MAMA (電撃文庫 こ 10-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840241595

作品紹介・あらすじ

海沿いの王国ガーダルシア。トトと呼ばれる少女は、確かな魔力を持つ魔術師の血筋サルバドールに生まれた。しかし、生まれつき魔術の才には恵まれなかった。ある日トトは、神殿の書庫の奥に迷い込んだ。扉の奥から呼ばれているようなそんな気がしたから。果たしてそこには、数百年前に封印されたという人喰いの魔物が眠っていた。トトは魔物の誘いにのった。魔物はその封印から解き放たれ、トトは片耳を失った。そして強い魔力を手に入れた-。これは、孤独な人喰いの魔物と、彼のママになろうとした少女の、儚くも愛しい歪んだ愛の物語。第13回電撃小説大賞"大賞"受賞『ミミズクと夜の王』の紅玉いづきが贈る、二つ目の"人喰い物語"。

感想・レビュー・書評

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  • 人喰いシリーズ2作目。
    前作に続き愛のある話でした。
    今作はどちらかというと親子愛?

    落ちこぼれ魔術師のトトが魔物の封印を解いてしまい、その母親として契約者になるお話。
    不相応な力を手に入れて成り上がると言ってしまえばそれまでなんだけども、
    よくあるキラキラした物語ではなかったかな。

    トトの両親が離れてもしっかりとトトのことを愛しているという描写があってよかった。


    ANDは後日談といった感じのエピローグ。
    登場人物たちの先に幸があらんことを。

  • 魔術の才のなかった少女と人喰いの魔物の出会い。「貴方のママになってあげる」愛を求めたものが愛を捧げる相手と出会う絆の物語。
    物語世界に耽溺する悦び。それが紅玉ファンタジーの味わい方でしょう。堪能しました。添えられた短編で味わいが一層際立ちます。

  • 何度も読んで、最後で絶対泣いてしまう

  • 優しさってなんだろうねって。
    憎しみにも負けない愛とか。
    というより、絆がほしいんじゃないかと。
    トトとホーイチ、ミレイニアとダミアン。
    親子と兄弟。優しさって寂しさからくるのかもね。

  • 『MAMA』読了。
    最後に読んだのがいつなのか分からないくらい前に読んだ本。久しぶりにライトノベルを読んだ。
    多分10代前半ぐらいに読んだと思うけど、王族とか魔法とか、なんでか分からないけどファンタジー要素に憧れみたいなのあるよね笑
    いい意味で違う世界に浸れたわ。絵がとても素敵でした。。。
    主人公の女の子が魔術師一族の落ちこぼれであったけど、人喰い魔物と母子関係の契約を結んだ結果、なんか色々あって結果的に魔術師にならないで外交官になったくだりが好き。
    なんかね、落ちこぼれで人より劣っている所があっても、違う分野で本領発揮できたらすごくいいよねって思ったよ。
    家に沢山あったライトノベルを売ったり譲ったりしたにも関わらず、いまだに家にあるってことは、その当時は余程感動したんで残しておこうと思ったんだろうね。きっと。

    2021.3.17(3回目)

  • ・サルバドールの落ちこぼれ、トト
    ・「兄さんと妹と死ぬまで一緒にいなくちゃいけないらしいわ」




    ■1章
    pp1-73
    サルバドール一派の愚かなる劣等生トト。彼女は生来の才能の無さからそうした恥辱に甘んじていた。ついにはサルバドールから追放される、という話も持ち上がる。
    「もう魔法などできなくてもいいのよ」と言って欲しかった母にも、望む言葉はかけてらえず癇癪を起こしてトトは走り出す。

    行く先には一族に伝わる禁書の棚。その最奥、封印された鍵を壊し、敢えて扉を開いてしまうトト。暗闇に確かに息づく魔物が彼女の耳だけを攫っていく。倒れる直前に彼女は水色の玉を見る。それは魔物の瞳なのである。


    目覚めたときには、普段の朝ではなく、族長までも集まっていた。彼が言うには「魔物が耳を持っていった。魔力の残滓がお前の耳に宿っている。」とのこと。残る魔力のためか、魔物に呼ばれたつもりになってしまうトトは再び封印の扉に向かう。魔物を見据え、彼女は名を授ける。こうして、彼女は人食いの魔物をホーイチとして使い魔にしたのである。
    「一緒に行こうよ」


    一族に連れられ、処罰を待つ。もう、家族を見る気にはなれないトト。けれどもう彼女の影の中にはホーイチがいるのである。


    p77「ご期待に応えて出てきてやったよ。拍手はまだかな?」


    ■1章
    pp1-73

    外交官になったトト。やはり耳の力が凄まじく、疎まれることもある。一方で、王家の末娘とは仲良くなる。


    武人だと名乗る旅の男、ゼクン。そんな彼を気に入らないと言い切るホーイチ。けれどもうトトは彼のことをそう忘れられそうにない。

    そんな中、幾重にも襲いかかる敵魔術師。その中にガーダルシアの術式をみつけ、トトは父母に詰め寄る。トトは自信が時期尊師候補に挙げられていることをしるのであった。


    衰弱するホーイチ。襲いかかる敵。ついにはゼクンは破れ、トトは倒れる。
    目が冷めたトトは周りに多くの人の気配を感じる。孤独だと思い込んでいたのはいつからだったか。自分はホーイチにすがって目を閉じていただけではなかったのか。。。
    そんなトトにホーイチは耳を返した。


    ホーイチは虫の息のゼクンにいう「勝負をしようか、傷の男」
    ホーイチの真意はここにあった。ゼクンに飲まれ、消えてなくなることを承知していたのだった。
    やがて、時は経ち、トトは子供を授かる。その子は両親にはまるで似ておらず、目元に3連のほくろをもつ、浅黒い肌の子であったのだった。


    END
    ■外伝
    AND



    ダミアンは過去に、そのやり方の効率の悪さを指摘されてはいた。しかし、貴族の家や宮殿に忍び込んで盗みを働くことは大変に肌にあっており、ガーダルシアの宮殿が今回の狙いであった。

    黒い蝶々。王の娘に部屋で出くわすのは失態では会ったが、彼は赤い耳飾りを手にする。
    その品にどうにも不気味さを覚える彼は、すばやく店に預けてしまい、家路についた。


    彼には妹がいる。人には見えないものが見える、と噂される一方で、彼は妹の虚言癖をもしっていた。
    次の朝、耳飾りは再びダミアンの手の中に会った。


    夢がダミアンを苦しめる。
    耳飾りは、ガーダルシアの魔物最初の犠牲者のものであった。
    夢が彼を東へゆけと導くのであった。
    孤児院を二人が旅立ったときのように、妹ミレイニアはまたダミアンに寄り添っていた。

    ダミアンの苦しみは常軌を逸していた。
    魘され、発熱し、果には喀血似まで至る。
    それを目にして心を痛めるミレイニア。
    振り返れば、彼女の人生はその霊視によって振り回されていた。親に捨てられ、サーカスに捨てられ、売春宿を逃げ出した。そんな彼女の異能に「虚言だ」と救いをもたらしたのがダミアンであった。
    霊視の嘘、兄弟の嘘。嘘では会ったがそれは彼女をどこまでの救っていたものであった。


    耳飾りの妖しい力に、其の晩もダミアンは寝ながらにして苛まれる
    もがき苦しむダミアンを前に彼女はいう。
    「------好きになった人の一人くらい、私だって守るのよ」(pp.255)
    ミレイニアは耳飾りに手を重ねた。


    ミレイニアの力は耳飾りのそれを抑えたのだった。
    「この旅が終わったら、またリュートを弾いて」
    「泥棒と占い師もいいけれど、そんな兄弟もきっと、悪くはないわ」それには虚言だと言わぬダミアン。

    ついに二人は街にまでたどり着く。目立ての家の家主は不在であったが、息子が留守を守っていた。
    曰く、アベルダインの末裔だという。紐解いてみれば彼の母はかつて天国の耳と呼ばれた高名な外交官であり、驚いたことに今はガーダルシアの姫君のもとへ向かっているという。



    「兄さんと妹と死ぬまで一緒にいなくちゃいけないらしいわ」
    何年ぶりかのリュートを爪弾いてダミアンは呟く。
    「悪くはないな」



    ************


    本編は魔物と、その母になろうとした少女の話。
    お互いに思い合っているにも関わらず、依存もしつくせない。
    結末としてはホーイチの名を継ぐ息子が生まれるわけだが、、、、、魔物のホーイチはそれでよかったのか。いくらトトを泣かせたくないとはいえ、ややかわいそうには思う。最も、その切なさがメイン


    後日談が良い。
    耳飾りを軸にガーダルシアまでの 旅路を簡潔に描かれている。
    耳飾りの起源が、奴隷商によって死んでしまった 母子に起因するものだと夢でわかる。
    また、ガーダルシアの魔物の姿がこの母子に基づいているともわかる。奴隷として連れられて、母は亡くなり、息子は魔物に喰われる。散々である。そりゃあ世の中呪いたくなる。

    しかし、それは外枠であり、本編よりもわかり易く甘い、こちらも歪な兄弟の話であった。
    ミレイニアの一途な姿には大変心惹かれる。急転直下ではったが、後味の良いラブストーリーになっている。しかし、、、「悪くはないな」と答えているダミアン、おそらくよくわかってない。

    よくわかってないであろうことも、おそらくミレイニアは察してはいるが・・・。

  • 落ちこぼれで一人ぼっちの女の子と、封印されていた人喰いの魔物が出会う話。
    なんか淡々としていて、あんまり感情が動かされなかったように思いました。
    ティーランから戦いかたを習うシーンは格好よかった。

  • 【収録作品】MAMA/AND
     

  •  確かに感動的ではあるのだが、突き抜けていないせいでハマりきれなかった名作。
     前半部分は話のテンションが低過ぎて感情移入できなかったのが残念。内容的には強大な魔物の母親になろうとして孤軍奮闘する印象的な話であるのだが…。後半は呪われた石を手にしてしまった泥棒と偽妹との話。良い話ではあるが何分にも短すぎるのと本編のおまけ的要素として書かれていたことで物足りなかく感じてしまう。

  • 母子とは言いつつトトとホーイチは恋愛に発展するんだろうなあ~と思っていたけれど、最後までこの二人はあくまでも「母子」を貫いてくれて、いい意味で覆された。その母子の形も、トトとホーイチの共依存ともいえるもので切ない。最後の最後でホーイチの愛が無償の愛とも呼べるものに昇華されていた…と認識してる。
    異国の少年は、後々ストーリーに関わってくると思ったらそんなことなくて少し残念だった。
    トトが自分のエゴを認識して涙を流すところがすごく好き。
    終盤で、トトの味方だと多くの人間が現れてくれたところ。もう少し本編でその人たちの想いが見れるようにしてほしかったとも思うし、トト自身が自分にはホーイチしかいないと縛りつけていたことから、周囲の優しさに気づかないようにしていた、という件で解消されているようにも思う。
    本当の母子として再びであった二人、トトが我が子に再びホーイチと名付けるシーンは感慨深かった。

    いつものようにテンポが良くて読みやすく、面白かった。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2022年 『雪蟷螂 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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