編集進化論 editするのは誰か? (Next Creator Book)

  • フィルムアート社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845910540

感想・レビュー・書評

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  •  たぶん、編集者の仕事は忙しい。たったの一度でも編集者を始めたら、「私は編集者です」と改めて名乗る暇もなく、編集者としての人生はしばらく転がり続ける。名刺には“エディター”の印字。企画立案やディレクション、取材、校正など、気がつくと編集者がやるような仕事に精励している自分がいる。

     そんな慌ただしい日常の隙間にて、それは突然襲い掛かってくる。帰りの山手線、休憩中のインドカレー屋、休日の代々木公園、布団のなかで、発作的に沸きおこる「マジでやばい」感。編集者っぽいことをしているが、胸を張って「私は編集者です」と言い切れるだけの感触がまったくない。それだのに、おれは24時間のほとんどあるいはすべてを編集者のように過ごしている。やり過ごすことができないほどの強烈な違和感だ。この人生はとても生きてゆかれない。渋谷のPARCO前にてその発作に襲われ、あわてて地下の本屋に駆け込んだ。その時に買った本がこれ。

     本書に書かれている“編集”にまつわる事柄、たとえば編集に対する基本的な考え方やワークフロー、そこから展開されるディレクションやコミュニケーションデザインなどの方法については、実践で見て触れて感じてきたものと同じだった。“近い”ではなく、“同じ”である。どうやらおれはそれなりに編集者しているようだ、という生温い安堵に包まれる。それと、“編集者”のワークフローが共通言語としてしっかりと体系化されていることに驚く。よく考えると商売としては当たり前のことなのだけれど。編集の体系化ってちょっとヘンな気もする。でも、これを読んで編集者を始めるのと読まずに始めるのとでは、単純に仕事に対するレスポンスの精度が変わってくるだろう。そのくらい、現場レベルの内実がよくまとめられていると思う。未来の話も素敵だし。これから編集者になる人が読めば、きっといくつかの豊かな気持ちが芽生えるに違いない。薦めたい人の顔は浮かばないけれど、たくさんの人が手に取って良い体験を得ていそうな気がする、そんな本だ。

     結局のところ、おれの「やばい」感は“職業としての編集”ではなく、“生き方としての編集”を追求することの困難さからきているのかもしれない。何かを編むということは、何かを編まないということ。異なるものを「と」でつなぐことで新しい場が生まれたとき、とびきりの幸福感と達成感に満たされて、ぶちあがる。でも、そのカタルシスの彼岸で、編まなかったものへの後ろめたさを常に抱えている。自分のつくった世界が鋭利であればあるほど、正しければ正しいほど、同時に世の中の生きづらさを増やしてはいないかと怯える。編集者になってからというもの、戦が絶えない。否応なしに押し寄せる矛盾との戦い。あるいは、正義のヒーローの面を被ったカイジュウの群れの残像との戦い。ときどき、不毛な代理店との戦い。戦をやめられないのは、人生における数少ない“どうでも良くないこと”だから。すべての戦いに決着が着いたとき、初めて胸を張って「私は編集者です」といえる気がする。発作はまだ止まない。次の本に手を伸ばす。

  • 菅付さんの『はじめての編集』と一緒に読むといいのかもしれない。『はじめての編集』は編集入門本というよりは編集論を簡単に論じた本という印象が強かったので、より実践的なのはこちらの本だと思う。原価計算からコピーの付け方まで載っている。何より1人の作者が書いたのではなく、複数人の編集者が書いており、インタビューもあるので、編集者志望とかの人にとっては必読本かもしれない。

  • 編集者は常に進化しないと生き残っていけない。スーパービジネスマンっていうのはあながち嘘ではないと思う。

  • 第1回奈良県立図書情報館ビブリオバトル「次・NEXT」で紹介された本です。
    2011.4.23
    http://eventinformation.blog116.fc2.com/blog-entry-593.html?sp

  • 蔵書整理で手放すので、再び出会い読む日もあるか

  • 思索

  • 読了

  • 後ろの方の本屋さん等の紹介が良かった。どんな姿勢でどんな活動しているのか分かりやすく説明されています。
    今どうなっているのか、追ってみたい。

  • 「これからの編集者は、デスクワークが中心の知識集約型の仕事だけでなく、フィールドに飛び出し、
    プロジェクトを立ち上げ、他業種との幅広いコラボレーションのもとで行なわれます。ディレクター、
    デザイナー、プログラマー、アーティストの仕事とも重なり合う、広範囲な仕事となるでしょう。
    さらには、より日常的な、パーソナルなレベルにおいても、自分の生き方、表現にも広がっていきます。

    そのような広義の編集を行なう人たちに向けて、本書はさまざまな領域で活躍する現役の編集者を
    中心に書かれました。紙メディアが長い歴史のなかで養ってきた「編集の原理」を受け継ぎつつ、
    ウェブ編集やプロジェクト編集、日常編集など、今後さらなる展開をみせる「未知なる編集」を
    どう考えればいいのか?

    編集はつねに進化します。
    これからの時代のeditorshipを発見するため、編むことの核心に迫ります。」

    「編集」はもはや雑誌や書籍に留まるものではない。
    だから必然的に編集者は、あらゆる領域を横断的に編んでいくスキルが求められる。

  • いろいろな編集のあり方がある。割と読みやすく、とっつき始めにはちょうどいいかも。

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著者プロフィール

評論家・編集者。1964年、東京生まれ。「シティロード」「ワイアード日本版」「季刊・本とコンピュータ」などの編集部を経て、現在はフリーランス。著書に『ポスト・ムラカミの日本文学』(朝日出版社)、『極西文学論―Westway to the world』(晶文社)、『〈ことば〉の仕事』(原書房)、『再起動(リブート)せよと雑誌はいう』(京阪神エルマガジン社)、『失われた娯楽を求めて―極西マンガ論』(駒草出版)など、共編著に『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』(バジリコ)、『グラビア美少女の時代』(集英社新書)、『ブックビジネス2.0―ウェブ時代の新しい本の生態系』(実業之日本社)、『編集進化論―editするのは誰か?』(フィルムアート社)など。

「2020年 『失われた「文学」を求めて【文芸時評編】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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