山月記 (乙女の本棚)

  • 立東舎 (2020年4月17日発売)
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本 ・本 (56ページ) / ISBN・EAN: 9784845634781

作品紹介・あらすじ

「その声は、我が友、李徴子ではないか?」
袁傪は旅の途中、旧友の李徴と再会した。だが美少年だった李徴は、変わり果てた姿になっていた。
中島敦の『山月記』が、書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどで美麗な人や獣を描き本シリーズでは新美南吉『赤とんぼ』を担当する大人気イラストレーター・ねこ助によって、鮮やかに描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。

感想・レビュー・書評

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  • ─俺がなぜ、虎になったか。思えば俺は、独り閉じこもり、詩友と切磋琢磨することをなさず、かといって、詩作をすっぱり諦め、世間に交わることもなかった。いわば臆病な自尊心と、尊大な羞恥心に捕らわれていた。それが俺を、虎にしてしまったのだ─
    (おとなの楽習16“日本の名作おさらい”より抜粋)

    虎になって初めて人間であった時の己を省みる。それでも人間であった時の欲もまだ捨てきれない己も自覚し、自嘲する。
    どうにか元に戻れないものかと思ったが、輪廻転生の思想を思わせる描写が印象的であった。

    「獣でも人間でも、元は何か他のものだったんだろう。初めはそれを覚えているが、次第に忘れてしまい、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか。そんなことはどうでもいい。人間の心が消えてしまえば幸せになれる」

    人間だった時の記憶が残っているからこそ、次第にその記憶が薄れゆく恐怖、哀しさ、切なさが相まって伝わってくる。

    こんなに孤独で、悔やんで悩んで苦しい。人は誰でも“異類の身”を纏っているのかもしれない。

    乙女の本棚シリーズを読んだのは2作目です。
    難しい文学も、ねこ助さんの素敵なイラストが導いてくれ、読む気を起こさせてくれます。

    • aoi-soraさん
      なおなおさん、素敵なレビューですね!

      最近、ブク友さんたちのレビューからこのシリーズを知り、読みたいなーって思ってるの。
      調べたらうちの図...
      なおなおさん、素敵なレビューですね!

      最近、ブク友さんたちのレビューからこのシリーズを知り、読みたいなーって思ってるの。
      調べたらうちの図書館にも何冊かあるみたい♪
      なかなか文学作品に手がつけられないけど、乙女の本棚ならいけそう(⁠•⁠‿⁠•⁠)

      私も「檸檬」は風景の一部となってますよ(笑)
      2023/06/26
    • なおなおさん
      あおいさん、コメントをありがとうございます。
      乙女シリーズなら、原文そのまま(←多分)なのに読めそうな気がしますよ(๑•̀ - •́)وなぜ...
      あおいさん、コメントをありがとうございます。
      乙女シリーズなら、原文そのまま(←多分)なのに読めそうな気がしますよ(๑•̀ - •́)وなぜなの?不思議^^;
      とにかく私にはイラストが必要です!
      あおいさんも一緒に乙女グループへ!(*μ_μ)
      2023/06/26
    • aoi-soraさん
      うん
      イラストが見たくて、読みたいって部分もある(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
      “乙女グループ”って、ちょっと恥ずかしいけど可愛い♪
      その時はよろしく(...
      うん
      イラストが見たくて、読みたいって部分もある(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
      “乙女グループ”って、ちょっと恥ずかしいけど可愛い♪
      その時はよろしく(⁠´⁠ε⁠`⁠ ⁠)
      2023/06/26
  • ぐわわわ〜〜〜ん

    いやぁ分かる
    たぶん分かる(たぶんかよ!)

    はい『山月記』でございますよ!

    うん、これね中学生の頃読んだ記憶がうっすらとあるんですよね
    で、「わがんね」ってぽいした記憶がうっすらとあるんですよ

    中学生の頃、いっとき「文学青年」に憧れたという黒歴史がありまして、いわゆる「純文学」の触りを一通りさらった時期がありまして、その時この「山月記」も手にしてるんですよね
    まぁ、分からんかった
    「純文学」分からんかった
    そんときはまぁ中学生だからまだ少年だなと、カテゴリー的に少年だったなと思って「文学青年」はあきらめたんですが

    今分かるよ
    主人公李徴の悲哀が分かるよ、慟哭が分かるよ
    それが自分が人生経験重ねたからなのか、ねこ助さんの素敵なイラストのナイスアシストによるものなのかと言えば後者な気がそこはかとなくしますが
    いいでしょう
    そこは突き詰めなくていいでしょう
    そこを突き詰めないことが虎化の第一歩の気もしますが
    人間が虎になるなんてことはありえないのでいいでしょう

    分かってるわ!
    虎は別に虎そのものじゃなくて人として思いやりとか親切心みたいなんを失くした恥知らずな状態の象徴だってことぐらい分かってるわ!
    だってワタクシ「文学青年」改め「文学乙女」ですからね!(最終的にキモい)

    • 2023/08/13
    • みんみんさん
      「げみ」さんって方のイラストの乙女本は見てみたいな…ちょっと好み♪
      「げみ」さんって方のイラストの乙女本は見てみたいな…ちょっと好み♪
      2023/08/13
    • ゆーき本さん
      みんみんさん
      変人1人ゲットだね
      「レビュアーと夜の境界線」
      みんみんさん
      変人1人ゲットだね
      「レビュアーと夜の境界線」
      2023/08/13
  • なるほど。美しい。
    繊細かつ大胆。
    そして、挿絵ではなく、絵本ではなく、コラボ作品として、山月記から得たインスピレーションから描く世界。
    山月記は、何回か読んでおり、文庫の「李陵・山月記」レビューで。
    今日は、中島敦の命日で再読しました。

    私の持っていたイメージとは、違ったけれど、このイラストで山月記が注目されるのは、嬉しい。

    • 1Q84O1さん
      乙女シリーズちょっと見てみたいのに我が図書館にはやっぱりなーい!
      乙女シリーズちょっと見てみたいのに我が図書館にはやっぱりなーい!
      2023/12/05
    • おびのりさん
      ここの出版社は、文豪シリーズもいろいろ出していて頑張ってる。
      1Qさん、うちの図書館は電子書籍で乙女の本棚10冊程蔵書あって、予約なければ、...
      ここの出版社は、文豪シリーズもいろいろ出していて頑張ってる。
      1Qさん、うちの図書館は電子書籍で乙女の本棚10冊程蔵書あって、予約なければ、すぐ見れるものがあるですよ。読むのは紙がいいけど絵はまた見れるから良いよね。

      蜜柑も黒猫も読みますよ。
      2023/12/05
    • 1Q84O1さん
      おびさん、読むのはやっぱり紙がいいですよね!
      ってか、電子書籍まだ読んだことないです( ゚д゚)ハッ!
      アナログ人間です…w
      おびさん、読むのはやっぱり紙がいいですよね!
      ってか、電子書籍まだ読んだことないです( ゚д゚)ハッ!
      アナログ人間です…w
      2023/12/05
  • 「人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い」の一文が胸に刺さりました。ねこ助さんの挿し絵も美しく、とても読みやすかったです。

  •  乙女の本棚シリーズから、中島敦さんとねこ助さんのコラボ作品「山月記」です。ねこ助さんの奇麗な虎と女性のイラストが表紙!ねこ助さんってスゴイなぁ…前の「赤とんぼ」もだけれど、本当に奇麗で繊細なイラストですよねぇ…。でもね、読むぞと思って…ページを開くと異次元(^-^;)。参った…やってしまったも…、難しくって読みきれないかも、と不安を抱えながらも読んでみました。

     物語の舞台は中国…李徴は詩人としての成功を夢見ていたがうまくいかず、妻子にも苦労をさせるほどその生活は逼迫したものに…李徴は夢をあきらめ一官吏として地方に赴任したが、やがて発狂し姿を消してしまう…。そんな李徴の存在に旧友の袁傪が気付き、「その声は、わが友、李徴子ではないか?」と声をかけ、虎の姿に変わり果てた李徴の心の内を聞くことになる…。未発表の詩を書き留めてもらい、また残してきた妻子のことを袁傪に頼む李徴…。李徴曰く、常に人との接点を持たず閉じこもってきた結果でであって、「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」の成れの果てが、この虎の姿だと話す…。ラストが切ないなぁ…李徴の気持ちを思うとね…。

     人間だった時の記憶が徐々になくなり、獣に自分がなっていく恐怖心は推し量れそうもありません…。でも、自分の力を過分に評価せず、人とのつながりを大事にしていくことが必要なんだと思えました。

    • かなさん
      なおなおさん、こんばんは!
      今日もお疲れ様です(*^-^*)
      なおなおさん、今日私がよく利用する図書館の新着チェックしたら
      なんと、「...
      なおなおさん、こんばんは!
      今日もお疲れ様です(*^-^*)
      なおなおさん、今日私がよく利用する図書館の新着チェックしたら
      なんと、「高瀬舟」が入ってましたぁ(*^^)v
      なおなおさんや1Q84O1さんが利用されている図書館には
      あまり置かれてないのは残念ですよね…!
      読みたい人、たくさんいると思うのに…
      だって、難しそうって遠ざけちゃってた文学作品を
      読もうと思えるってスゴイことですもんねぇ(^-^)

      だから、やっぱり1Q84O1さんの本棚にも
      乙女シリーズ、並べてもらいましょうか(*'▽')♡
      隠れ乙女返上して、正真正銘の乙女の仲間入りっ!!
      楽しみ、ですねっ♪
      2023/07/20
    • 1Q84O1さん
      ふたりの乙女よ、何か良からん陰謀を企てておるようだな!
      その陰謀には引っ掛からないぞ!w
      乙女を通り越してオネエになってしまいますよ…(;^...
      ふたりの乙女よ、何か良からん陰謀を企てておるようだな!
      その陰謀には引っ掛からないぞ!w
      乙女を通り越してオネエになってしまいますよ…(;^ω^)
      2023/07/20
    • かなさん
      乙女の1Q84O1さん、おはようございます!
      オネエなんて、とんでもない!!
      乙女のほうがいいでしょう?

      1Q84O1さんも乙女認...
      乙女の1Q84O1さん、おはようございます!
      オネエなんて、とんでもない!!
      乙女のほうがいいでしょう?

      1Q84O1さんも乙女認定しますから♪
      乙女も楽しいですよっ(*^▽^*)
      2023/07/21
  • いい(´∀`)♪

    唐代の中国を舞台に、詩人になる夢を果たせずに虎になってしまった李徴という男が、かつての友人である袁傪に自分の運命を語るという物語です。

    李徴は若くして科挙に合格しましたが、自尊心の高さから役人の職を辞めて詩人として名声を得ようとしました。しかし、詩作に没頭するあまり家族も顧みず、文名も得られず、貧困に苦しみました。再び役人として働くことになりましたが、出世した知り合いや後輩の命令に耐えられず、発狂して山へ消えてしまいました。そして、いつの間にか虎の姿に変わってしまいました。

    袁傪は監察御史となって旅をしているとき、李徴が虎になったことを知ります。李徴は茂みから出てこないまま、自分が虎になった理由や苦悩を告白します。李徴は自分の「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」、「怠惰な詩業」が原因だと気づきます。李徴は袁傪に自分の詩と妻子への計らいを託し、姿を消します。

    以上が山月記のあらすじです。この作品からは、人間として生きることの難しさや美しさを学ぶことができます。

    偶因狂疾成殊類 災患相仍不可逃
    今日爪牙誰敢敵 当時声跡共相高
    我為異物蓬茅下 君已乗軺気勢豪
    此夕溪山対明月 不成長嘯但成噑

    偶然にも狂気で異なる生き物になってしまった 災難が次々とやって来て逃れられなかった 今日、私の爪と牙に敵う者は誰だろうか? あの頃は名声と尊敬を得ていたのに 私は今や雑草の下の異物 あなたはすでに高い地位に上り詰めて力を持った 今夜、私は山と川の明るい月を見つめる 長い詩を歌うこともできず、ただ吠えるだけ
    (ChatGPTにて)

    人生、友情、苦悩...
    時代設定が唐代の為、「乙女の本棚」シリーズとはいえ、少し読みにくい文体でしたが、それを補って余りあるねこ助さんのイラスト。

    この世界観、いい♪



    人気シリーズ「乙女の本棚」第15弾は中島敦×イラストレーター・ねこ助のコラボレーション!
    小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。

    「その声は、我が友、李徴子ではないか」?
    袁傪は旅の途中、旧友の李徴と再会した。だが美少年だった李徴は、変わり果てた姿になっていた。
    中島敦の『山月記』が、書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどで美麗な人や獣を描き本シリーズでは新美南吉『赤とんぼ』を担当する大人気イラストレーター・ねこ助によって、鮮やかに描かれる。
    名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
    自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。

    内容(「BOOK」データベースより)

    中島敦の『山月記』が、書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどで美麗な人や獣を描き本シリーズでは新美南吉『赤とんぼ』を担当する大人気イラストレーターねこ助によって、鮮やかに現代リミックス。人気シリーズ「乙女の本棚」の第15弾が登場。小説としても画集としても楽しめる魅惑の1冊。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    中島/敦
    明治42年(1909年)東京生まれ。東京帝国大学卒業後、教員生活を経てパラオ南洋庁への勤務をしながら執筆活動を行う。喘息のため33歳で病没

    ねこ助
    鳥取県出身のイラストレーター。書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどのイラストを手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    • ヒボさん
      なおなおさん、こんばんは♪
      この世界観、たまりませんね( ̄¬ ̄)ジュル
      シリーズ初の☆5つつけちゃいました♪
      猫写、わかりますよ~(笑)
      ...
      なおなおさん、こんばんは♪
      この世界観、たまりませんね( ̄¬ ̄)ジュル
      シリーズ初の☆5つつけちゃいました♪
      猫写、わかりますよ~(笑)

      ちなみに、今日借りた「刺青」も☆5つつけました!!
      2023/08/10
    • かなさん
      ヒボさん、こんばんは!
      すごいっ!漢詩を、chatGPTで??
      イケてますっ(*^^*)

      ですね、本当に山月記の世界観…
      私も結...
      ヒボさん、こんばんは!
      すごいっ!漢詩を、chatGPTで??
      イケてますっ(*^^*)

      ですね、本当に山月記の世界観…
      私も結構好きです♪

      難しいなぁ…って読み始めは思ったけれど
      それでも読みたいからと読んでよかった作品です。
      2023/08/10
    • ヒボさん
      かなさん、こんばんは♪

      漢詩の要訳のみならず、本書の感想をどう残すかに悩み(今までと少し違った感じにしたくて)、唐代の中国~漢詩の訳までを...
      かなさん、こんばんは♪

      漢詩の要訳のみならず、本書の感想をどう残すかに悩み(今までと少し違った感じにしたくて)、唐代の中国~漢詩の訳までをChatGPTに頼ってみました^^;
      その下、人生、~いい♪までが私の感想です(笑)

      因みに新潮文庫版は長期積読中^^;
      先に本書を読んでおいて正解な気がしていますが、いつか、きっと、そのうち、読める日が来ると思います^^;
      2023/08/11
  • この本の挿画と以前読んだ新潮文庫の『李陵・山月記』の挿画とでは、最初に受けるイメージがかなり違います。挿画の影響は大きいと思いました。

    読了後は、以前よりも李徴(りちょう)の思いが私の心に響きました。大人になってから読み返すと、気持ちがよく理解できるようになっていました。特に、袁惨(えんさん)の心の広さに答えるかのような最後の思いやりが、なんとも言えず物悲しく感じました。最後のページのイラストが、それをよく表していました。

    それにしても、中国の『人虎伝』に拠る小説とはいえ、32歳でこの小説を書いたなんて、すごいです。早世していなければ、他にどんな小説を書いたんだろうと、改めて思いました。

    • かなさん
      おはようございます。
      今度は、ねこ助さんですね♪
      というか、内容がこの作品は難しくって…
      読み進めるのに私は難儀しました(^-^;
      ...
      おはようございます。
      今度は、ねこ助さんですね♪
      というか、内容がこの作品は難しくって…
      読み進めるのに私は難儀しました(^-^;
      でもイラストが素晴らしいんですよね!
      だから、私は読めました。
      2025/05/21
    • フリージアさん
      かなさん
      おはようございます♪
      ねこ助さんが描く『山月記』は、新しい感覚で、素敵でした。
      私は『山月記』のような文章を読んでいると、背筋が伸...
      かなさん
      おはようございます♪
      ねこ助さんが描く『山月記』は、新しい感覚で、素敵でした。
      私は『山月記』のような文章を読んでいると、背筋が伸びる感じがするんです。難しいけれど、それもまた楽しく感じながら読みました。
      2025/05/21
  • 純粋で自尊心の強い、儚くも悲しい男のお話。

    以下、ネタバレあり。

    李徴は、詩人として世の中に認めてもらえないことに憤り、ある日姿を消す。妻子を残し。

    袁傪はある日、山を通る時に虎に襲われそうになる。
    しかしその虎はかつての友、姿を消した李徴であった。

    完全に虎になってしまう前に李徴は袁傪に自らの心中を語る。

    自惚れが過ぎ、自尊心を失い転落してゆく様か。

    読了。

  • 乙女の本棚シリーズ コンプリートしているブク友さんに圧倒されつつ、読めてなかった古典を手にする素敵な時間になるので少しずつ読もうと思う。

    詩人の志半ばで失踪後に、友との偶然の出逢い。臆病な自尊心と尊大な羞恥心の所為でこのような運命になるとは。一日のうちの数時間は人間の心が還ってくるなんて、尚更辛さが身に染みる。
    月を仰いで咆哮する様子が美しく切ない。白と黒基調が交互に組み合わさった背景が不穏な文体との絶妙なバランス。獣の毛並みの筆感が素晴らしい。中性的な魅力を放つ人は生気を失った心ここにあらずといった表情。時折出てくる猫の可愛さに救われるよう。肉球の質感、人の爪先、服のしわなど、細部まで丁寧に描かれている。

    • かなさん
      ベルガモットさん、こんばんは!
      「山月記」も素敵な作品でしたよねぇ…
      読み始め難しくて最後まで読めるか心配になりましたけど、
      ねこ助さ...
      ベルガモットさん、こんばんは!
      「山月記」も素敵な作品でしたよねぇ…
      読み始め難しくて最後まで読めるか心配になりましたけど、
      ねこ助さんの素敵なイラストに助けられました(^^ゞ
      乙女の本棚シリーズ、
      私は図書館に入ったらすぐに予約してます!
      最初は、ちょっとおばさんなのに??って
      借りるのに抵抗あったけど、慣れって怖いですよねぇ…
      ある意味、おばさんだからできることだったりσ(^◇^;)

      そして、こちらにひと言お祝いを…
      NHK短歌の佳作秀歌掲載、おめでとうございます!
      2023/10/22
    • ☆ベルガモット☆さん
      かなさん、コメントありがとうございます♡
      お祝いメッセージまでくださり嬉しいです!

      私はもっと大人な乙女なのですが、本は人を選ばない...
      かなさん、コメントありがとうございます♡
      お祝いメッセージまでくださり嬉しいです!

      私はもっと大人な乙女なのですが、本は人を選ばないという事で借りることにしました♪かなさんの、すぐ予約する心意気お手本にします!!!
      そうなんです、読み進めるのに理解を助けてくれる、素敵なイラストばかりですよね(^^)/
      2023/10/23
  • 自分を見つめ直させてくれる、律してくれるような物語。

    山月記は中学でも高校の授業でも取り上げられて、暗唱した記憶あります。

    時間が無いを言い訳に、挑戦することや自分磨きを怠ること。その背景には、自分の力不足が露呈してしまうかもしれないという恐れがある。それを覆い隠すための理由探しに躍起になっていないか? 振り返る機会になりました。

    ねこ助さんのイラストと各ページの配色が素敵です。イエローベスの秋って感じで……
    日本の伝統色×何処か寂しさを感じさせる内容
    秋の夜、読むのにピッタリだなと思います。

    (涼しくなってきたからか、やけに感傷的( ¯꒳​¯ )ᐝ)

    • かなさん
      Kさん、こんばんは!
      「山月記」私は、難しすぎて
      最後まで読める気がしなかったんだけど、
      気が付いたら読み終えてました。
      やっぱり名...
      Kさん、こんばんは!
      「山月記」私は、難しすぎて
      最後まで読める気がしなかったんだけど、
      気が付いたら読み終えてました。
      やっぱり名作なんですよねぇ~

      「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」…
      自分にもそんなところがないか、
      考えてみたり(^-^;
      深い作品ですよね!

      ねこ助さんのイラストも
      すごくよくて、読めてよかったと思える作品です(*^^*)
      2023/09/07
  • 『山月記』は、私にとって大切な物語の1つだ。
    この本は、中島敦の作品というより、ねこ助さんの作品と割り切って手に取るべきなのかも。

  • 久々に読んだ山月記。
    何故、虎になってしまったのかと考えていたのに最後には何故、人間だったのかとなるあたりが怖い。

  • 中国は唐の時代、官吏の身分に満足できず、詩人として身を立てようとして、妻子をおいて山中に消えた<隴西の李微(ロウサイのリチョウ)>。 自身の数奇な運命を友人の<袁惨(エンサン)>に語った『詩人に成りそこなって、虎になった哀れな男』の説話は、 昭和17年発表された中島敦(1909-1942)の作品です。李徴の 切ない思いが漢詩に詠まれており、その意味する寂寥感の深さに打ちのめされてしまいそうな作品でした。

  • その声は、我が友、李徴子ではないか。

    学生時代に教科書で読んだ物語。

    絵柄は美しいけれど私のイメージする2人ではなかったかな。

    自尊心と羞恥心が邪魔して行動に移せないということはあるかもしれない。自分を高めるためには誰かと接しないといけないなと改めて。

  • 図書館で見つけて、表紙に惹かれて借りてみたら、学校の教科書に載っていた話でした。

    大人になった今、久しぶりに読みました。昔読んだ時よりも今のほうが、虎になってしまった李徴の気持ちがよく分かりました。

    やはり教科書に乗る作品というのは、名作なのだなとしみじみと思いました。

  • 「その声は、我が友、李徴子ではないか?」
    高校の現代文の授業で読んで以来。言い回しや表現が小難しかったけど、書かれていることにハッとさせられたのを覚えているし、今でも折に触れて戒めのように思い出すことがある。
    そして当時あやふやだった部分も、時を経て人生観が熟し(言い換えれば"老い"かもしれない)、さらに深く読むことができた気がする。
    「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」。己の才能を誇りながらも誰より傷つくことを恐れ、ただ驕り高ぶって刻苦を厭い、努力を放棄してきた李徴の無念と後悔。
    李徴を虎の姿に変えてしまったものの正体が手に取るように分かるから、刺されるような鋭い痛みを覚える。
    旧友の袁傪に、慟哭の咆哮を聞かせる最後の場面が、物悲しくも力強くて沁み入る。私も虎になって月に向かって咆えたいよ。
    文机いっぱいに寝そべる豪然たる虎のイラストがとっても素敵で、ページをめくる手が止まりしばらく陶然とした。

  • 教科書にも載ってたな、中島敦の『山月記』。割と好きな作品で、国語の授業でも楽しみだったけど、、、改めて読んでみると、また違った印象で面白かった。
    李徴さん、確かに人としてはなかなかダメな感じの人。そのダメさが転じて虎になっちゃう、という発想になるところが、中島敦のすごいところ。
    イラストも素敵だったけど、文章の内容とは多少ズレてて残念。ま、イラストはイラストで楽しめは良いのかも。小説からインスピレーションをもらって、ってことであれば素晴らしいです。

  • イラストの美麗さだけでなく、それ以外の文字色や背景色まで合わせて山月記の、ほの暗く切なく愛しい世界観が詰め込まれた一冊でした。カバー裏のイラストも必見。

  • 袁傪は旅の途中、旧友の李徴と再会した。
    たが、美少年だった李徴は変わり果てた姿になっていた。

    粗筋だけは昔から知っていた作品。ねこ助さんの挿絵が美麗なのも手伝いするする読めた。
    李徴が人間性を失っていく恐怖や詩人として詩を残したい想いを残した妻子の生活より優先したことに対する自嘲が哀しかった。

  • 「山月記」は気になっていたけれど何となく読んでいなかった作品。
    小難しそうで…実際学生時代読んでも多分ふんわりとした感想になっていたと思う。
    漢詩、もうちょっと勉強するべか。

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著者プロフィール

鳥取県出身のイラストレーター。書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどのイラストを手がける。著書に『魚服記』(太宰治+ねこ助)、『山月記』(中島敦+ねこ助)、『赤とんぼ』(新美南吉+ねこ助)、『Soirée ねこ助作品集 ソワレ』がある。

「2023年 『ルルとミミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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