草之丞の話

著者 :
制作 : 飯野 和好 
  • 旬報社
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本棚登録 : 122
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784845106615

感想・レビュー・書評

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  • 作者さんの初期の頃の短編集【つめたいよるに】に収められている一編の絵本化。
    読まれた方は、ああ、そういえば・・と思い出されるかも。
    ごく薄い本で、文章だけ読むと2,3分で読んでしまうが、飯野和良さんの古い紙芝居のようなノスタルジックな絵の魅力で、なぜか読み返してしまう。
    お母さんが、妙に色っぽいのだ。まなざしとか、しぐさとか。
    日傘をくるくる回していたり、朝顔の浴衣を着て踊っているところなんて、くらっとしてくる(笑)。
    そして幽霊のはずの草乃丞も、妙に色っぽい。
    少なめな台詞だが、心地よいバリトンの声が聞こえてきそうだ。
    語り手は13歳の息子で、お話はお母さんの恋の話。そして、愛の話。

    夢かうつつか、幻か。
    女優のお母さんと、幽霊の草乃丞が恋に落ちて、そして僕が生まれた。
    そんな、馬鹿な。という突っ込みはなし。
    お話は淡々と進む。くだくだとした説明は一切ない。
    中学一年の僕の、5月から12月までの話。
    擬似家族の、ごく小さくて温かい幸せが描かれる。
    草乃丞と僕がお風呂に入るところが、私はとても好きだ。
    【「風太郎、そなたはいくつになる」   「十三」   「そうか、もう一人前の男だな。」
     草乃丞はひっそりと笑い、僕は胸がしわっとした。】
    しわっと・・という語感は、身体ごとぎゅっと捕まれるものがある。
    そして、切ない別れのときが来る。
    たぶん、僕はいい男に育っていくのだろうな・・・

    古い映画だが【異人たちとの夏】を彷彿とさせる。
    幽霊との交流は、多くの人の憧れるものなのか。
    少し肉付けしてドラマに仕立てても面白いのにと、自分では出来もしないのに生意気なことを考えていたら、2002年にTVドラマ化されていたらしい。
    草乃丞役は小林薫さんだったとか。

  • 幽霊である父親と女優である母親。
    悲しくて切ない大人の恋の話。
    ずっと頭に残って離れないような話。

  • 「つめたいよるに」のなかでかなり好きなお話。絵が、いいなあ。草之丞が本当になかなかの男前で。

  • 物語はともかく、絵が素晴らしい。

  • 幽霊のお父さんが消えたのは、息子が立派に育って、もう安心だという意味だと思いました。

  • 平成21年9月28日
    6年生

  • 江國香織さんの美しい言葉と、飯野和好さんの個性的かつ強い絵の合わさった大人の絵本。

    幽霊との間にできた息子との奇妙な三人関係がおもしろい

  • 最初に読んだのは高校の頃の現国の教科書でした!
    でも教科書ではあくまで抜粋なので、気になって図書館で借りて読みましたよ。
    ちょっぴりファンタジーなのが、なんだか江國さんらしくないような気がします。
    内容は純愛、ちょっと切ない?でもどこか優しいイメージのお話。

  • 淡白であるし、さらっとしていると思うのだが、時折挟まれるしっとりと艶のある寂しさが、そういった乾きに大人の湿気を帯びさせ、時に感じるほわりとした浮遊感をも沈め、しっかりと地に足をつかせてくれている気がする。それがとてもいいと思った。流れるままでいなくてはならないどうしようもない寂しさを、または流れるままを見届けなければならない切なさを、押し殺しその扉を閉めてしまうような潔さもあった。

  •  江國作品では3作目。10年夏休みに読んだシリーズその2。現代文か何かで読んだシリーズその2。確か高校で宿題になっていた問題集でやった気が。

    「ぼく」は7月のある日、刀を差した侍姿の男性と出会う。彼の名は草之丞。母親によると彼は正真正銘の幽霊で、自分の父親だという。そして、三人一緒に生活をすることに…。ちょっと不思議な関係を素朴な絵とともにつづった絵本。

    「これって絵本だったの?それを現代文の問題にするのってどうなのよ」と思ったが、同作者の『つめたいよるに』という短編集に収録されている作品に絵を付けてリメイクしたものであるそうだ。しかし、この小説が短編であったこと、それに大変短い作品であったことに驚いた。だが、この作品が児童書のコーナーではなく、切り絵・イラストのコーナーにあったのはなぜだろう?カバー袖に「大人の絵本」と書いてあるからだろうか?

     絵本という形態であったせいか、問題集で見たときよりもすらすら読めたように思う(もともと文章が少ないのだが)。問題として出された文章として読んで(読まされて)いた時よりも面白かった。今度は上記の短編集のほうも読んでみたいと思う。

     文章が少ない分、「一人前の男」になった主人公(つまり息子)と接する草之丞や、母親を守る役目を主人公に譲り渡した草之丞の悲しみや主人公に対する頼もしさ、誇らしさがなんとなくだが、想像しやすいような気がした。ぶっきらぼうだがなぜか愛嬌が持てる草之丞と、あじの開きを手に供養に行き幽霊相手でも深く彼を愛している母親がなんだか素敵。

     でもやはり、小説は問題だから仕方な読む、というよりは読みたいから読んだほうが何倍も面白い、ということを再確認した夕方5時。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。
1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。
代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。

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