天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常
- フィルムアート社 (2019年9月26日発売)


- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845916375
作品紹介・あらすじ
草間彌生、ピナ・バウシュ、フリーダ・カーロ、アリス・ウォーカー、ヴァージニア・ウルフ、エミリー・ディキンスン、マルグリット・デュラス、スーザン・ソンタグ、ミランダ・ジュライ──
女性の作家、画家、デザイナー、詩人、アーティストは、いかにして日々「制作」に向かい、「生活」と「仕事」 の折り合いをつけていたのか。
大ヒット作『天才たちの日課』第2弾! 創作に打ち込むクリエイティブな女性たち143人の、惚れ惚れするほど鮮やかな/とても真似できない(してはいけない)ほどユニークな/頭を抱えてしまうほど並外れた、その苦闘が胸に迫る143通りの驚くべき試行錯誤。
それぞれの人物を特徴づける日々の日課や毎日のスケジュール、「仕事のお供」の嗜好品などはもちろん、創作に適した精神状態の保ち方や、自信がなくなったときの対処の仕方、さらにはいかに自分自身の場所や時間を確保したか、偏見や差別をどう乗り越えたかなど、とても他人事とは思えない切実な状況の数々は現代を生きる私たちにも大きなヒントになるはずです。
窮屈で不自由な枠からはみ出そうと格闘するすべての才能あふれる人々に捧げられた、自由と勇気のための福音の書となる1冊!
◆「私は自分の経験のすべてを物語にすることと引き換えに、悪魔に魂を売ったの」イサク・ディーネセン(作家)
◆「大切なのは規律を守ること。とにかく仕事をやり続ける。そうしたら突然、なにかが湧いてくる──なにかちっぽけなものが。それがどう化けるかはわからない。でも、誰かが明かりをつけようとしているみたいに感じる。すると、また勇気が湧いてくる」ピナ・バウシュ(舞踊家)
◆「私は成功しなくてはならなかった。だから絶対に、絶対にあきらめなかった。バイオリニストにはバイオリンがあるし、画家ならパレットがある。でも私にあるのは私だけ」ジョーゼフィン・ベイカー(ダンサー・歌手)
◆「”休み”という言葉をきくと、不安になるの」ココ・シャネル(服飾デザイナー)
◆「書くことは自分を使い果たし、自分の命を危険にさらすこと」スーザン・ソンタグ(作家・批評家)
◆(スランプにおちいっている作家へ)「なにをしてもいいけど[……]誰かに電話したり、パーティーに行ったりするのはだめ。それをすると、見失った自分の言葉があるべき場所に、ほかの人の言葉が流れこんでくるから。自分の言葉のために隙間を開けて、場所を作る。そして辛抱強く待つ」ヒラリー・マンテル(作家)
◆「黒人の女性が作家の人生を選ぶには、向こう見ずな勇気と、真剣な目的と、文学への献身と、強い意志と、誠実さが必要だ。なぜなら黒人で女性の作家はつねに不利な立場に置かれるからだ。あらかじめ、勝ち目がないように仕組まれている。しかし、いったん賽が投げられたら、もうあとには引けない」マーガレット・ウォーカー(詩人・作家)…
感想・レビュー・書評
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恥ずかしながらココ・シャネルが貧しい家庭に生まれ、思春期を孤児院で過ごし、正規の学校教育をほとんど受けなかったことは知らなかった。
マーガレット・ミッチェル
「簡単に書けないし、書いたものもちっとも気に入らない」
「書くことはほんとうに大変なの。毎晩、苦しんで書いても、2ページがやっと。翌朝、それを読み返してみると、ここもあそこも削除、削除となって、結局六行くらいしか残らない。それからまたやり直さなくちゃならない。」
風と共に去りぬの場合、各章とも少なくは20回は書き直したという。風と共に去りぬは何百万部も売れ、映画も作られ、ピューリツァー賞も受賞したが、ミッチェルは二度と小説を書こうとしなかった。「どんなに褒美をもらっても、あの苦しみをもう一度味わいたくないから」
キュリー夫妻には組織や団体の支援がなく、がらんとしたジャガイモの貯蔵庫みたいなところで実験をしていた。
45ヶ月の奮闘の末、マリーはついに純粋なラジウムを0.1グラム分離するのに成功し、原子量を測定して、新元素の存在を証明した。翌年、キュリー夫妻はノーベル物理学賞を受賞する。夫妻はその賞金を初めて実験助手を雇うために使った。ノーベル賞の受賞によって世間の注目が集まることは、夫妻にとっては迷惑だった。「ジャーナリストやカメラマンに終始つきまとわれて、あちこちからも招待されているけれど、どれも断っています。大変な絶望感をただよわせて断るので、みんな、どうしようもないもわかってくれます。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前作『天才たちの日課』の男女比を反省した著者は、女性アーティストに絞って新たに一冊書きあげた。ライフとワークのバランスに思い悩み、性差別と闘いながらクリエイティビティを発揮してきた女性たちの言葉に打たれる小伝集。
ブログの書籍化であり、日課にフォーカスしたトリビア的な内容だった前作とは全く別物。このためにインタビューしたアーティストも多く、コンセプトも構成も「日課」から飛びだして「生き方の多様性」へと広がった続篇になっている。
女性作家やアーティストを紹介するガイドとしても楽しく、特にジャネット・フレイムとジーン・リースの人生が強烈で本を読んでみようと思った。西洋人中心だが、アフリカン・アメリカンの比率は前作より高いかな。出版当時現役の人も前より多い。人選について強いて言うなら、作家はエンタメ系の人もいるのに、音楽家はハイカルチャーの人ばっかりで少し残念。ここにフィメール・ラッパーとかいたら面白かったはず。
読みながら書きとめた言葉がいくつもある。「俳優はほかのどんな職業にも増して時間の奴隷だ」と言ったタルーラ・バンクヘッド、「書くこと以外はぜんぶ楽しい」と言ったドロシー・パーカー、「ハリウッドでいいデザイナーであるためには、精神科医とアーティストとファッションデザイナーと仕立屋と針山と歴史家と看護婦とバイヤーの全ての役を兼ね備える必要がある」と言ったイーディス・ヘッド。「どんなものを手に入れようとも、すべてのものを、世界を手に入れるべきだと思うから。なにもあきらめるべきではないと思う。人生に取り組むために必要なのは、猛烈な貪欲さだと思うの」と語るグレイス・ペイリー。そして、タマラ・ド・レンピッカの恰好良すぎる「奇跡なんてない。あるのは自分が作るものだけ」。
また、やはり結婚をめぐる諸問題は一大トピックにならざるをえない。特に同業者と結婚したケースで、自分の仕事には理解と支援を求めながらも妻の創作活動は妨害する夫たちにうんざりする。若いころのコレットが夫に執筆を強要され、監禁されて書いた小説を夫名義で出版されていたというのも知らなかった。画家アリス・ニールの「よい妻がいたら、私はもっと成功していたはずです。いかにも男性優位主義者的な発想ですが、これが私の前に立ちはだかってきた社会の現実なのです」という言葉は、『龍彦親王航海記』を読んでから私のなかで地味に頭を離れない「〈家庭内編集者〉〈家庭内秘書〉としての妻」という問題を端的に表していると思った。
軽快な語り口で一人一人の分量も数ページだし、さくさく読み進められるが、ケイト・ザンブレノの『ヒロインズ』や山崎まどかの『真似のできない女たち』に通じるスピリットのある本だった。女ことばを使いすぎず、その人らしい口調で自然に読める訳文がとてもありがたい。これは作品のテーマ上、とても大切なことだったと思う。面白くて一気に読んでしまったけど、毎日一人分ずつ読んでいくのでもよかったなぁ。 -
2013年刊行の天才達の日課の続編かつ補正版。
今度は女性に限定された143通りの試行錯誤が収められている。
他の人の感想にもある通り、女性限定であるが故、また外国の著作のため知らない人が多い。
ただ、この本のメッセージはおそらく、
制約の多い環境に置かれやすい女性がどんなふうに人生を切り開いていったか、有名な女性をピックアップし、その習慣のエッセンスを知ることで自分の生活に活かして欲しいというもの。
全部を理解する必要はないし、自分の中で響く内容だけをピックアップすれば楽しく読めるのかなと思った。
個人的にすごいなと思ったのは、クララシューマンの人生。日本ではあまり有名ではないかもしれないけど、海外では紙幣にもなったくらい有名な方。彼女の人生は映画化もされている。
日本だと、作曲家ロベルト・シューマンの方が有名ですが、クララはその妻です。
この本では、"クララ・シューマン愛の協奏曲"に描かれていない、また別の側面を感じて楽しかった。
彼女の習慣は、夫が外出してる2時間の間に練習時間を確保するというものでした。
夫を支え、子供を8人も産み、育て、ピアニストとしての生活もするというスーパーウーマン。
しかし、その陰で献身的に支えてくれるお手伝いさんは確実に存在しました。(この本には記載されていないけど、映画には描かれていた)
結局のところ、私達のエネルギーは限られていて、そのエネルギーをどこに使うのかというところに尽きるんだと思う。
人生は日々の積み重ねだから、先人の生き方を参考にしながら、わたしも自分なりに試行錯誤して、自分の求めているものや自分の糧になるもの、持って生まれたリズム・手順などを大切にしていきたいと思った。
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210110*読了
「天才たちの日課」もずっと気になっていたけれど、同じ女性として、女性の天才たちの日課が気になって仕方なくて、女性編をまず読むことにしました。
作家や画家が多く、次いで舞台役者や演出家の女性たち。科学者からはキュリー夫人が登場。シャネルやオルコット、ミランダジュライなどの著名人から、日本では、もしくはアメリカでもマイナーな人物まで。総勢143人!
才能あふれる人たちの多くは、小説を書かずにはいられない、絵を描かずにはいられない、そんな風に自分の才能に没頭し、家庭を持っていても家事や子育てにはあまり時間を割かなかったり、結婚を選ばなかったり、そうやって仕事のために生きていました。
でも、中には子育てに追われて何年間も小説を書くことをやめていたり、子育ての合間に何とか時間を捻出して書いたり、といった女性もいて、特に今よりも女性がアーティストとして生きることが困難な時代だったからこそ、それでも素晴らしい作品を生み出した彼女たちのパワーに尊敬。
結婚、家事、子育てによって、制限されたり、どうにか両立させようとしたり、夫からの協力が得られなかったり、といった問題を抱えながら、アーティストとしての活動を行う点はやっぱり女性ならではだと感じました。これはもう、現代だってそうだし、何百年前や1900年代なら尚更のこと。時代は少しずつ変わっていくけれど、男女が同じ悩みの元、創作に励む時代が訪れるとしたらまだ先だろうな。
分かったのは、一人ひとり、作品の作り方、日課っていうのは異なっていて、それぞれがしっくりくるやり方で仕事をしていたってこと。
完璧に朝型人間もいれば、起きるのはお昼すぎ、夜中まで創作活動をする人もいるし、大半は孤独の中で仕事をすることを望んでいたけれど、一方で慌ただしい日常の合間に書いていた人もいたし、とにかく賑やかなのが好きという人もいました。パートナーとの関係もいろいろ。その時々の状況で日課が変わっていくこともあれば、日課らしい日課を持たず自由に創作をする人もいました。
それぞれの個性があって、本当におもしろい。そして、うらやましく感じました。
創作が人生の一部に、もしくは全部になっていて、表現することで生きている女性。わたしもそんな風に生きてみたいと思う。
子どもがいて、平日はフルタイムで仕事をしているけれど、そんな自分でも創作はできるんじゃないか、と勇気づけられました。創作をしないことは、彼女たちの日課を読むとただの逃げにすぎない。もっと過酷な状況下でも表現をし続けた女性がいるのだから。 -
大好きな本の女性編。最高。
子育てや家事に追われる日常で、いかに創作に打ち込むか。
自分の時間をどう使うかに、もっと我が儘になっていいのだと勇気付けられた。
(逆に、そうでないと、そりゃクリエイティブもくそもないぞと) -
良い意味で思ったのとは違った内容。知らない天才が大半。創作しつつ生活するとは、どういうことか他の人の例が分かる。才能や努力が伴っても楽ではないらしい。
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画家や作家、作曲家などのクリエイティブ業の偉人女性の日課・生活を集めた本。
やはり一昔前のジェンダー観とも戦ってきた的なところはあります。あと、早起きな人も多かったようです。 -
家事育児介護の合間に書き続けたり、アルコールやドラッグを常用したり、引っ越しを繰り返したり…
作家さんたちが「書きたくない」と言いながら書いていたり、規則正しい生活をしていたりしていなかったり。
それぞれのスタイルがあって、「作り続ける」さえ共通ではなくて、魅力的。 -
前作は睡眠、健康にスポットを当てていたように感じたが、本作は家族関係、マインドに焦点を当てています。
個人的に前作が好みです。
著者プロフィール
メイソン・カリーの作品





