛において相手に必要なものを与え合えることは大事なんだよね。という気がしてくる作品ですね。
うーん、難しい・・・ -
何気に重たい背景の二人。それを書き切るのがさすがだなあ、と。この設定は地雷の人も多そうだから好き嫌い別れそう。
挿絵がイマイチ雰囲気と合わないかな〜。もっと大人な絵柄のほうが雰囲気にあうかも。
Webで読んでた時はこんなにページが多いと感じなかったんだけど、つまりそれだけ読ませるということか。
書き下ろしがあって、その後の二人が読めて良かった〜! -
大好きな作家さんのひとり、一穂先生の新刊。
まず、届いたときに思ったことは「本が厚い!」でした。と同時に、読むのが楽しみに。
さて、いつもと同じように、何の情報も入れないまま、まっさらな気持ちで本を読み始めました。
”かずあき”という名前から、少し混乱するようにもありますが、読みなれていくうちに(漢字は違うのだけれども)互いの生(性)活背景が分かるように。
「kazuaki」で始めるメルアドだったので、最初は一顕と和章が…?!えええっ!!と思ったのですが取り越し苦労だったようで、一顕と和章の同居人、整とのやりとり。
メルアドが好きな人の名前+誕生日って、すごいな…と思ったのは私だけでしょうか?だってこのメルアドは和章本人も知ってるわけで…。でも和章は整の自分への気持ちを知っててその気持ちだけキレイに避けています。離れられないって知ってて残酷なんだけど、理由は最後の和章の吐露を読めばわかります。
さて、ひょんなことからメールのやりとりをすることになった、一顕と整。お互い、自分がまわりに言えなかったことをメールの文字にかえてやりとりするところ、加えてどんどんと自分の奥底にこぷりと溜まっていた感情が加えられていくところが、読み手の私にはとても引き込まれていきました。
一顕も整もコップのフチにたまった水みたいに、あふれそうであふれないラインで心をたもっていて、先に一顕がこぼれちゃって。整に真夜中メールするときは、一顕の感情にシンクロ。なんていうか…彼女のかおりさんには…ううーむ…。個人的には一顕が欲を押さえつけられていいように扱われてるのは辛かったかな。話し合えればよかったけど、実際、膝詰めて彼氏と彼女が話すには勇気がいるとおもう。でも結果、一顕も整も、あふれそうになってるお互いのコップの水を飲んでくれるような相手だと分かって、一緒になれたから、終わりよければよかったよかった!
個人的には表紙は素敵だと思うけど、竹美家先生の挿絵は必要なかったかも。辛口なようだけど、全体的にぼんやりしすぎててキャラがよく伝わってこなかった。和章さんもイメージ違った…。でもそれを差し引いても★5つです。