芸術の設計―見る/作ることのアプリケーション

著者 :
  • フィルムアート社
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本棚登録 : 191
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845907069

作品紹介・あらすじ

マニュアルを超える、表現技術のハード・コア!素人から抜け出すための秘密の方法!使えるアプリケーション/アーカイブ・ガイド付き。

感想・レビュー・書評

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  • この本を買いに新宿サザンテラスの紀伊國屋に行ったら十数冊平積みされていたのにまず驚いた。美大や専門学校の教科書にでもなっているのだろうか。2600円だから学術書としてみれば安い部類になるのかもしれないが。

    タイトルからではちょっと内容を把握しづらいし、じっさいこういう原論的な話は案の定むずかしい。いわゆる芸術と呼ばれるものの主要分野である、美術・音楽・建築・ダンスの4つを技術論として読み解くというもので、「芸術は何によって構成されるのか」を問うていて、「芸術とは何か」を問うているわけではない。本書においては形式が内容に先行している。

    自分なりにこの本の内容をひと言でまとめるとすると、「芸術とは本来、作者のインスピレーションによる極めて一回性的(つまり反復できない)なものだったが、それを反復・再現可能にしてきたプログラムは、どのように構成されるのか?、そしてそのアプリケーションの構成要素についての解説書」ということになるだろうか。

    建築から音楽、美術、ダンスにいたるまで、それらを「可視化する」ための技術について説明されている。たとえば、音楽で言えば、コード表や楽譜、ムーグの周波数チャート、鍵盤楽器や弦楽器の配列、さらにはDTMソフトウェアのシーケンスがいかにしてルール付けされてきたかを執拗なほどに詳しく見ている。

    芸術という、とても即興的で一回性の強い行為を、いかにルール付けしてアプリケーションとして成立させて反復可能なものとするか。芸術に直接携わることのない自分ではあるけれど、どれだけ多くの人々に感動や共鳴をもたらして気持ちの良いユーザー体験を実現するかという、メディア運営にもいくぶんか似た要素があることも確か。それにしても、ここまで綿密に史料を引っ張り出す筆者の熱心さに頭が下がるばかり。

  • 記譜法=ノーテーションに着目して、建築、音楽、ダンス、美術を分析する。フォトショ(ビットマップ、全体の分節)とイラレ(部分の関係が全体を構築)を比較して、マレーヴィチとタートリンに擬えるなど(p.237)

  •  コンピューターやソフトウェアの登場によって、多くの人が、同一のインターフェイスを用いながらも、多種多様なジャンルの作品を生みだすようになりました。本書では音楽、建築、ダンス、美術の4つのジャンルについてそれぞれ「技術から表現形式を読み取る」ことを目的として論が展開されていきます。
     私たちは普段芸術作品を鑑賞するときには、「こんな材料で作られている」「こういうモチーフが使われている」という具合に目に見える「表現」に目が行きがちです。しかし本書ではそれが生み出されるもととなる「技術」に着目することで、多様なジャンルが存在する芸術において共通する、普遍的な要素を見つけ出そうとしています。また、巻末には初心者でも技術を学べるように、おすすめの書籍やソフトウェアの説明があり、まさにジャンルを超えて、技術を理解し、使いこなすための教科書になっています。
    (ラーニング・アドバイザー/芸術 AKAGI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1305138

  • 建築家がおすすめの本、ということで手に取りました。

    建築、音楽、ダンス、美術の4つの分野を「設計」という観点から読み解いています。

    特にそれぞれの分野でのコンピュータの役割に焦点が当てられているのですが、俗に言う「IT万歳!」の風潮とは一線を引いています。

    コンピューターの発展がいかに反面教師的にその分野の発展に貢献しているのか?が読んでいて興味がわきました。

    内容も学術的な面もありつつ、著者の主張がはっきり分かる内容で、読んでいて気持ちがいい本ですね。

    これから社会に出て行く美術系の学生さんに読んでもらいたい一冊です。

  • TKC推薦

  • 著者が執筆した部分と、プロジェクトにより書き起こされた部分とにわかれており、両者で言葉の圧縮率が大きく異なるため、本全体に配される情報のバランスがあまり良くないと感じた。

    しかしながら、優れて正確に、設計-デザインを捉えているので、その領域に深く関心がある方には読んでもらいたい。

    思考することと、それを表現として形に起こすこと。この当たり前であり途方もない距離を、より良く認識してうまく進むための指針をイメージすることができた。

  • 芸術としての建築。設計として他分野の芸術も捉えているので、参考程度に流し読みすればいいでしょう。方法論としては、巻末のソフトウェアを如何に使いこなすかといったところか。いずれにしても、興味深く読ませてもらった。

  • 修士論文参考文献。

  • 「芸術諸ジャンルの表現形式をそれぞれの技術的特性から理解したい」あとがきより。
    「作る現場」の教科書。
    使えるアプリケーション/アーカイブガイド付き

  • 必読本

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著者プロフィール

一九五五年東京生まれ。造形作家、批評家。絵画、彫刻、映像、建築など、ジャンルを超えて作品を創造するとともに、美術批評を中心に執筆を続けてきた。一九八二年のパリ・ビエンナーレに招聘されて以来、数多くの国際展に出品し、二〇〇二年にはセゾン現代美術館にて大規模な個展を開催。また、同年に開催された「ヴェネツィア・ビエンナーレ第8回建築展」の日本館にディレクターとして参加するなど幅広い活動を行っている。
主な著書に『近代芸術の解析 抽象の力』(亜紀書房)『ルネサンス 経験の条件』(文春学藝ライブラリー)、『芸術の設計』(編著、フィルムアート社)、『れろれろくん』(ぱくきょんみとの共著、小学館)、『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』(谷川俊太郎との共著、クレヨンハウス)、『絵画の準備を!』(松浦寿夫との共著、朝日出版社)、『白井晟一の原爆堂 四つの対話』(共著、晶文社)。作品集に『TOPICA PICTUS とぴか ぴくたす』(urizen)、『視覚のカイソウ』(ナナロク社)、『Kenjiro OKAZAKI』(BankART1929)など。

「2021年 『感覚のエデン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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