テクノ/ロジカル/音楽論 シュトックハウゼンから音響派まで
- リットーミュージック (2005年11月30日発売)


- 本 ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845612543
感想・レビュー・書評
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「電子音楽」と「電子音響」という非=連続的に連続した二つの「可能態」は、「音楽」の「歴史」的な「切断」を「反復」している。それは「人間」と「テクノロジー」とが「音楽」という場所において出会う、クリティカルな衝突と干渉の、そして融和と止場の記録であるーーP.205より
本書が言わんとしていることは、あとがきに書かれたこの文章がほぼすべてと言ってもよいと思う。
1990年代末〜2000年代初頭に興ったグリッチのムーブメントの背景には、20世紀初頭に十二音音楽を創始したシェーンベルクが抱えていた問題意識と同質のものがあるのではないか、という考えから本書を手に取ってみたからこそ、ここで書かれていることは非常に有益でもあった。
筆者の分体と言ってしまえばそれまでだが、持って回った言い回しに加え、文章自体が余分な文字でだぶついており、また引用も非常に多く、「本」としてのクオリティーは低いと言わざるを得ないものだった。何かを伝えるというよりも、筆者の知識が開陳されているだけのテキスト、文章のための文章と言わざるを得ないテキストも多く、うんざりと萎える気持ちを好奇心で奮い立たせながら読み通した。
音楽を観念的に語ること、方法論にフォーカスして語ること自体は悪くないと思うのだけれど、筆者は音楽家が音楽を作るという営みそのものには、あまり見識がないのだろうなと強く感じた。そのときの人間的な心の動き、音楽を作るという動機の背後にある何か、その作家が置かれた社会の状況など、それらと本書で書かれていることの双方があることで、音楽というものへの理解は深まっていくのだろうということを感じさせられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
相変わらずクセのある佐々木節。ちょうどこないだコンサートで聞いたばかりのクセナキスについて論じていてタイムリーな読書だった。
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