フレキシブル人事の失敗 日本とアメリカの経験

  • 旬報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845112654

作品紹介・あらすじ

日本企業の変化の方向は、成果主義、終身雇用からの脱却、雇用形態の多様化(非正規雇用の拡大)、経営者報酬の高額化、市場競争力の重視など、まるでアメリカの人事労務に向かっているかのようである。他方で、アメリカ企業の変化の方向は、職務給からの脱却、能力・コンピテンシー重視の人事、能力開発重視、経営主導の人的資源管理の導入など、まるで日本の人事労務に似たものに向かっているかのように見える。実際はどうなのだろうか。人事労務のフレキシビリゼーションの具体的な内容を探り、現実の中から働く人びとにとって「働きがいのある人間らしい仕事」(ディーセント・ワーク)の実現に何が必要かを展望する。

感想・レビュー・書評

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  • フレキシブル人事とは、企業を取り巻く競争環境に柔軟に人事の仕組みを変えられるような人事の枠組みのことである。本書では、日本とアメリカの例が紹介されているが、私の関心は、いわゆる「日本的雇用」に関してなので、そこについてのみ、この感想では触れる。

    1990年代以降、ビジネス環境は大きく変わった。特に大きな動きは、ICTとグローバリゼーションであるが、日本企業は、この動きについていけずに、競争力を大きく損ねた。更に、そこにバブル経済の崩壊が加わり、日本企業は苦境に陥った。それに対応するために、日本企業が行った人事あ的な対応策、フレキシブル人事的対応は、以下の通りである。
    1.雇用形態の柔軟化。要するに非正規雇用を増やした。今では雇用者の40%近くが非正規雇用と言われている。
    2.成果主義報酬制度。従来の職能資格制による下方硬直性の高い報酬制度に替えて、成果によって、上げ下げできる報酬制度を導入する企業が相次いだ。なお、この動きは完全に失敗。今では、成果主義報酬制度を標榜する企業は少なくなり、替わって、「役割給」的な処遇制度を導入する企業が増えた。
    3.労働時間のフレキシブル化。従来のフレックスタイム制度や変形労働時間制度に加えて、みなし労働時間、裁量労働制度、更にはホワイトカラーエグゼンプション等が検討された。制度の是非はともかく、世界的には以上に長い日本の労働時間は、短くなる気配をあまり見せていない。
    こういったフレキシブル人事は何をもたらしたか。筆者によれば、それは働く人たちに苦難をもたらしたということである。また、マクロで見れば、日本社会の中の「格差」を拡大した、とも言えるかもしれない。筆者は、そこからの回復、すなわち、「ディーセント・ワーク」を皆に取り戻すことを本書の中で提唱し、その方法についてのラフな提言も行っている。実際に、このような分析が的を得ているのかを断じるだけの知識を私はもたないが、議論としては十分に説得力があると感じた。

  • ICTは仕事をグローバル化させた。生産が国境を越えて行われるようになった。
    ワークライフバランス、いったい私は何のために働いているのだろうか。そう思っている人は多いだろう。

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著者プロフィール

明治大学名誉教授

「2020年 『働き方改革と自治体職員』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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