- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845916245
感想・レビュー・書評
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「本」が好きだと自称する人は、必読と言っても過言ではないと思います。それくらい「本」が好きな全ての人に、読んで欲しくなる一冊でした。
「本」が語る「本自身」の自分史。文字が生まれる前から、粘土板、パピルス、羊皮紙、紙、活版印刷、そして電子書籍へ。
本のこれまでとこれからの歴史を、本自身が語りつくす。ウィットに富んだ言い回しと、挿絵、そして偉人たちや文学作品の言葉の引用、いずれも本への敬意と愛が伝わってきます。
特に語り口が最高に良かった! 丁寧で知的な語り口なのだけど、ところどころユーモアがあって、歴史の話なのに堅苦しくなく、どこか柔らかさを感じる。『トイ・ストーリー』のように本に命が与えられ、その本が自分の言葉で語っているような、そんな感覚。
読んでいくうちに、本の個性や性格、そして声までが、なんとなく自分の中で形作られていきます。自分の中では読んでいて、自然とFMラジオのDJの声が、頭の中を流れていきました。文字を読んでいるのに、文字に聞き惚れてしまうような、今までにない感覚です。
情報量もちょうどいいくらいだったのではないか、と思います。専門的になりすぎず、あくまで「本」が思い出して語れる範囲だけ語っている、という印象を受けます。
昔の思い出を生き生きと語り、戦争を嘆き、図書館へ感情を高ぶらせ、電子書籍に対抗意識を燃やす。本の歴史が語られるというよりかは「本」のこれまで生きてきた物語が、等身大の感覚で語られていくよう。この感覚が非常に良かった。スケールの大きな歴史の話なのに、とても身近に感じられる。
ちょっと大人な友人の、面白い冒険譚を聞いているような、あるいは、祖父母の若かりし頃の話を聞いているような、どこか懐かしい気持ちにもなりました。
ところで自分は別に本好きではないと思っていました。本の中に書かれている物語や、知識、情報は好きだけど、本自体については「読めればいいじゃん」という感覚だったからです。
だから「読書は好き」と答えることはあっても、「本が好き」と答えることは、できるだけ避けるようにしていました。
でも、この本を読んで、自分は物語や知識を読むのが好きなだけじゃなくて、『本』というモノが好きだったんだな」と再発見できたような気がします。自分では気づいていなかったけど、本というモノ自体が好きだったんだなあ、と。それだけ、この『わたしの名前は「本」』という本は、本というモノの歴史と魅力を改めて教えてくれました。
そして、『私の名前は「本」』はすべての本に、命を吹き込むような一冊でもあった気がします。これを読んだ後だと、部屋にある本一冊一冊と、握手して語り合いたい気分になってくる。あなたはどうやって生まれ、ここまでやってきたのか。読まれているときは、どんな感覚なのか。
一方ですべての積読本に対しては、伏して謝りたい気分にもなるのだけれど……。
そんなふつつか者の自分ですが、これからは読書好きでなく、本好きとも名乗れそうです。 -
面白かった!
夢中で一気に読んだ。
本自身が一人称で語る本の歴史。
リズムの良い文章と独特で心惹かれる絵の相性がバツグンだった。
ところどころに挟まれる引用も、ハッとさせられるものばかり。
元々私は本そのものも大好きで、そんなはずはないのだけどどうしても「ちょっと生きている」(おかしな日本語だけど、これがぴったりなのだ。動いたりはしないし光合成もしないけど、ちょっと生きている)という気がしていたが、今作を読み終えて本棚を見ると、本達がそうですそうやって私達はここまで来たのですと胸を張っているように見えて、ますます愛しくなった。
(ゲラモニター感想) -
大切な「人」のために、「本」があるんだよね、、、
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親愛なる読者へ。
わたしは、あなたのために
ここにいる。
伝えること、読むこと、書くこと、広めること、残すこと。
「本」がおしえてくれる、大切な「本」の物語。
http://filmart.co.jp/books/novel/book/ -
本という歴史がイラストとウィットの利いた言葉で面白くそして的確に書かれています。
特に最後の「わたしを作り、わたしを愛してくれた人々に背表紙の裏から感謝を捧げたい」の一文はいいなぁ。
たとえばこの本が子どものいる家庭の本棚にあったら素敵だなぁ。
本を大切にしたくなる作品でした。 -
本(あるいは文字、記録)の歴史についてまとめている書籍は数多くありますが、まさに「本」そのものの視点から(「本」を擬人化して)語られているというのがこの本の魅力です。
パピルスや骨、粘土板などの草創期から、活版印刷、そして電子書籍までを網羅しており、一つひとつの文章も美しく印象的でした。金原瑞人さんの翻訳というのがその要因かも知れません。
これまでの人々が本を大切にしてきた歴史に対する感謝、そして大量に印刷されるようになって多くの人に読まれるようになったことについての喜びなど、本の視点から語られる「本」の歴史は、ひとりの読書好きとして、温かい気持ちになりましたし、図書館の職員として、これまで以上に「多くの人に本の魅力を紹介したい」と思わせてくれました。 -
ただただ面白かった。
手のひらと馴染む本のサイズも、
指先が心地良い紙の感覚も、
ところどころで目が嬉しくなるイラストも、
ディティールにまで目の届いたトータルコーディネートが
素晴らしい一冊だった。
おそらくこのトータルプロデュースへの
熱量の注ぎ方は本家に優っているのではないだろうか。
とにかく、好きだった。
文字の誕生、紙の誕生、仕様の発展。
グーテンベルクによる活版印刷の発明はもちろんのこと、
写生や禁書についても描かれていた本作品。
とても軽快な展開ではあるが、学びが多かった。
「本とは何か」
わたしも、まだ分からずにいる。
冒険?疑似体験?
智の宝庫?
安らぎ?
こころのご飯?笑
本を読む=学ぶ
おそらく、上の全てだろう。
どうしてわたしはこれほどまでに本が好きなのか。
どうしてわたしは、読書を愛するのか。
理由なんてない。
それじゃ足りない。
引き続き、この理由を探す旅を続けよう。
いったい、いつ、どこにたどり着くのだろう。 -
本の歴史。今の形の本ができるまでにはこれだけの歴史があった。
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独特の視点で語られる本の自伝。というか自分語り。
時々に出てくる感情が可愛くていい。
挟み込まれる引用文も素晴らしい。聖書にあんな書き込み!?とか(笑)。
手元に置きたい一冊になりました。 -
自伝というべきかどうか。
「本とは何か」。
本と紙と文字と。そしてそれ以前のとこれからの形態。
そう。本をめくる音が好きだし、本の端を折ることも好きなのだ。それは電子書籍ではできない。仮にできたとしても、何か違うのだ。
電子書籍は個人的には敬遠しているところだけど、本の分類は面白い。