子どもを選ばないことを選ぶ―いのちの現場から出生前診断を問う

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  • メディカ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784840407731

感想・レビュー・書評

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  • 出生前診断について興味を持ったので関連本2冊目。
    こちらは、実際に産婦人科で生の現場に立つ著者によるもので、色んな理論をかざすでなくリアルな暖かさが伝わってきた。
    何より、著者が出産を担当して、その後も交流を続けるダウン症児とその親御さん達の声。本書に出てくる人々は、皆まだ子どもが小さいこともあり、成人後の自立などの問題に当たっていないと言う点でまだまだこれからが大変なのであろうと思ったが、その事を差し引いても非常に心打たれるものがあった。
    何より、ダウン症児の親となった人達の人となりの立派さ、というと語弊があるかもしれないが、愛して育てていくことを決めた人の強さを見た気がした。
    彼らはかわいそう、とかなんで、とか受け入れられない心の葛藤を越え、心から子どもを愛し育て、そして幸せをつかみ取っている。
    そして、彼らの話から見られる子ども達がすくすく育っている様子。子ども達は、生まれてきたことは幸せだったに違いない。
    読めば読むほど、きれい事を言っているように感じていた自分の考えへの違和感などが消えてしまった。
    受け入れられがたい、という自らの心に真っ正面から向き合い、パートナーと手を取り合っていけば、困難は必ず乗り越えられるのだ。
    そんな心強さを得られた気がする。

    産婦人科の妊婦が出産した後のケアの重要性も非常に大切なものとして綴られているが、実際の現場をいくつも乗り越えてきた著者の言葉だからこそ、非常に説得力があった。
    医療は体に働きかけるものであるが、やはり心のケアを同時にすることが大切なのだ。それをするには現在の日本のシステムはまだまだ未熟である。
    しかし、心という漠然としたものについてのケアというものは、必要となったもの・実際経験したものにしかなかなか受け入れられがたいのであろう。
    そう言った問題があるにしろ、やはり命を減らす医療ではなく、共に生きる医療、サポートを第1に目指せるようになれば良いのに。もっと、障害児の現状を本当の意味で多くの人が理解出来たらいいのに。そんな事を考えさせられた一冊だった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「本当の意味で多くの人が理解出来たらいいのに」
      ハンデの有無に関わらず、効率一辺倒の社会では生き辛らい。物質的な豊かさを享受するコトだけが幸せの尺度となるような考え。その辺りから変えてゆけたら良いですね。
      2012/09/05
  • 何年か前にも読んだ本を、出生前診断についてのモヤモヤが続いて、また借りてきて読む。もう10年前の本だが、新型出生前診断という"血液検査で簡単に受けられる手法"がこの4月から始まり、それに「希望者が殺到」という状況を思うに、この本で書かれていることは、10年経った今も通じることだし、古びてないなと思う。

    ▼いかに美辞麗句で飾ろうとも、出生前診断の本質は、障害をもった子どもを人工妊娠中絶が可能な妊娠週数で見つけだし、排除することです。そして、そのおもな標的は、常染色体の数の異常として最も頻度が高く、かつ見つけやすいダウン症の子どもたちなのです。ダウン症は先天的な障害の一部にすぎず、しかも障害には後天的なもののほうが多いにもかかわらず、です。(p.29)

    「知っておくことを避けられなくなってしまった現在、技術本位でない情報が必要だと思います」(p.2)と著者は書く。そして、「状況は個別ですから具体的には説明できなくても、たくさんの先輩たちがすくすくと育ち、家族とともに幸福に暮らしていることを知ってほしい」(p.3)と。

    いま、はっきりと、出生前診断を是としない、という著者も、かつては、あいまいな姿勢だった。

    出生前診断を伝えないことで、先天的な障害のある子が生まれた際に、なぜ出生前に発見できなかったのかと訴えられることを恐れてもいた。そして、自分自身が、障害のある子を抱える可能性に直面したときに、どんな選択をするかということにも、はっきりと結論が出せなかった。

    そんな自分のあいまいな姿勢を、著者は、この5年間に出会ったダウン症の子どもたちとそのご両親によって足元から揺すぶられた、と書く。なかでも、この本で中心に書かれる春乃ちゃんとそのご両親から、この問題に向きあう勇気と力をもらったという。

    産科医が置かれている状況は、たしかにそういうあいまいな姿勢になりがちなのかもしれないと思わせる。

    ▼小児科医は、すでに生まれてしまった子どもたちと向き合います。だから相手の存在を否定することなどできようもありません。さらにその日々の成長に向き合うことによって多くを学ぶのでしょう。
     けれど、産科医にとって、お腹の中のダウン症の赤ちゃんは、いまだ向き合っていない、未知の存在です。生まれたとたんに新生児科や小児科の手に渡してしまえば、その後の成長や暮らしを見ることも知ることもなく、あまり深く考えることもないまま、そういった子どもたちのことをまるで仮想敵のように考えがちです。その結果、出生前診断をしなければある頻度で確実に生まれるという現実から逃げるため、そういう子どもたちを淘汰してしまう方向、つまり出生前診断の結果としての人工妊娠中絶の方向へ行動してしまうのではないでしょうか。(p.14)

    著者が、臨床遺伝医の長谷川知子さんにインタビューしたなかに、印象に残るはなしがいくつもある。
    その一つは、「感情に蓋をしないこと」。

    母親が子どもを受けとめられず、こういう子を産んでしまったという罪の意識や、まわりから責められるのではないかなど、自分のことを防衛せざるをえないこともある。

    ▼自己防衛がいけないというのではありません。人間はそういう立場になれば、当然、自己防衛するものだということを明るみに出したらいいのです。そこから始めないと、解決の糸口は見つかりにくいでしょうし、どうしても自分を守らないでは生きていけないような状態になっていることが問題なのです。…

     …お母さんたちが自分を防衛しなくていい状態になれば、比較的すんなりと子どもを受けとめられるのではないかと思うのです。そのためには、妊娠の初めから産後までずっとケアされ、支えられていることを感じ、自分を守らないですむことがいちばんでしょう。…

     …この子がいなければと考えることは罪だと、誰もが思います。罪だから苦しいのです。罪深いため、口に出して言うことができず、その思いをこころの奥底に隠してしまいます。
     けれど、気持ちに蓋をしてしまうとよくないのです。気持ちは揺れるのが当然ですから、誰でもそのように思うときはあるでしょう。そういうことも、自由に口に出せるような環境が必要です。…それが口に出せれば、そこから問題解決の扉が開かれるのです。(pp.67-69)

    たぶん、考えるべきことは、なぜお母さんたちが自分を防衛せざるをえないのか、なぜ「この子がいなければ」と思ってしまうのか、ということ。

    「私たちは、起こることを防いだり、結果を変えたりすることはできません。けれど、ともにあって、見守ることはできるでしょう。そして、ほんの少しだけでも前向きに生きるお手伝いができたらと願っています」(p.204)という著者の思いが、多くの人に届いてほしいと思う。

    (7/14了)

  • 出生前診断をして、もし子どもに遺伝異常があるとわかり、そこからどうするのかということを考えた時、どっしりと受け止めてくれる信頼できる医師がいてくれると安心できるのかなと思った。
    中絶をすぐに考えるのではなく、医師のサポートがあって、真剣に自分とその子どもに向き合える環境があると後悔のない判断ができると思う。
    出生前診断→異常があったら中絶なのかと考えていた私には、この本で経験を語っている母親や医師の考え方はとっても衝撃を受けた。

  • うまくいったケースの話かな。。と思います。

  • 深いタイトル通り。

  • 学校の「死生学」の授業の時に、先生から読むことを勧められた本です。子供がいる私には、涙があふれてとまらなくなりました。
    生まれてくる自分の子供が障害児だったらどうしよう・・・育てられない・・・と思うのはしようがないことだと思います。そして、育てられないから、生まれてくる子供がかわいそうだから事前に検査をして(出生前診断)障害児になる可能性が高ければ中絶してしまおう、と思うのもしょうがないのかもしれません。でもこの本を読んで、この世に誕生したすべての子供が、母親のお腹の中で10ヶ月育ち、生まれてくる力を持っていた事実を感じることが出来ました。
    子供が生まれるって、生まれるだけですごいことなんですよ。
    子供を産んだことがない女性にも読んで欲しいし、もし自分の子供が障害児で悩んでいるお母さんにも読んで欲しい本です。
    あと、男性にも子供が生まれるってことに目を向けて欲しいので読んでほしいなぁと思いました。

  • 15/100
    超音波での性別鑑定も出生前診断だって考えに目からウロコ。また子供を授かることがあった時には、その考えを思い出したいと思う。

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