悲鳴をあげる学校: 親の“イチャモン”から“結びあい”へ

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  • 旬報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845110032

作品紹介・あらすじ

教師やめたい…。悩むまえにいっしょに考えよう!要望、苦情、そしてイチャモンから親の「ホンネ」と結びあう解決策。

感想・レビュー・書評

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  • 勤務校でも、めちゃくちゃなクレームなどで「ねじ込んでくる」保護者が少しずつ出てきています。
    この本ではそのような「イチャモン」の具体例を分かりやすく紹介するとともに、そのような「イチャモン」がここ10年ほどで激増した背景、社会情勢を踏まえた保護者の心理などについても詳しく書いています。

    私の勤務校での具体例からも実感していますが、この本で繰り返し主張している「クレームは保護者の信頼関係を築くチャンス」というのは真実です。
    最初は恐ろしい勢いで怒鳴り込んできた保護者がいたのですが、校長が心の琴線に触れるような一言を発して瞬間的に価値観が変わった、というケースもあるくらいです。
    そのときの対話を機に、その保護者は学校に対してかなり好意的な態度になったそうです。

    しかし、学校が子どもにまつわるあらゆることに責任を負う日本独特のシステムは維持するべき、という主張には首を傾げます。
    生徒指導から特別活動にいたるまで学校が関わってきたために、本来学校が果たすべき第一義的役割であるはず(と私は思う)の教科指導がおろそかになり、その結果子どもの学力が低下したと指摘されてもあながち的外れではないでしょう。
    確かに責任の所在は学校においておいた方がいいのかもしれませんが、実務上でこれら3つの要素のうちのどれかをアウトソーシングしない限り、学校教育は本当に崩壊に向かってしまうのではないかと私個人は危惧しています。

    この本の著者は主に小学校を訪ねているのでこのような論点になっているのかもしれません。
    でも私は、学校での教科指導こそ学力向上の基本にあり、それをおろそかにしているといずれ中学・高校の教育、特に数学教育は取り返しのつかないことになってしまうのではないかと思っています。

    ではどうしたらいいのか?という対案はまだよく分からないでいます。
    問題点がもっとはっきりしてきたらいずれ改めて。

  • 学術書でもhow to本でも、学校のことが新しくわかるわけでも、、、意味づけは人それぞれですね。

  • イチャモン研究の小野田氏の著書 一度講演を聴いたがその内容がまさにこの1冊と同じだった。「イチャモンの裏返しは連携」という最後の言葉が印象的だった。

  • 卒論で使用

  • 何だか哀しくなる。
    ぼくは学校関係者ではないが、職場の店頭に現れて文句を言う人、大して変わらない。
    だが、その後ろにある問題を汲み取って対応するべきみたいな考えは教育現場だからこそか。
    間違ってる奴は間違ってるのだ。
    言ってはいけないことを言ってる奴は、間違ってるのだ。
    付き合ってられない。

  • 学校への イチャモン研究について有名になった著者の本。

    学校へのイチャモンが増えた原因と、それから結びあいにつながることを願っている。一読の価値がある本だと思う。

  • 問題の背景やより良い方向に導くための方向性がしっかり示されています。ただただセンセーショナルに「モンスターペアレント」について煽るのではなく、保護者や地域住民からの「無理難題要求」すなわち「イチャモン」の本質をきっちり見据えて書かれている本だと思います。
    地域住民からの「イチャモン」に対するフォローが少ないですが、この本全体を見通せば自然とどのような手立てが良いかきっとわかるでしょう。

  • 学校への親からの苦情、イチャモンの専門家として名高い阪大教授の肉声そのままを本にしたもの。講演もめちゃくちゃ評判がいいが、それが聞けなくてもこれを読めばたぶんその臨場感が伝わってくる。面白い、どうすればいいのか、その対処、対応にも役に立ちそう。

    でも、正直、この著者は講演の方がもっと面白いっていうのもあるんだけどね。

  • <table cellspacing="0" cellpadding="0" bgcolor="#ff8080" border="0">
    <tr>
    <td>赤い付箋</td>
    </tr>
    </table>
    小野田先生の主張は、<br>
     学校・教職員は、保護者のしんどさと、わが子の成長と発達に関わる重いがどこにあるのかを理解してほしい。保護者は、学校の本来的な役割や子どもの成長に何が必要かを自問自答した上で、学校にきちんと要望を出していってほしい。(はじめに)より<br>
    という部分に表現されている。子どもの教育において、学校・教師の役割と保護者の役割をきちんと定義したこの部分に深く共感する。<br>
    <table cellspacing="0" cellpadding="0" bgcolor="#00ffff" border="0">
    <tr>
    <td>青い付箋</td>
    </tr>
    </table>
    小野田の定理1で<br>
    「イチャモンは時と人を選ばない」と言及しつつも、「教育の顧客は親でなく子どもである」と結論づけている。(論理の展開は割愛)<br>
    これは、実際に保護者との不毛な論議に振り回されている教師にとって大変心強い結論だといえる。教師が力を注ぐべきことは子どもへの教育であることを明確に確認できていれば、担任は主として子どもへの指導に力を注ぎ、担任をサポートできる管理職や専門家チームが主となって保護者の要望を整理するという役割分担と協力体制が機能するようになるのではないだろうか。<br>
    <br>
    小野田の定理2では<br>
    学校へのイチャモンに対する根本的な解決策は「ない」と断言している。<br>
    ということは、やはりイチャモン問題を解決するためには、それぞれの教師・学校が独自のやり方で解決策を模索しなければならないということであるし、たいていの場合解決しないまま卒業・転校・転勤・辞職・退職という後味の悪い結果へ向かってしまうことになる。これは当事者としては相当に苦しいことだが、本書の中では、そもそもイチャモンが発生しにくくなるヒントと保護者からのイチャモンへ共感を持って対応するためのヒントが事例としてあげられている。<br>
    その中で、予防のポイントは、教師が子どもと接する時間を減らさないことであり、対応のポイントは、クレームという「現象」自体と保護者の思いという「本質」を分析し、本質の部分への解決策を提示することだ、と述べている。<br>
    どちらについても納得できる結論である。<br>
    現実的に解決することは困難な場合はもちろんあるのだが、現場の担任が進んでいく方向を提示していることには大きな価値があるといえる。<br>
    <table cellspacing="0" cellpadding="0" bgcolor="#80ff80" border="0">
    <tr>
    <td>緑の付箋</td>
    </tr>
    </table>
    <br>
    この本の中ではふれられなかった部分として、保護者自身への精神的なサポートが必要だと思われる場合、それ以上の医療的なケアが必要かもしれないと考えられる場合がある。<br>
    身近にも起こっている問題であり、尾木先生の著書の中では、今後増加していく可能性のある分野だと言える。このような事例に遭遇してしまった担任をチームとして支援する仕組みの整備が求められる。<br><br><br>
    <font color="#ff8080"><b>赤い付箋</b></font> <br>
    <font color="#80ffff"><b>青い付箋</b></font><br>
    <font color="#80ff80"><b>緑の付箋</b></font><br>

  • 最近確かに多いですね。
    どうみても悪いのは学校じゃなくて親の躾力の不足だろ!みたいなのに、すぐイチャモンつけて怒鳴りこんでくるお父ちゃんやお母ちゃんたち、でもこれって本根を言うと学校ともっとコミュニケーションを取りたいって気持ちの裏返しだったりするようです。しかし、それならもっと素直に話に来てほしいですよね。

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著者プロフィール

大阪大学名誉教授。専門は教育制度学。
〈最近の主な業績〉
小野田正利(2017)『「迷惑施設」としての学校―近隣トラブル解決の処方箋』時事通信社 小野田正利(2015)『先生の叫び 学校の悲鳴』エイデル研究所

「2022年 『争う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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