草之丞の話

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  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845106615

感想・レビュー・書評

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  • 作者さんの初期の頃の短編集【つめたいよるに】に収められている一編の絵本化。
    読まれた方は、ああ、そういえば・・と思い出されるかも。
    ごく薄い本で、文章だけ読むと2,3分で読んでしまうが、飯野和良さんの古い紙芝居のようなノスタルジックな絵の魅力で、なぜか読み返してしまう。
    お母さんが、妙に色っぽいのだ。まなざしとか、しぐさとか。
    日傘をくるくる回していたり、朝顔の浴衣を着て踊っているところなんて、くらっとしてくる(笑)。
    そして幽霊のはずの草乃丞も、妙に色っぽい。
    少なめな台詞だが、心地よいバリトンの声が聞こえてきそうだ。
    語り手は13歳の息子で、お話はお母さんの恋の話。そして、愛の話。

    夢かうつつか、幻か。
    女優のお母さんと、幽霊の草乃丞が恋に落ちて、そして僕が生まれた。
    そんな、馬鹿な。という突っ込みはなし。
    お話は淡々と進む。くだくだとした説明は一切ない。
    中学一年の僕の、5月から12月までの話。
    擬似家族の、ごく小さくて温かい幸せが描かれる。
    草乃丞と僕がお風呂に入るところが、私はとても好きだ。
    【「風太郎、そなたはいくつになる」   「十三」   「そうか、もう一人前の男だな。」
     草乃丞はひっそりと笑い、僕は胸がしわっとした。】
    しわっと・・という語感は、身体ごとぎゅっと捕まれるものがある。
    そして、切ない別れのときが来る。
    たぶん、僕はいい男に育っていくのだろうな・・・

    古い映画だが【異人たちとの夏】を彷彿とさせる。
    幽霊との交流は、多くの人の憧れるものなのか。
    少し肉付けしてドラマに仕立てても面白いのにと、自分では出来もしないのに生意気なことを考えていたら、2002年にTVドラマ化されていたらしい。
    草乃丞役は小林薫さんだったとか。

  • 幽霊である父親と女優である母親。
    悲しくて切ない大人の恋の話。
    ずっと頭に残って離れないような話。

  • 「つめたいよるに」のなかでかなり好きなお話。絵が、いいなあ。草之丞が本当になかなかの男前で。

  • なるほど。。
    夢がある。
    こんな出会いがあったら素敵。
    こんな世界を物語に出来るって本当に素敵。

  • しみじみとした味わいのお話.幽霊の草之丞がとてもいい男だ.絵も力強くてぴったり.

  • 現実と幻想のちょうどあわいにあるような、
    儚くてあっけなく美しい
    化かされたような話。

  • 物語はともかく、絵が素晴らしい。

  • 幽霊のお父さんが消えたのは、息子が立派に育って、もう安心だという意味だと思いました。

  • 平成21年9月28日
    6年生

  • 江國香織さんの美しい言葉と、飯野和好さんの個性的かつ強い絵の合わさった大人の絵本。

    幽霊との間にできた息子との奇妙な三人関係がおもしろい

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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