盆の国 (torch comics)

著者 :
  • リイド社
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本棚登録 : 303
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・マンガ (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845844272

感想・レビュー・書評

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  • 中学生の頃、夏の海で流されて足が付かず息ができなくて
    もうアカンって時がありました。

    暗い海の底へと沈んでいく自分。
    朦朧とする意識の中で
    光射す方から手が見えるんです。

    握手を求めてくるかのような力強い腕です。

    もう死に物狂いでその手に掴まったら、
    気がつけばいつの間にか元の海岸に戻ってました。
    (顔は見えないんやけど、繋いだ手のひらの感触で
    僕が幼い頃に事故で亡くなったおとんやって瞬間的に理解しました)

    夏は霊界への扉が開き
    この世とあの世の境界線があやふやになるとき。
    不思議な出来ごとも多いと聞きます。


    ということで、
    この漫画の世界もそんな不思議な夏のひとときを描いています。

    夏休み中の中学3年生の少女、秋にとって
    お盆は逝ってしまった人たちが帰ってくるため、大好きな季節だった。
    (秋にはお盆の間だけ逝ってしまった人たちが見えるのです)

    「このままずっとお盆だったらいいのにな~」
    ふと思った妄想がなぜか現実になってしまい慌てふためく秋。

    何度も繰り返す同じ1日。
    次の日もその次の日も
    その次の次の日も
    日付けは8月15日のまま。

    そしてひょんなことから知り合った謎の浴衣姿の青年、夏夫との不思議な冒険の日々が始まります。
    舞台はおそらく京都であろう
    はんなりした言葉が心地いい情緒ある町。
    うだるような暑さの中、
    花火、盆踊り、アイス、夕立、高校野球、蝉の声。
    儚く繰り返す夏の描写が郷愁を誘い鼻の奥がつーんとなる。


    露店から漂う
    林檎飴の甘酸っぱい匂いと花火の火薬の匂い。
    浴衣姿の彼女の細くしなやかなうなじとか、
    喉を刺すキンキンに冷えたラムネの味とか
    夕立を予感させる切なく甘い雨の匂いとか、
    この漫画を読むたびに儚い夏の情景がフラッシュバックしていく。

    亡くなってしまったおじいちゃんや
    大好きだった猫のしじみがずっとそばにいて姿が見えることに喜ぶ秋だったが、
    何度も繰り返すお盆休みの中で
    自分が死んだことが分からず彷徨う霊たちの姿も見えるようになり、
    生への執着を捨てきれず後悔する霊たちの姿に
    次第に心を痛めていきます。

    やがて分かる夏夫の正体。


    作者は当時まだ新人で本作が長編デビュー作だということだけど、透明感ある独特な感性は得難い魅力。

    柔らかく可愛いタッチの絵柄で
    前半はほのぼのとした中に誰しもが思春期の夏に体験した切なさと
    少女の揺れ動く心をうまく閉じ込めているし、
    一転して後半は
    夏夫や霊たちのためになんとかしてこの世界を元にもどそうと奔走する秋のシーンがファンタジックで
    まるでジブリの大作映画を観てるかのような緊張感と切実さで読み手の胸を打ち抜きながら、
    ラストは冒険を終え少しだけ大人になった少女の悲しみと安堵と誇らしさを見事に表現している。

    秋の優しさやいじらしさと
    別れの切なさに何度も泣いてしまうのに
    すぐにまた読み返したくなる、
    なんとも不思議な漫画です。


    オリジナルマンガ公開サイト「トーチweb」にて
    試し読みできます。
    http://to-ti.in/product/bonnokuni

    『THE BEST MANGA 2017 この漫画を読め!』第1位作品。

  • 主人公、秋はこの世の物ではないものが見える。ある年のお盆の日を境に1日が繰り返される。永遠に続くかと思っていたが不思議な青年夏夫と出会う。元の世界へ戻ろうとする。唐突に自分のことを好きにならないでくれという夏夫に惹かれてゆく秋。物語の最後に涼しい風が吹く。。。いつの頃からだろうお盆の支度をしなくなったのは。祖母が亡くなっても送り火をしなかった。。。さぞや寂しいことだろう。父や母が死んでもやることはないだろう。私の将来は誰にも看取られずたった一人で死んでゆく。この物語は生者と、死者とまっすぐに向かい合うことの大切さを教えてくれる。いい本に出会った。

  • 「夏」を感じる作品を何か読みたいな~と思っていたところ、書店で出会った。スケラッコさんも、連載媒体のトーチも初めて知ったけど、webのお試し読みが面白くて購入。
    中三の少女・秋は、お盆に帰ってくるご先祖様(おしょらいさん)の姿が見える。友達と気まずくなってしまい憂鬱な秋。おしょらいさんとして帰ってきた、飼い猫のしじみやおじいちゃんとずっといられるなら、このままお盆だったらいいのに…と何となく願ったら、まさか8/15をエンドレスに過ごすことになるとは。そんな矢先に出会った、謎の浴衣青年・夏夫。彼と共に、エンドレスお盆の謎を解き明かそうとするだがー。
    飄飄とした独特のタッチだけど、むしろ作品世界に合っているかなと。おしょらいさんはユーモラスでかわいらしく、その一方で自らの死を受け入れられない切なさも感じ、胸が痛む。特に、突然死した秋の同級生・新見君とのエピソード。同情しないでほしいと言い放つ新見君、彼のために何かしたいと思ってもうまくいかない秋の思い、どちらの苦しみもわかるだけに、デリケートな心理描写が新人ながら本当にうまいなと思った。
    夏夫の正体がわかり、盆の世界がじっとりとした暑さと共に混迷を深めていき、夏夫と秋がこの謎の核心に迫るべく「敵」に挑んでいく過程はゾクゾクする。若干とっ散らかっている感はあるけども、シュールで不気味な展開の中に哀しさも感じさせ、十分に引き込まれる。
    まっすぐで、勇敢で、心優しい秋のキャラクターがとてもいい。ノスタルジックなのにどこか新しく、世代を問わず面白いと思える、夏コミックです。

  • めちゃくちゃいいです。めちゃくちゃ面白い。
    夏の匂い感じられる。
    お盆の時期に帰ってきてるご先祖さまや亡くなった人たちはこんな感じなのかなって、想像させられる。
    ひと夏の冒険という雰囲気。
    ぜひ夏にアニメ映画化してほしい。
    映画館で見てみたい。大好き。

  • すごいとしか言いようがない。
    全体を通して、夏の日のジメジメとした蒸し暑さを感じる。
    シンプルな画だけど、すごく感覚的で型にはまってなくて、勢いとか怖ろしさが伝わってきた。
    ストーリーもテンポが良くて、伏線もありつつ綺麗にまとまっていたと思う。
    切ないような、暖かいような気持ちになった。
    夏のお盆の雰囲気にぴったりなお話。

  • こんなに素晴らしい作品を一年もほうっておいたなんてすごくもったいないことをした。
    ツイッターで、今連載されてるお好み焼き屋さんのマンガからここにたどり着きました。
    ホラーなのに怖くない感じなのに時々すすすっと怖いんですよ。うまく言えないけれど。
    過剰に怖くはない。変に驚かせるものでもない。でも、隣にある怪異がスーッと生活に入ってくる怖さ、というか。
    野球部で、雷に打たれて亡くなった少年が切なかった。
    最後はみーんなみーんな救ってしまった。すごいなあ。じんわりあったかくて、ずっと大切な場所においておきたい作品です。

  • ブクオフで購入して正味1時間で読んだ。
    これはサラッと読んで、もう一度じっくり読むやつ。
    緩い線で境界線が曖昧なところが、現実なのか夢なのか分からない感覚を生み出していて絶妙。

  • お盆はご先祖さまが「常世」から「浮世」へと帰ってくる。中学三年生の秋(あき)が暮らす六堂町ではご先祖さまを「おしょらいさん」と呼ぶ。家族だけの秘密だが、秋は昔から「おしょらいさん」が見えていた。秋は話すことはできないがペットのしじみ、そしておじいちゃんと会えて喜ぶ一方、今年の春に落雷が原因で亡くなった同級生の新見くんとも会ってしまい戸惑ってしまう。友人と喧嘩したままであることもあり、お盆がずっと続けば良いなと秋が願ったその時。渦巻いた雲の出現そして謎の青年夏夫(なつお)と出会い──。第1〜8(最終)話。
    お盆の時期ということで、公式サイトにて2017年8月15日12時まで全話無料公開を機に読了。以前から話題に上がっていたので気にはなっていたので飛びつきました。繰り返される8月15日ですが、天気が異なるなど全く同じ日にならないところが変わってますね。絵のデザインは好みだっただけでなく、夏夫の哀しい過去を知り彼に惹かれてゆく秋の心境がとても切なく美しかったです。読後感も良し。原画展やサイン会を大阪で開催していたのを知っていましたが、行き逃したこと後悔。とりあえず単行本は近いうちに購入予定です。
    公式サイト→ http://to-ti.in/product/bonnokuni

  • お盆の話。
    暑くてぼんやりしていろんな境目が曖昧になる、不思議な話。

    線画柔らかくて話に合っていて心地よい。

  • 亡くなった人が帰ってくるお盆。主人公の女の子秋は亡くなった人が見える。猫のしじみも、おじいちゃんも。ずっとこのままお盆だったらいいのに…。そう思っていたら次の日も、また次の日も15日のお盆のままかわらなくて町は亡くなった人(おしょらいさん)であふれてしまった…!不思議で切なく優しく夏の情緒たっぷりの心温まる物語。夏夫さんが妙に色っぽくて素敵☆

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