サザビーズで朝食を─競売人が明かす美とお金の物語

制作 : 中山ゆかり 
  • フィルムアート社
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本棚登録 : 86
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845916320

感想・レビュー・書評

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  • 著者のフィリップ・フックはサザビーズの取締役を務めており、アート業界で40年のキャリアを持つという人物だ(サザビーズのウェブサイトには彼の略歴が載っている)。これまでにも何冊か美術にまつわる本を書いていて、何冊かは邦訳も出ている(同じ訳者による『印象派はこうして世界を征服した』(白水社)や、意外なところでは『灰の中の名画』という推理小説もある)。

    本書でフックが論じているトピックはとても幅広い。ただし、本書に一貫して流れているテーマというものはある。「何が絵画の価格を高めるのか?」という疑問に対する答え――著者の40年にわたるアート業界での経験に裏打ちされた答えが、本書の大きな柱だ。邦訳に付けられた副題「競売人が明かす美とお金の物語」は、この本の内容をとてもよく表している(原書には「アートの世界の一から十まで」という副題が付いている)。

    本書はボリュームがある本て、手に取るとずっしりと重さを感じる。でも、気軽にどんどん読み進められるのはフックの語り口の軽妙さのおかげだろう。5章の「用語集」はフックによるアート版「悪魔の辞典」で、読んでいて思わず笑ってしまう。絵画(やお金)にまつわるウンチクのような話も多く、本を読み終えた後にはきっと、誰かに内容を話したくなるに違いない。「絵を見る時には描かれた人物の口もとに注意するといいよ。口もとに笑みがあるかどうかで値段が何倍も変わってくるからね」。

    個人的にオークションの関心があるため、オークション会社が採用していた(今もしている?)という「(売値)保証」「取消不能の入札」の2つの仕組みが興味深かった。

  • 作者のフィリップ・フックはイギリスの最大オークション、ザザビーズのディレクターをしている。過去には同じく最大手のクリスティーズで働き、自身で画廊を持っていた経歴もある。アートと経済に関わり続けた人だ。
    そんな彼が、A-Z、辞書のようにアートにまつわる単語を挙げ、時にエッセイ的に書いた本がこれだ。

    さすが英国人というべきか、ひねりのきいた口調は読んでいて面白い。また、オークションで扱われる作品は、美術史的な価値とは違う価値で取引されているため、まさかこんなジャンルがあるとは‥(枢機卿をモチーフにしたジャンルとか)と驚かされる。華やかな世界の舞台裏には、カタログ作成や、評価、修復、経歴の調査など様々な過程があり、それらは売買に大きく影響するゆえに刺激的だ。
    日本では特に経済と芸術に線引をしたがる。美的なもの、精神的なものに金銭を関わらせるなんて汚い、という感覚はそろそろ潰えて欲しいものである。
    オークションで取り扱われる何十億という金額が全てというわけではないが、お金が動くところには必ず理由があるわけで、それを愉快な調子で書いた本作は、芸術をいつもよりちょっと違う視点で見せてくれるものだと思う。

  • 話はあっちこっちに飛びますが、世界規模のオークションハウスの競売人という特殊な職業にいる著者が、アートを文化資源として、金融資産として語りまくる本です。売れる絵にまつわるみんながストーリーもざっくり解説しています。

  • もう少し実際の絵が紹介されていると、より説明がわかりやすかったと思うのだが。

  • アート市場の裏側を優雅に、その一方でえげつなく語っていてとても面白かった。

  • 深い内容です。絵についての興味が深まります。
    日本についての考察も鋭いと思うところです。

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著者プロフィール

オークション会社サザビーズの現・取締役、印象派と近代美術部門のシニア・ディレクター。
ケンブリッジ大学で美術史の学位を取得後、1973年にオークション会社クリスティーズに入社し、80年から87年まで19世紀絵画部門の長を務める。画商として活躍したのち、94年にサザビーズに入社し、現在に至る。その間、英国BBCの人気テレビ番組「アンティーク・ロードショー」の鑑定人役としても知名度を高めた。オークショニア、画商として、40年にわたり美術市場で培ってきた経験と専門知識を活かし、執筆活動も行なう。著書に、推理小説『灰の中の名画』(ハヤカワ文庫NV)など美術界を舞台とした5冊の小説や、19世紀絵画を紹介した美術書もあるが、とりわけ美術市場に精通した立場から美術史を論じた書籍に対する評価が高い。世界各国での印象派の受容の歴史を分析した『印象派はこうして世界を征服した』(白水社)は、「フィナンシャル・タイムズ」紙の2009年の「ブック・オブ・ザ・イヤー」に、また『サザビーズで朝食を 競売人が明かす美とお金の物語』(フィルムアート社)は、「フィナンシャル・タイムズ」のほか、「サンデイ・タイムズ」「スペクテイター」「ガーディアン」など、2013年の各紙の「ブック・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。

「2018年 『ならず者たちのギャラリー 誰が「名画」をつくりだしたのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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