階層化日本と教育危機: 不平等再生産から意欲格差社会へ

著者 :
  • 有信堂高文社
3.63
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784842085258

作品紹介・あらすじ

本書は、できるだけ実証的な研究をベースに、教育の場で進む階層化の実態とそのメカニズムとを解明しようとするものである。教育というスクリーンに映しだされる日本社会の階層化の動きをとらえることによって、私たちは、いま起こりつつある「階層と教育」の局面変化が、どのような影響を私たちの社会に及ぼしうるのかを知ることができるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 島の図書館にはなく、
    わざわざ都内の図書館から取り寄せてもらって借りた。

    そうまでしてでも読む価値のある本だった。

    今までに読んだ「格差」関連のどの本よりも、
    説得力があり、内容が濃い。

    これに比べたら先に読んだ「下流社会」なんかは、
    とても薄っぺらに思える。

    なんとなく違和感を感じていた日本の学校の「平等主義」の実態が、
    なるほどそういうことだったのか、と本書を読んで腑におちた。

    そしてこれを読むと、
    「格差社会」は何も最近の時代の変化で始まったことではないのだ
    ということがわかり、また
    今の教育行政の方向性の誤りがよくわかる。

    素晴らしい本だが、
    さすがに4000円近くを出してまで購入したいとは思えず、
    こういう本が自分の住む島の図書館に備えられていないのは
    つくづく残念なことだなあと思ってしまった。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000198132

  • 1

  • 内田樹が「下流志向」(こっちは読んでないけれど)の下敷きにしたということで興味を持ち図書館で借りてみる。

    アンケート方式の調査を元に統計的手法で日本社会の階層と教育の関係に迫る。2001年の出版で、定かでないが時代的にはゆとり教育批判の嚆矢にあたるのではないかと思う(齋藤孝がブレイクしだしたのもその頃)。まず1950年代からの時系列データでもって、日本社会に階層と教育の移動があったことを確認する。次に、能力主義の影で差別が不可視化されて日本的平等感が生まれたことを説く。さらには、学歴貴族の没落、ゆとり教育下での学習意欲格差拡大へと展開していく。

    非常に腹に落ちる議論だった。いくつか思ったところを挙げると。。。
    ・基本的にいくつかのアンケート調査によっているので、回答と「本当の」意識、行動との差から生じるバイアスの影響はあるだろう、統計的手法も絶対ではなく数値化なんか適当なものだ、あくまでも仮説と解釈がモノを言う点は要注意。
    ・せまい集団内の差異ばかり気にしているから処遇の平等を結果の平等と履き違えてしまうというのは痛烈な批判だ。
    ・学歴批判が反知性主義・反教養主義に転じているのはそのとおりだろう。これは日本人の骨の髄に割りとしみこんでいるのではないか。だれかが書いていたが「ごくせん」や「GTO」をなぜもてはやすか?という話にもつながる。
    ・能力主義の競争から「下りる」ことが自己肯定につながるというのも納得。しかし、これは別に今に始まった話ではなく人間心理の一般的なメカニズムであり、ボクの周囲にも、ボク自身の中にも実体験としてある。また勉強ができなくたってどこかに自尊心を持つということ自体は必ずしも悪いことばかりではない。むしろ必要なことだ。問題は、そのメカニズムが階層とリンクしてあまりにも亢進していること。

  • 修士論文を書いているときに参考文献として一部読んだが、それ以降放置だったので久しぶりに手にとって最初から最後まで読んでみた。
    ものすごく洞察力に飛んだ本だと感じた。また、随所で「適切」な分析が行われており、分析の効力を最大限に発揮させているという点においても素晴らしい本だと言える。
    一方で、専門書んでありながら、一般の人が読みやすい文体となっているところも、個人的には素晴らしいと感じている。(他の学問でも同様だと思うが、)社会学は、社会学独特の言い回しや独自用語によって、社会学を専攻している人以外からしたらとても読みにくいものとなっているものが多いが、本書はそういった文章の"癖"がなく、さらには言葉遊びや社会学独特のポエム感もほとんどなく、ましてや「ポップサイエンス化」させているわけでもない状態で研究の本質を読者に伝える事を可能にしており、畏敬の念を抱かずにはいられないほどの素晴らしい文体となっている。
    本書が出版されたのは2001年であるが、本書6章で論じられている自己責任の考察に関しては今でも圧倒的な説得力を発揮していると感じ、そういった意味でも素晴らしい本だなと感じた。

  • 専門書に臨む姿勢がまだできていないので、まをおいて又チャレンジします。

  • 日本のメリトクラシーの歴史的背景がわかって面白かった。インセンティヴ・デバイドについては本田由紀も言っているが、努力イコール勉強と捉える限りにおいてはそうなのかなと思う。

  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    http://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&bibid=TB90204457

    階層を中心とした教育社会学者の刈谷氏が書かれた本。学力や学歴による階層性に問題意識を持ち、なぜ階層ができるのか、このような現状をどのようにして乗り越えるのかに対する示唆を与える作品。ブルデューの階層論とまた違った視点で読むことのできる作品である。


    2012ラーニングコモンズアドバイザー(地域政策)

  • 入手して一気に読んでしまった本。
    読了直後の、まだ考えがしっかり纏まっていない段階で、心底「損をした!」と思ったことを覚えている。

    勿論、内容に不満なのではない。その逆だ。

     このような内容の本が既に2001年に出版されていたこと、それを全く知らなかったこと。苅谷氏の言説に触れるのが、他の読者より7年も遅れてしまったことが残念で残念で仕方がない。

    「目から鱗」とはこういう気分の時に使う言葉なのか。

     この本に触れ、私の「ゆとり教育」に関する評価は少し揺らいだ。

     山田昌弘氏の「希望格差社会」よりも分析は深く鋭い。

     「再生会議」のおじさん達は、この本は読むどころか存在さえも知らないだろうな。本書の内容が少しでも頭の隅にあれば、提言の内容があのような寝惚けたものにはならなかった筈だ。

    (でも、著者も「"再生"会議」のメンバーにはいっていた筈だが・・)

     巻末に簡単な提言はあるが、基本的には問題点の指摘に終始している。学者はそれで良いのだ。その問題点をどう捉え、施策を進めていくかは為政者の仕事だ。

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著者プロフィール

オックスフォード大学教授

「2023年 『新・教育の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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