旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。 (電撃文庫)

著者 :
制作 : 方密 
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本棚登録 : 824
レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840241922

作品紹介・あらすじ

世界は穏やかに滅びつつあった。「喪失症」が蔓延し、次々と人間がいなくなっていったのだ。人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失していく…。そんな世界を一台のスーパーカブが走っていた。乗っているのは少年と少女。他の人たちと同様に「喪失症」に罹った彼らは、学校も家も捨てて旅に出た。目指すのは、世界の果て。辿り着くのかわからない。でも旅をやめようとは思わない。いつか互いが消えてしまう日が来たとしても、後悔したくないから。記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳とともに旅する少年と少女の物語。

感想・レビュー・書評

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  • セカイ系と言われることもあるが、『イリヤ~』に代表されるそれらとはやや異なる。本作における少年・少女の関係は「セカイ」の行方を左右する方向へは向かわない。喪失症という危機を抱えた「セカイ」にあって、現に存在する自己を確かめ合い、消えるまでの限られた未来を共有する関係に留まっている。内なる関係性が外へ影響を及ぼすのではなく、外の影響から内なる関係性が生じ、再び外へ還元されることはない。主人公が名前をもった特別な誰かではなく、最後まで単なる「少年」「少女」であり続ける点、そうしたあり方を端的に示すだろう。
    「天国や地獄が本当に存在するとは思っていなかった。が、それでも消えた人間が、本当にただ消えてしまうとは思いたくなかった」(p.192)は、死に対する人間の根源的恐怖をよく言い表している。多くの文化圏で、死後の世界が想定され、その喪失を「別れ」と呼んでここではないどこかへ行ったかのように表現されることは、それに対する一つの慰みなのだろう。形見によって偲ぶ行為も、現在の不在を確認することで、かつて存在していたことを確かめる方法である。
    しかし、本作の喪失症は、故人のあらゆる痕跡を奪い去る。形見も消え、偲ぶ方法も失われ、不在を確かめることすら困難にする。そのことは、かつて存在していたという記憶すら曖昧にさせる。そこに、三章幕間で述べられる少年らの抗いの方法がどれほど有効か。遺されたそれが遺されたものであることさえ、わからなくなってしまう危機に対して、その方法が慰みとなり得るのは何故なのか。説明できないが、不思議と共感はできる。

  • 電撃文庫らしいタイトル。
    このタイトルだけで気になって手に取った人は多いと思う。私もその一人だった。
    内容は思った通りセカイ系。世界観は
    情景描写である程度把握できるので、詳しい説明は省かれている。二人の物語を書きたかったのではなく、雰囲気重視で書かれた物語。そのため邪魔をしないように登場人物や建物などの固有名詞は存在しない。
    読み終わっての感想は特にない。

  • 感情の純粋空無に於ける哀しみというのがあると思う。日常の惰性態が無化された瞬間にもなお残る elementary な零度の哀しみ。たとえばここに古典的名著と呼ばれる一冊の本が在るとする。歴史の風雪に耐えてきたと云うが、つまりは歴史の混濁の中で雑多な猥雑な語りと眼差しに塗れてきたということだ。世界からその内実が『喪失』されつつある中で、自分自身の存在をも『喪失』の予感に晒されつつある中で、「世界の果て」へと旅を続ける少女と少年は、歴史の土に一切の根を下ろしていない。それはこの小説も同じじゃないか。或いは、そう感じる私が、歴史の中に身を置けていないと云う事だけなのか。私は今まで、死んだ人間の本ばかりを読んできた。「世界の果て」、つまり何処へでもない何処かへ向かう旅。そこには乾いた哀しみだけが在る。

    "もし二人が故郷へ帰るとすればそれは、地球を一周した時だ。"

    しかし、どうしても"ライトノヴェル"と呼ばしめるあの文体と定型的脈絡とによって、この純粋否定態に於ける哀しみが、小説の中では弄ばれて終わってしまっているように感じられてならない。そのことが残念だ。

    純化されたこの小説をもう一度読んでみたい。本を読み終えた瞬間に背筋が震えたのは、とても久し振りのことだった。

  • 冒頭から大好きな作品。世界観と二人の関係、コメディ一色になるわけでもなくシリアスに落ちていくわけでもない淡々としたおかしな日常の中で心温まるお話。これを読んだ後は人類に滅んでほしくなる(笑)。

  • 少年と少女が恋人だと誤解されたり、互いに意識したりしながらスーパーカブに乗って旅をするとかかっこよすぎる。
    取締役やボスは自分の夢を果たすことができて幸せだったと思う。
    あの世界の人々は自分がもうじき存在しなくなることをわかっているからこそ自分の夢を追いかけることができたのではないだろうか。
    少なくとも、今の自分には生活をすべて捨ててスーパーカブで旅なんてできない。
    どうか、彼らが大陸も旅をできるように喪失病の進行が止まればいいのにとか思ってしまった。
    それから、姫と先生の二人の旅も気になる。

  • 静かに存在が消失していく現象、「喪失症」。
    ゆるやかな絶望につつまれ、滅びゆく世界。
    「少年」と「少女」とカブくんのロードノベル。

    たぶん舞台は現代日本、で北海道。
    それと、登場人物の固有名詞が存在しない。

    他の方のレビューでも言及されてるが、セカイ系とはちょっと違う。
    なぜならふたりがどうあがいても、この世界の異変を解決することは出来ないからだ。

    「世界の果て」を目指すふたりの行く末が気になるが、続編が出ることは無いと思う。
    それこそ無粋と言うか、蛇足になるだろう。

    重い設定だが、明るい性格の若者たちが語り部になっていることで、軽いタッチになっている。
    それでも彼らの根底には、憂いがある。
    それは自己のみならず、大切な他者が消失することへの恐れだ。

    さわやかな余韻が残る作品。
    あくのないイラストもマッチしていて良かった。

  • タイトルから想像できるだろうがラノベ。
    「喪失症」という架空の病気によってゆっくり滅びようとしている世界が舞台。
    「喪失症」というのは記憶から名前が消え、印刷物からも名前と顔が消え、人も色が無くなり、白くなっていき、最後には人の存在そのものが消えていくという恐怖の病気。病気なのかな? まあそういう現象。
    主人公は高校生の「少年」と「少女」。同級生で、お互いに家族を「喪失症」で失った二人は、旅に出ることにした。
    最初は自転車で。そのうち、手に入れたスーパーカブで。
    「首都」を出て3か月。二人は北の島へ。(たぶん、北海道)
    そこで出会った3組との触れ合いを綴った3つの短編と幕間の短文からできている1冊。

    文章は変。稚拙。
    筋はありきたり。
    人物もありきたり。
    そのままの意味で裏切らない。
    おかしなところもある。

    ただ、雰囲気が心地よい。
    たまには、こういう心地よいものを読むのもよいなあ。

    ということで、ちょっとおまけして★4つ。

    主人公たち登場人物は、基本的には服を替えない。
    例えば主人公の「少年」と「少女」は今でも高校の制服を着ている。
    もと社長という男性はアルマーニのスーツで野良作業。その秘書の女性は秘書っぽいスーツに長靴で野良作業。
    そんなのおかしいよと思ったんだが、考えてみたら自分の存在というかidentityが失われようとしているのであれば、その人の立場を表す記号としての服装を続けたいというのが人情かもしれない。
    わたしゃその場その場でそれにあった服に着替えたいけどね。

    作者はサラリーマンでこれがデビュー作。
    2作目を書こうとしたものの、書けなくて、どうやらこれっきりになりそう。
    残念。

  •  「世界の終わり」という魅力的な設定が好きな私にとって、軽い気持ちで楽しめた作品。設定があり得るかあり得ないかは置いておいて、荒廃した日本で世界の終わりに向かって生きていく二人の少女と少年は寂しげで爽やかで、読んでいて清々しくも切なくもなる。
     世界の終わりの中心にいる人物ではなく、終わっていく世界に取り残された人という描き方がとても好き。

  • 2015.2.1~

  • 爽やかで軽いラノベらしいラノベ。
    終わらせ方もこれで良い。

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